建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2000年10月号〉

すぺしゃるト〜ク

市制施行30周年で季節ごとに記念事業を実施

行政サービス低下を招く市町村合併には反対

北海道恵庭市長 黒氏 博実 氏

黒氏 博実 くろうじ・ひろみ
生年月日 昭和 21年 6月8日
最終学歴 昭和 44年 3月 中京大学商学部卒業
職歴 昭和 44年 4月 恵庭町奉職
62年 4月 企画部基地対策課長
63年 4月 総務部秘書課長
平成 2年 4月 市民部保健課長
4年 4月 総務部総務課長
6年 4月 企画部企画調整課長
8年 4月 経済部商店街近代化推進室長
9年 8月 退職
9年 12月 恵庭市長当選(1期)
道央圏の市町村の一つ、恵庭市は今年で市制施行30周年を迎える。地方分権一括法の施行で、恵庭市はさらに自立した自治体として生まれ変わるための、まさにグッドタイミングであり、30周年はその門出の前祝いとも言えそうだ。21世紀の行政のあり方、恵庭市の姿はどうあるべきか。黒氏博実市長に語ってもらった。
――恵庭市長として、どんな恵庭市の理想像を描き、まちづくりを行いますか
黒氏
この4月に地方分権一括法が施行され、地域が自らの判断と責任により、そして自らの創意工夫によって地域づくりをしていく時代を迎えようとしています。その基盤となるのは市民参加であり、「意識ある市民に、いかにしてまちづくりに参加してもらうか」ということになると思います。
したがって、私は市長に就任した時に「市民一人ひとりの声を大切にする、心ふれあう社会の創造」を掲げ、市民と一体になったまちづくりを進めたいと訴えてきたわけです。しかし、市民参加とはいっても、その効果的な手法についてはなかなか見つかっていないというのが現状だと思います。
幸い恵庭市には、行政主導によるまちづくりではなく、市民主導による活動も開花しており、市の総合計画に位置付けられた「花のまちづくり」は、まさにこの市民参加・市民活動の実績がもたらした貴重な成果と言えます。
私はこうした貴重な運動がさらに発展することを願い、「市民情報サロン」を、今年開設しました。これを拠点に、まちづくりに関する種々の情報を、市民と行政が共有することによって市民と行政の協働意識が、さらに進むことを願っているところです。
また地方分権は、国のもつ多岐にわたる権限を地方に移譲することになるのですが、業務の移行に伴う財源対策については、まだなかなか実現されない状況にあると思います。そういった状況下でのまちづくりには、市民の協力が第一に必要となることは言うまでもないことですが、その他に私は地域連携を強力に推し進めていく必要があると思っています。
公共の施設整備を、個々のまち同志が競いあった時代は終わり、現在は効率的・広域的な視点から協力できるところは近隣のまちが連携し合って行かなければ、各自治体も財源的に成り立たない時代になっていると思います。
この観点から、近郊の市町村のご理解の基に「ごみ処理広域化推進協議会」を設立し、ごみの広域処理体制を構築し、膨大なごみ処理施設の費用負担の軽減を目指しているわけですが、今後の地域連携のモデルケースとして、私はこの事業に大きな期待を寄せています。
――ごみ問題は、回収の効率化、環境対策としてのリサイクル、最終処分施設の設置など、多岐にわたるため業務量も予算も膨大となり、自治体にとっては負担が大きいですね
黒氏
確かに、ごみ処理に関しては環境への負荷、施設整備に要する財源確保など、各自治体が多くの諸問題に直面しており、それぞれが地域の実情に応じた対策を講じている状況にありますが、ごみ処理全体についての安全性・効率性・経済性を重点に総合的な対策を推進するには、やはり複数の市町村が連携して行うことが望ましいと考えています。特に、ダイオキシンの削減、リサイクルの推進、公共事業のコスト縮減などの観点から、ごみ処理を単独処理から広域的に抜本的見直しをする取り組みが必要と考えています。
平成11年12月に、本市と北広島市・長沼町・南幌町・由仁町・栗山町の2市4町が構成団体となり、地域の特性を考慮しつつ、ごみの適正かつ安全な処理を推進し、次世代に生活環境の保全されるごみ処理の広域化を目的に「道央地域ごみ処理広域化推進協議会」を発足しました。
今後は、関係自治体とともにごみの広域共同処理の方向性や、適切な中間処理施設整備方針の設定など、従来の焼却・埋立から脱却した地域特色のある処理方式を模索しながら、発生抑制・リサイクル・適正処理を一元的に捉え、資源循環型社会の構築を目指した広域処理体制を地域住民や事業者のご協力とご理解を得て、早期に実現していきたいと考えています。
――広域組合という行政手法のほかには、全国的に市町村合併を推進する機運もあります。特に最近の新聞社の世論調査でも、市町村合併に肯定的な人が多かったという結果が報道されました
黒氏
しかし、市町村合併については、北海道市長会を通じ「市町村に主旨がよく理解されていないこと」や、「合併により街の規模が大きくなることでサービスの向上が図られることを具体的に記述すること」などの意見書を提出し、合併素案では将来展望が開けない旨を、訴えたところです。
市町村合併の素案が提示された背景には、市町村の財政難、さらには少子高齢社会への対応に関する不安などが大きく、それだけに恵庭市としても、現在進めている行財政改革をより一層積極的に進め、市民の協力を仰ぎながら財政基盤の安定化を図り、地方分権時代にふさわしい自立できる自治体へと変わっていかなければならないものと考えています。
市町村合併が、はたして本当に住みよい地域づくりにつながるのか、行政サービスが隅々まで行き渡るのか、また、行政区域の拡大により、街の中心部と周辺部などの格差が生じたり、サービスの低下や生活の利便性が失われるのではないかといった課題も残されています。また、市民に対してもこれらの課題が解消されない限り、十分な理解は得られないものと考えております。
いずれにせよ、自分たちのまちのことは、そこに住んでいる住民の意思において決定すべきであり、市民の誰もが望まぬ合併で、行政サービスの低下や生活の利便性を損なうようなことは絶対にあってはならないものと考えています。ですから、市としては、これらの課題を念頭におきながら慎重に推移を見守っていきたいと思います。
――有珠山の噴火は、地元地域だけでなく全道的にショックと様々な影響をもたらしています。恵庭市としては、どのような行政支援対応を行っていますか
黒氏
有珠山の噴火に際しては、幸いにして住民の事前避難により人的被害がなかったものの、観光産業、漁業、農業などへの被害、及び建物、道路、橋梁などの被害は計り知れないものがあり、終息に向かっているものの、今後の火山活動の動向が懸念されています。
また、現在も火口付近の一部の住民の皆さんが仮設住宅などで不便な生活を強いられており、その精神的、肉体的疲労は計り知れないものがあろうと、改めて被災された住民の方々にお見舞い申し上げます。同時に、有珠山の早期沈静化と一日も早く住民生活と地域経済が元の状況に戻ることを心から願っています。
恵庭市としての被災地への支援状況は、職員の応援派遣を実施しています。人命救助、避難誘導及び火災警戒のため、消防職員は延べ130人、避難所支援、一時帰宅支援、選挙事務支援のため、市職員は延べ45人で、合計175人を派遣しています。
私自身も4月20日には被災地の伊達市、虻田町、壮瞥町へ赴き、お見舞いと激励をしてきました。
さらに、義援金受付窓口の開設や避難住民の市営住宅受け入れ、転入学児童の受け入れなどを行い、恵庭市に避難してきた被災者が少しでも早く不安のない生活が送れるよう支援協力を行っています。今後も被災市町及び被災住民のため、できる限りの支援体制を図っていきたいと考えています。
――今年は、恵庭市の市制施行30周年ですが、記念イベントや記念事業などは予定していますか
黒氏
そうですね、市制が施行されて30年という記念の年を迎えるにあたり、21世紀に飛躍すべく市民と共に、満30歳という慶祝の意義を讃え、2000年という節目にふさわしい恵庭を創造する市民参加型の記念事業などを計画しています。テーマは「水・緑・花・文化、21世紀へのメッセージ」ということです。
基本方針は、21世紀に向けて進めようとするまちづくりと合致する記念事業を実施することです。これに基づき、節目の記念事業として未来につながるものを創り残す。市民の意向が記念事業の企画に反映されると共に、市民参加の事業を実施する。時代を担うこどもが参加し、未来の恵庭を創造し、夢を培う事業を実施することにしています。
といっても、あまり華美にならないよう極力経費を抑え、市民・団体・企業の参加を得て記念事業を実施する方針です。
また、これらの基本方針を前提として、具体的にどのような記念事業を展開すべきか市民アンケートを募り、寄せられた提案から市民による実行委員会にてソフト事業29件、ハード事業2件を実施することにしています。
――すでに行われた記念事業はありますか
黒氏
記念行事は、春・夏・秋・冬の時期に合わせて、行っています。もちろん、事業の展開が市民に解りやすいよう工夫を凝らしています。
春はフラワーフェスティバルとして、「花と健康」をテーマに「花とくらし展」「健康祭」を同日開催し、関連事業を集中させました。例えば花とくらし展、健康祭、花いっぱい全道オープンカラオケ大会、花のモニュメント設置、フラワーフォトコンテスト、シンボルフラワーロード整備、ファミリーコンサートを一度に実施したのです。
夏は夏まつりを新たに開催することとし、郷土芸能のすずらん踊りを中心にyosakoiソーラン踊りや花火大会など、各種のイベントを行いました。
具体的な実施事業は、夏まつりメイン広場の開催、すずらん踊り、yosakoiソーラン踊り、納涼花火大会、青空天国、えにわeボート大会です。
秋は市制施行30周年記念式典を中心に、文化事業を集中させます。実施事業としては、市制施行30周年記念式典のほか、記念フォトコンテスト展示会、恵庭渓谷まつり、市民植樹などです。
冬は雪と親しむ事業を実施します。えにわ雪んこまつり、クロスカントリースキー大会などを予定しています。
その他の関連事業としては、サッポロビールがpb缶を発売したり、記念パンフレットの発刊、恵庭ウォークラリー、全日本9人制バレーボールクラブカップ選手権大会、北海道ミニバスケットボール選手権大会、姉妹都市和木町訪問親善使節団派遣、nhk公開録画などが行われます。

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