建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年11月号〉

interview

市民と行政がパートナーシップを築き上げ、まちづくりを推進

函館市長 井上博司 氏

井上博司 いのうえ・ひろし
昭和11年9月7日生まれ
北海道立函館西高等学校卒業
昭和30年4月 函館市に入庁
50年8月 函館市企画部調整課長
55年11月 同企画室次長
58年7月 同企画室長
60年4月 同商工観光部長
平成元 4月 同市民部長
3年4月 同企画部長
8年4月 同助役
11年3月 退職
11年4月 函館市長就任、現在に至る
今年4月の統一地方選で、市長に初当選した井上博司氏。21世紀は井上市政で迎えることになるが、長く函館市政に従事してきた行政マンの経験を活かし、井上カラーを打ち出そうとしている。
今号では井上市長に、市の現況と課題や、まちづくりの理念、取り組んでいる各事業の話を伺った。
――市政にどんな気構えで臨みますか
井上
函館に生まれ、市に奉職して44年間お世話になった者として、また行政のプロとして「行政に一刻たりとも空白や停滞をもたらさない」ことを、選挙で約束してきました。
木戸浦前市長が13年間で残された多くの業績を分析・検討し、さらには私自身の考え、判断を加えながら、函館市の将来像である「ふれあいとやさしさに包まれた世界都市」を目指し、函館のまちづくりに全力で取り組んでいきたいと考えています。
――市の現況と手始めに着手する課題は
井上
函館市は、道路、下水道、公園、住宅などの生活基盤整備をはじめ、教育や文化・スポーツの振興、各種福祉の充実などの市民生活に直結する分野や、地域の国際化、観光の振興、テクノポリスの推進、さらに、陸海空の総合交通体系の整備・充実など、都市基盤の整備も着実に前進しており、南北海道の中核都市として成長を続けています。
しかし、「長引く地域経済の低迷と雇用の悪化」や、「急速な少子高齢化の進行と人口の減少」、「既成市街地の空洞化」、「地方分権時代や新たな世紀に対応できる、効率的で市民の信頼に足りる市役所の実現」など、解決していかなければならない課題も山積しています。これらの課題の中で当面は、地域の経済振興に一層の力を注いでいきたいと思っています。
――困難な課題が多いようですが、どんなまちづくりの理念を持っていますか
井上
現在、1996年から2005年までの、第4次函館圏総合計画にもとづき、まちづくりを進めているところです。
歴史と伝統に培われた「函館」が、魅力と活力にあふれ、市民一人ひとりが、幸せと豊かさを感じて生活できる様に各事業に取り組んでいきます。
また、「まちづくりの主人公は市民」という観点から、市民の価値観やライフスタイルの多様化と、地方分権に対応する新しいまちづくりを進めるためには、これまでの「行政主導」ではなく、市民と行政がパートナーシップを築きあげ、協働して、まちづくりに取り組むことが必要だと考えています。
ただ私自身、木戸浦市政で助役を務めていましたので、基本的な方向性は変わりませんが、さらに付け加えると、より一層の人材の育成や市民の自主的活動を、積極的に支援したいと考えています。
――一方、ハード面でのまちづくりの完成度は高いようですが、さらに新病院もできていますね
井上
新市立函館病院が平成12年10月に開院します。これは、老朽化した旧病院を移転新築するもので、新病院は病床数850床、診療科22科になります。総事業費は331億円です。
それだけではありません。函館圏の1市4町で進めている公立はこだて未来大学の開学を平成12年4月に予定しています。
また、本格的な工事に着手してはいませんが、平成10年から16年にかけて、函館駅前地区土地区画整理事業を進めます。面積は約9.8haで駅舎移転や駅前広場の整備を行います。
――井上市政として、今後、予定している計画は
井上
そうですね、ハード・ソフト両面にわたる実施計画については、サハリン石油開発支援基地化の推進や、観光・コンベンションの振興とアクアコミュニティの建設促進、中央図書館・箱館奉行所の建設などです。
――福祉やゴミ問題などにも市民の関心は高いようです
井上
「健康でやさしさを共有するまち」として、第2次高齢者等保健・医療・福祉計画の策定や、福祉のまちづくり条例の制定をします。また、総合保健センターの建設も予定しています。
ゴミ問題については、環境基本計画や、緑の基本計画を策定するとともに、七五郎沢廃棄物最終処分場や、ごみ焼却施設、産業廃棄物処理団地の建設などを行います。
――最後に一言お願いします
井上
私は、「市役所の徹底した自己改革」を掲げております。温かい心を持って、市民の声を真摯に受けとめ、市民の信頼に足る市役所づくりのため、職員の徹底した意識改革と行政改革を第一の目標とし、諸課題に取り組んでまいります。

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