建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年11月号〉

interview

効率的な予算執行で地域活性化をサポート

9年度事業費、初の600億円台

北海道開発局網走開発建設部 阿部芳昭 氏

昭和22年4月21日北海道磯谷郡蘭越町生まれ
昭和 47年 北海道大学大学院工学研究科卒業
47年 4月 北海道開発局土木試験所採用
48年 5月 北海道開発局土木試験所第3研究部道路研究室主任研究員
50年 4月 北海道開発局網走開発建設部北見道路事務所工事課計画係長
52年 4月 建設省道路局企画課係長
経済企画庁調整局経済協力第2課専門調査員
53年 7月 経済企画庁調整局経済極力第2課主査
54年 4月 建設省道路局企画課長補佐
北海道開発局旭川開発建設部建設監督官
6月 北海道開発局旭川開発建設部道路第1課長補佐
56年 4月 北海道開発局土木試験所第3研究部道路研究室副室長
58年 4月 北海道開発局網走開発建設部道路第1課長
60年 4月 北海道開発局札幌開発建設部建設監督官
9月 北海道開発局建設部道路計画課長付
61年 3月 外務省在フィンランド日本国大使館一等書記官
平成 元年 4月 北海道開発局開発土木研究所総務部企画調整課建設監督官
6月 北海道開発局開発土木研究所道路部交通研究室長
2年 6月 北海道開発局網走開発建設部次長
5年 1月 北海道開発局旭川開発建設部次長
6年 7月 北海道開発局長官房環境審査官
7年 11月 北海道開発局建設部道路維持課長
9年 7月 北海道開発局網走開発建設部長
この7月の幹部人事で網走開発建設部長に開発局の前道路維持課長・阿部芳昭氏が就任した。阿部新部長は北大大学院工学研究科出身。開発局土木研究所を振り出しに、経済企画庁や外務省にも出向、フィンランド大使館で外交官を務めた経験のある異色の人材。網走開発建設部は平成2年6月〜5年1月の部次長以来4年半ぶり4度目の勤務で管内の事情に精通しているのが強み。
阿部部長は就任の抱負として、10年度以降、公共事業費の圧縮が具体化している中で、第一に事業の効率的執行を挙げるとともに、地域活性化のサポートに並々ならぬ意欲を示した。
―管内には四度目の赴任となりましたが、今回はトップとして帰ってきました。その立場として改めて思うこともあるのでは
阿部
確かに網走は馴染みのある地域です。管内の26市町村はオホーツクインターネットで代表されるように、管内一丸となって行動する、まとまりの良い地域と感じています。オホーツク海と山脈に挟まれ、地理的なハンディはありますが、オホーツクを冠にして地域間の連携がいいですね。
私たちも交流人口の拡大など地域活性化のお手伝いが出来ればと思っています。
また、これまでは一般市民の方々に私たちの事業を十分説明していなかった面がありました。今後は広く大勢の方に説明していくことも心掛けたいものですものです。いずれにしても、地元の意向を踏まえて地域活性化をサポートするのがわれわれの役割と考えています。
―職員にはどんな訓示をしましたか
阿部
初心の一端を述べましたが、一つには事業を円滑に進めるため、心身ともに健康を保持してほしいこと、二つ目は謙虚な気持ちで地域の方々と接触すること、そして予算の効率的な執行の3点を強調しました。
道路、港湾は前年度対比6%増
―管内の事業費規模はどのくらい伸びているのですか
阿部
平成9年度の事業費は総額617億200万円で、網走開発建設部としては初めて600億円の大台に乗りました。前年度対比では4%増(約23億6千6百万円)。道路、港湾がともに6%の伸びを示しました。
―地元からはどんな要望が多いのですか
阿部
道央圏から350kmも離れていますから、時間距離を短縮するうえで道路整備の要望がやはり一番多いようです。
10年度は公共事業費が7%削減し、11年度以降も減少する見通しですから、限られた予算の中で効率的な執行に努めることが大事です。
―どんな道路整備が進められていますか
阿部
道央とオホーツク圏との交通の高速、安全、確実性を確保するため高規格幹線道路の整備に力を入れています。当面は上川町上越―白滝間、白滝―丸瀬布間の整備を促進します。
上越白滝道路の仮称・上北トンネル(4,098m)は旭川側と網走側から工事が行われており、今後、巻き立て、舗装、防災工事を推進し、平成10年度から始まる新道路整備計画中には供用開始したいと思います。
一般国道39号においては、美幌市街の交通混雑解消と北見・遠軽地域から女満別空港へのアクセス強化を図るため美幌バイパスの整備を盛んに進めています。
北見道路の調査に着手
 北見市内の南側を通過する北見道路が今年事業化されました。現在詳細な設計を進めているところです。実際の工事着手はもう少し先になるでしょう。
地域高規格道路は、遠軽北見道路のうち平成7年度に整備区間の指定を受けた旭峠道路の整備(トンネル)を促進します。その他、線形が悪く法面も切り立っているため交通難所になっている石北峠で橋梁工事などの二次改築を実施しています。
一次改築では334号真鯉道路、峰浜道路、浦士別道路の整備を行っています。このうち真鯉道路では野生動植物の生態系に配慮した道路整備(エコロード)を行っています。
ソフト面の話になりますが、道内では交通死亡事故が多発しています。北見方面も同様な傾向で、道路サイドとして安全面にどのような対策を講ずるべきか、内部のワーキンググループで検討させているところです。
網走湖の浄化対策に全力
―河川の環境整備では網走湖の浄化対策に取り組んでいますね
阿部
浄化対策は平成5年度からスタートしました。どういう方法がベストかまだ試行段階なんですが、ひとつは水草の刈り取りや底沼の浚渫を実施しています。水草は枯れるとヘドロ化し汚濁の原因になるのです。
また、家畜の糞尿も汚染の原因になっていますから、畜産排水対策試験を実施しています。
網走湖の浄化対策については以前から関係機関と連携して実施していますが、さらに水産関係者との話し合いのための研究会を設置したところです。
―農業基盤整備については
阿部
この管内は畑作中心で、農業を基幹産業とする地域です。予算別に見ても農業基盤整備が一番多くなっています。そこで、大規模土地利用型農業の生産効率化や、国際化に対応した、多様で生産性の高い農業の展開を図るため、生産基盤の強化や農用地の保全、これに伴う土地改良施設の整備を促進する必要があります。
したがって、今年度は、国営かんがい排水事業を6地区で実施します。女満別地区が今年度完了するほか、継続で雄武中央地区の一期工事や斜里地区の二期工事などを行います。また、直轄明渠排水事業は、美咲地区をはじめ全体で5地区になります。
畑地帯総合土地改良パイロット事業では、小清水地区、西網走地区、斜網西部地区、斜里地区の4地区をそれぞれ継続で実施します。
―港湾整備では
阿部
港湾では網走港と紋別港を抱えており、網走港では静穏度確保のため島防波堤と北防波堤の整備を継続実施するほか、南防波堤の改良がいよいよ本年度完了の予定です。港町地区の水深7.5m岸壁の液状化対策工も完了の予定です。
今後は、中核物流拠点となる紋別港の第3ふ頭地区において水深12mの岸壁と泊地に着手します。
第四種漁港は沖合・沿岸漁業やホタテ、カキなどの育てる漁業の基地として整備します。サロマ湖漁港では防波堤(防氷)を継続して整備するとともに、内港防波堤に着手します。
この防波堤(防氷)は流氷が湖内に流入する流氷被害を防ぐためで、全部で13スパン造ります。工事は本年度でほぼ完成に近付きます。
宇登呂漁港は西防波堤を継続して整備するとともに、中護岸及び用地整備に着手します。
―建設業界に提言などは
阿部
事業費の削減、省庁の統廃合など不透明な要素が多いですから、どんな時代にも対応できるよう経営体質の強化に努めてほしいと思います。

HOME