建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年11月号〉

interview

過密と過疎の地域を抱える管内の社会基盤を整備

「深川留萌自動車道」が今年度中に一部供用開始

北海道開発局札幌開発建設部長 福田幸一郎 氏

福田幸一郎 ふくだ・こういちろう
昭和18年1月1日生、43年東京都立大工卒
昭和 50年 北海道開発局小樽開発建設部蘭越道路改良事業所長
51年 北海道開発局小樽開発建設部寿都道路改良事業所長
52年 北海道開発局土木試験所道路研究室副室長
56年 北海道開発局帯広開発建設部道路課長
58年 北海道開発局道路計画課長補佐
59年 苫小牧東部開発
62年 北海道開発局札幌開発建設部札幌道路事務所長
63年 北海道開発局留萌開発建設部次長
平成 2年 北海道開発局帯広開発建設部次長
3年 北海道開発局札幌開発建設部次長
4年 北海道開発局情報管理室長
5年 6月 北海道開発局道路維持課長
7年 11月 北海道開発局函館開発建設部長
8年 7月 北海道開発局留萌開発建設部長
9年 7月 現職
今年7月の人事異動で札幌開発建設部長に就任した福田幸一郎氏は、札幌開建には4回目の勤務となり、札幌市周辺の過密地域と農漁村地帯と旧産炭地の過疎地域を抱える管内の情勢は熟知している様子だ。「過密地域の社会基盤整備は、重点配分により確実に進んで行くと思う。過疎地域は、そこで生活している人達のためにも事業を進めていかなければならないが、できる限り自然環境に配慮し、北海道らしい農村漁村風景を創出していきたい」と抱負を述べている。同部長に今年度中に一部供用を開始する「深川留萌自動車道」や北海道の空の玄関口「新千歳空港」などをはじめ、今年度の整備状況などを伺った。
――地域事情を踏まえて、どんな開発を行っていきますか
福田
管内は札幌市周辺の過密地域と、農漁村地帯や旧産炭地といった過疎地域を抱えています。
過密地域は、都市部では公共事業予算が重点配分されているので、事業は着実に進むと思いますが、過疎地域についても、そこで生活している人達のための基盤整備を考えていかなければなりません。特に過疎地域では、できるだけ自然環境を守って、北海道らしい農村漁村風景を創出していきたいと思っています。
――管内の現状と課題、その対策について
福田
札幌圈への人口や諸機能の集中傾向に伴い、札幌とその周辺地域では、既存の行政区域を越えた一体的な都市圈の形成が進んでおり、南空知などのように従来、純農村地帯と言われた地域にも影響しています。
当地域は、他の地域と比べ、空港、港湾、鉄道、高速道路などの交通基盤が充実しており、優れた立地条件を背景にして、先端技術をはじめとする企業進出や新千歳空港を核とした国際交流拠点の形成など、様々なプロジェクトが展開されています。
道央圏は、今後の北海道の発展を牽引する重要な役割が期待される地域でもあることから、道央圏連絡道路などの交通基盤の整備にあわせて、石狩湾新港開発、苫小牧東部開発、新千歳空港周辺開発など地域開発プロジェクトの連携を強化し、調和のとれた地域の振興開発を図っていく必要があると思います。
その一方で、炭鉱の閉山が相次いだ旧産炭地域や、道内有数の米どころである農村地帯では、急速な人口減少や高齢化の進行に伴い、地域社会の担い手確保や地域活力の維持が深刻な課題となっています。
旧産炭地域では、産業構造の転換を目指し、企業誘致や観光開発によるマチの生き残り策が模索されていますが、景気の低迷などで必ずしも計画通りには進んでいないのが現状です。産炭地域振興臨時措置法の期限切れを平成13年度に控え、石炭に代わる新たな産業の創出や地場産業の振興を早急に進めることが大きな課題であると思います。
農業は、ウルグァイラウンド農業合意による米の輸入自由化、国際化という厳しい環境に置かれており、このため農村地帯では、新食糧法の施行を受けて、農業の規模拡大や農産物の広域的な統一ブランド化などの経営方式が定着しつつあります。また、花きの生産や体験農場など、都市住民のニーズを捉えた新たな動きも盛んになってきています。
しかし、農家の高齢化や後継者不足、産地間競争の激化などの諸問題に直面しており、しかも、昨今の米余りを背景に将来の農業への先行き不安感が広がってきているのも事実です。こうしたことから、農業経営を取り巻く環境変化に的確に対応し、地域農業の確立のための様々な取り組みが強く求められています。
管内の今後の動向を展望すると、札幌圏の集中傾向にどう対応していくかということが、重要な課題の1つであると思います。管内の市町村と札幌圏との関係を見た場合、札幌圏以外の地域においては、広域的なまとまりの弱さや中核的な都市圏の形成の遅れが見られますが、今後はある程度、広域的な圏域の中で、地域間の連携を強化するとともに、受け皿となる中核的な機能の集積を促していくことが必要でしょう。
――今年度中に、高規格幹線道路の「深川留萌自動車道」が一部開通となりますが、今後の道路整備は
福田
「深川留萌自動車道」は、北海道縦貫自動車道の深川市から分岐し、北空知地方及び留萌地方と連結し、留萌市に至る延長50qの高規格幹線道路です。
この路線は、広域分散型構造の地域で、多層型連携社会を可能とする高速ネットワ一ク形成を拡充させるため、一般国道の自動車専用道路として整備を進めているものです。この路線の整備により、北海道縦貫自動車道と連結し、留萌圈と北空知圈・上川中部圏との連携強化と、留萌港、旭川空港への大幅な時間短縮が図られます。
また、代替路線の確保による自然災害に対する交通の信頼性が向上し、地域産業、医療連携、社会経済活動など地域の活性化に大きく寄与する路線としても位置づけられています。
この路線のうち、「深川沼田道路」については、平成元年度に事業化し、深川から秩父別間については、暫定2車線で、今年度中の開通を目指し工事促進中です。残りの「沼田幌糠道路」については、早期供用を目指して、用地取得と工事を促進しているところです。
一方、「道央圏連絡道路(一般国道337号)」は、千歳市から小樽市に至る総延長約80qの地域高規格道路で、高規格幹線道路と一体となって、地域の連携による新たな集積圏の形成、集積圏相互の交流の促進、集積圏と交流拠点との連携を図るため、整備区間・調査区間の指定を踏まえ整備と調査の促進を図っているところです。
この路線のうち、「新千歳空港関連」と「美原バイパス」については、平成7年度に整備区間の指定を受け、現在工事促進中です。また、千歳市から長沼町間については平成7年度、江別市から当別町間は、平成9年に調査区間指定を受けたところであり、今後整備区間指定に向けて努力していきたいと思っています。
――今年度からスタートした国営農地再編整備事業は、どんな進み具合ですか
福田
今年度から新規着工となった美葉牛地区は、空知管内の北竜町に位置する雨竜用支流美葉牛川右岸に拓けた丘陵地と平坦地からなる農業地帯で、水稲、小麦、小豆などの一般作物に、メロンやひまわりを取り入れた営農が展開されています。
この地区は、水田と一部で畑地利用されていますが、地区内の中小河川による分断や原地形の影響をうけた小区画ほ場になっています。一部には土壌に起因する排水不良のところもあり、効率的な機械化作業体系を確立できず、農業経営は不安定なものとなっています。
このため、国営農地再編事業により農用地の効率的な土地利用と労働・生産性の高い基盤形成を目的とする開畑11haと既耕地の区画整理542haを一体的に施行します。これにより、経営規模の拡大と経営合理化による中核的担い手農家の育成を図り、また土地利用の整序化を通じて、農業の振興を基幹とした地域の活性化につなげていきたいと思います。
――新千歳空港の整備事業については
福田
新千歳空港の整備事業は、第A期計画の新タ一ミナル地区が平成4年7月に、第B期計画の一環であるb滑走路が平成8年4月に供用開始となり、2本の滑走路を持つ国内有数の空港となっています。
平成9年度の整備事業は、航空需要の増加に対応するため、エプロン・誘導路等の施設整備を実施しています。
また、今後の整備計画としては、第B期計画の残事業の整備を進めるとともに、第7次空港整備5箇年計画(平成8年度〜12年度)に基づき、現在就航している中距離国際路線の冬期間の安定運航の確保や、klm(オランダ航空)の名古屋〜新千歳〜アムステルダム路線のような、欧州・北米を結ぶ長距離国際路線の就航のための滑走路延長が認められています。そこで、関係機関と整備調整を図り早期着手を目指したいと思います。
――管内の自治体とは、どんな協力関係を保つ考えですか
福田
管内では、魅力ある地域づくりに向け、自治体などが中心となり、地域の特性を生かした多様なプロジェクトが構想・展開されています。公共事業の一層の効率化・重点化が求められる中で、札幌開建としても、地域の動向やニ一ズを的確に把握し、事業の連携・複合化、相乗的な効果の発現などに着目して、これらのプロジェクトヘの適切な支援に努めていきたいと思っています。
また、開発事業の円滑な推進を図る上で、地元自治体の協力は不可欠ですから、地域との連携を強化し、関係者の理解が得られるよう最大限の努力をしていきたいと思います。

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