建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年10月号〉

interview

不況時こそ経済構造改善のチャンス

北海道保健福祉部長 毛利義臣 氏

毛利義臣 もうり・よしおみ
昭和20年4月生、愛知県出身、北大医学部卒。
平成元年緑ヶ丘病院副院長
7年木古内保健所長
8年当別保健所長兼保健環境部保健予防課主任技師
9年4月保健環境部保健予防課医療参事
9年6月保健福祉部技監
10年宗谷支庁長
11年現職

来年4月から介護保険がスタートするが、保険料は自治体によってまちまちで、サービスの均一化も難しいこのシステムの運用は、高齢化率の高い北海道にとってもまだ多くの課題が残されている。全国一広大な面積を持ち、人口密度の低い本道で、このシステムをいかに効率よく運用するシステムを構築するのか。道保健福祉部長にして精神科医でもある毛利義臣部長に、今後の政策について伺った。
――介護保険が来年からいよいよ実施されますね
毛利
来年4月の介護保険法施行に先立ち、10月から市町村において要介護認定が開始されます。
現在、各市町村では、認定審査会の設置や介護保険事業計画策定のためのサービス基盤の見込み取りまとめなど、保険運営に必要な準備を進めています。
道も、昨年に引き続き介護支援専門員の実務研修受講試験・実務研修を実施するほか、認定に対する不服申し立てなどを処理するための介護保険審査会の設置やサービス事業者の指定、介護保険事業支援計画の策定などを行うことにしており、国が示したスケジュールに沿って進んでいます。(別表)

H10.12.24 政令公布(施行令等)
H11.3.31 厚生省令、大臣告示公布(施行規則、指定基準等)
H11.4.30 要介護認定基準公布
H11.5.11 計画基本指針公布

○今年度の主なスケジュール
・6月 サービス基盤見込み取りまとめ
・7月 介護報酬基本骨格(国)
    サービス事業者指定開始(道)
    介護支援専門員資格試験(道)
・10月 要介護認定開始(市町村)
    介護認定審査会設置(市町村)
    介護保険審査会(道)
・12月 介護保険事業計画中間まとめ(市町村)
    介護保険事業支援計画
    中間まとめ(道)

特に、高齢者の多くが自宅での生活を願っていることから、在宅介護を重視した政策を重点として取り組みたいと考えていますが、介護保険の円滑な導入のためには、なおいくつかの課題も残されています。

――どんな課題がありますか
毛利
たとえば、サービス基盤の整備や、特に在宅サービスの問題で、地域間格差の是正や民間事業者の参入をどう促進するかということです。
また、広域化に対する支援をどうするか。現時点では、介護認定審査会の共同設置は46地域、179市町村を予定しています。
サービス基盤の共同化や保険料、利用料対策の課題もあります。市町村間の保険料格差もどうするか。とりわけ著しく高い市町村の対策や、低所得者に対する対策も必要です。
さらに、介護保険の対象とならない高齢者の受け皿づくりをどうするのかといった、自立老人対策も必要です。
また、道民への制度周知や情報提供、市町村の事務体制に対する支援も引き続き行っていかねばなりません。制度施行まで残された時間は少ないが、国の動向や市町村の準備状況をしっかり見極め、万全の体制で取り組んでいきたいと考えています。
――道として独自に行う政策は
毛利
訪問介護利用促進事業、介護保険広域化事業、在宅高齢者保健福祉推進支援事業が、第2回定例議会で可決されたところです。その他、過疎地域等在宅保健福祉サービス推進モデル事業、シルバーサービス振興会による需要調査、ケアハウスや高齢者生活福祉センターなどの整備促進、啓発ポスター作成などを実施します。
――保険料は、市町村によって格差があるようですね
毛利
介護保険における65歳以上の高齢者の保険料は、一般に介護サービスの水準が高い市町村ほど高く、また現在、検討されている介護給付費においては、在宅サービスと施設サ−ビスの費用に差があることから、施設サービスを主体とする市町村の方が、在宅サ−ビスを主体とする場合よりも高くなります。
本道は、特別養護老人ホームなどの施設の整備が全国よりも進んでいることから、保険料は全国平均より高くなることが予想されます。
しかし、著しく高額にならないよう、適切な措置を国に要望するとともに、道としても、在宅サービスを充実させる方針です。また、複数市町村による広域的な対応で市町村間のサービスを平準化することなどにより、保険料の軽減を図ることができますので、こうした取り組みを一層推進したいと考えています。
――介護保険に備えた新計画はどんな内容になりそうですか
毛利
介護保険事業支援計画の策定にあたっては、介護保険制度の円滑な実施と、介護保険事業が社会保険方式として運営される以上、対象となるサービスが全国的にある程度の均衡を図ることが必要という考え方から、「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」が国から示されています。
そこで、現計画による整備状況や地域の実情を踏まえつつ、国から示された参酌標準を目標として介護保険事業支援計画を策定したいと考えています。
また、これにあわせて、現行の北海道高齢者保健福祉計画の見直しをすることにしています。この際には、高齢者の方々が、長年つちかった知識と経験を生かしつつ健康でいきいきとした生活を続けられるようにしていくことが重要であり、たとえ介護が必要な状態になったとしても、自らの意志に基づき質の高い生活を送ることができるようにすることが基本だと考えています。
したがって、介護サービスを量と質、両面にわたって確保することはもちろん、健康や生きがいづくりなど、要介護状態にならないような方策や、地域全体で高齢者を支えていける社会づくりなどが主な内容となります。住民にとっては将来の生活設計の指針ともなり、さらには地域社会の自立と活性化に向けた方向を示すことにもつながるものです。
こうした観点にたって、市町村や関係者等の方々と協力し、計画策定に取り組んでいきたいと思います。
――せっかくの新保険システムですが、保険あって介護なしと成らないためには、サービス提供基盤の拡充も必要ですね
毛利
現在の高齢者保健福祉計画に対する基盤整備の進捗状況は、在宅介護支援センター、ケアハウスなどに遅れが見られますが、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、ショートステイ専用ベッド、老人保健施設などは、ほぼ目標を達成する見込みです。また介護保険導入に際してのサービス提供基盤は、概ね確保されているものと考えています。
なお、今後の基盤整備については、新たな介護保険事業支援計画において、国から「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」が示されているので、現計画による整備状況や地域の実情を踏まえつつ、参酌標準を目標として介護保険事業支援計画などの策定に取り組んでいく考えです。
――ところで高齢者介護と一口に言っても、乳児と違ってかなりのエネルギーを必要とします。在宅での近親者による介護では、過重な負担から健康を害したり、ドメスティックバイオレンスなどというケースも散見されます。それほど辛く大変な作業と言えますが、これを職業とする介護士らの社会的位置づけなどにも配慮することが必要では
毛利
人材の育成、確保のための体制整備はもちろん行いますが、職務に生き甲斐を感じられるための一策としては、給与、処遇の向上も大切だと思いますね。

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