建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年9月号〉

interview

子供達の海外研修は、教育の投資

旭川・紋別間高規格道路は、波及効果を期待

白滝村長 吉田 敏充 氏

吉田 敏充 たかやなぎ・ゆたか
生年月日 昭和10年5月23日
昭和 39年 3月 遠軽高等学校卒業
昭和 39年 3月 白滝村役場採用
昭和 53年 4月 教育委員会管理課長
昭和 61年 4月 総務課長
平成 6年 1月 助役選任
平成 9年 10月 白滝村長就任
白滝村は、その名のごとく母なる湧別川の上流にある滝が、飛散する水しぶきのためにいつも滝つぼや岩肌が白く霞んで見えたことから名付けられた。北海道の網走支庁管内中西部に位置し、美しい緑の山並みに囲まれ、農林業を基幹産業として発展してきた。その基幹産業を取り巻く環境は厳しいが、旭川・紋別間高規格道路による波及効果、また人口の少なさを逆手にとった教育・福祉を中心とするまちづくりなどを、吉田村長に伺った。
――村長としての4年間を、どう自己評価していますか
吉田
白滝村の発展のために公正・公平な村政を進めたつもりで、私の政治姿勢を充分にご理解をいただけたと思っています。しかし財政再建や地場産業の振興は、あまり思うように進める事ができませんでした。4年間の任期では、多少短かすぎたというのが心境です。
――基幹産業の現状は
吉田
北海道は、農林業を基幹産業にして発展してきたまちが比較的多いのですが、白滝村では林業が低迷し、工場は閉鎖している状態です。もう一方の農業は、平地が比較的少なく、土地の条件も石礫地帯で標高もあり、厳しい条件の中にあります。
したがってこれからは、視点を変えて振興計画を考えていかなければなりません。例えば林業では、森林資源の整備及び国土・環境保全やレクリエーション森林等の公益的機能の発揮を図るため、計画的かつ効率的な林業を推進します。また農業振興では、一戸あたりの農業経営規模が非常に大きいので、これからはもう少しきめ細かく、土地改良事業等の適切な実施による生産基盤の整備、更には生産コストの低減を図り、基幹産業の振興を進める予定です。
――現在進められている旭川・紋別間高規格道路の進歩状況は
吉田
今年度で上越と白滝間の約18.9qが供用開始となります。この旭川・紋別間高規格道路による経済効果は、道央と道北、オホーツク圏を結ぶことで計り知れないものがあります。しかし、道路は、始点から終点まで完成しなければ意味がありません。まだ旭川・上越間、そして白滝・紋別間は、完成するのに時間が掛かる状態です。しかし、上越・白滝間に新たな道路が通ることは人の流れなどを含め、色々な変化が期待できます。商工業、観光産業等を中心とする市場が拡大し、また緊急医療等にも大きな役割を果たすことになるでしょう。
例えば、奥白滝に食材供給施設として、白滝の野菜等を販売できる場所を、パーキングエリアの横に設置する計画を進めており、地場産業の活性化を図る予定です。
――子供達の育成も力を入れているようですね
吉田
人間性豊かな子供を育てる、また次代を担う子供を育てる意味で、毎年小学校6年生全員を、カナダのアルバータ州バンフへ研修に行かせています。今年で12回目を数え、様々な文化交流やホームステイ先では、遊びやスポーツの交流、心のこもった食事など言葉や文化の違いを体験してもらいます。私は教育というのは、先行投資だと考えています。この国際交流を行うことにより、子供達にとって生涯忘れることのできない思い出になるとともに、白滝の子供達がレベルアップし、白滝村の新しい、大きな力となることを期待しています。また例え、大人になり村外に出ても、白滝村で育ったことを誇りとしていてもらいたいですね。
――その白滝村で育った高齢者には
吉田
高齢者の福祉対策も、子供達と同様に高齢者に対する投資です。医療技術の進歩と生活水準の向上により、高齢化率が高くなっている状況です。これを踏まえ、今まで白滝に高齢者福祉対策の施設が無かったのですが、去年の4月に高齢者生活福祉センターを建築して、そこで自力で生活ができる、20人ほどの高齢者が入居しています。喜んで入居していただいているのは、私にとっても嬉しいことです。またその施設の横には、生きがい対策として造園のできる作業所も設け、高齢者福祉の充実に努めています。これは子供達の海外研修もそうですが、人数が少ないので、一人一人に目が届くので、教育・福祉は、ある意味で充実していると考えています。またその他にも、保険や福祉、医療等の社会保障の充実を図りながら高齢者の自立と生きがい、地域社会参加の促進を図り、地域全体で支援体制の整備を図ります。
――地域住民の生活の向上には、どのような改善を行っていますか。
吉田
やはり白滝村で、最も必要なのは、整備が遅れている下水道整備です。現在、主として自然地下浸透によって処理していますが、河川の汚染、悪臭などの環境上、また自然保護のためにも、衛生的な処理を行わなければなりません。このような状況を踏まえ、生活環境整備の重要な施策である下水道整備の事業推進を図っており、平成17年供用開始を目指して進めています。
この下水道整備に関しては、丸瀬布町も現在、同じ歩調で整備しており、白滝村と丸瀬布町は隣町なので、終末処理はスクラム方式で1ヶ所で行う予定です。これにより整備資金が多少抑えられるということで、丸瀬布と共同で進めています。私は、下水道整備は生活必需品だと考えます。また整備することにより、観光などにとってもメリットは生まれると考えています。
――現在、論議されている町村合併については、どうお考えですか
吉田
これは2期目に間違いなく問題となりますが、北海道は、面積的に内地府県とは同一視できない状況があります。現在、遠軽地区には7ヶ町村ありますが、それを合併し遠軽市にする計画があり、面積は約2,243kuと、ほぼ香川県と同じ大きさになり、最大規模の自治体が想定されます。しかし、そこにわずか4万人弱の自治体を一つ造っても国土の均衡ある発展は望めないと考えます。また行政サイドだけでなく地域住民も反対の意向で、昭和の大合併時もあまり良い風評を聞かず、合併時に吸収された地域の住民は、未だに不満を持っている状況です。私らが行政上、的確に説明していなかったこともありますが、住民が合併に臆病になっている状況は否めないのです。
また例え合併しても、庁舎所在地をどの町村に置くかが問題であり、遠軽地区で言えば、遠軽が妥当ですが、白滝まできめ細かい行政を行えるか不安材料があるようです。したがって合併問題については、行政側が一方的に行うのではなく、もっと地域住民に説明をして、理解を求めていかなければなりません。合併区域などもよく考え、区域のバランスを整理し、そして住んでいる側の、あるいは統合される側の利便性をまず考えていかなければなりません。
――最後に今後の政策展望は
吉田
1期目に着手できなかった政策がありますので、それらを2期目で実行したいです。具体的に言えば、先程も述べた基幹産業、特に農業の振興です。これなくしては、発展は望めないと考えます。
また新しい試みとしてエネルギー問題で、民間業者を中心に風力発電を目指し、現在風向調査をしています。過去にも水力発電所を、電気が当時が白滝村まで来ていませんでしたので、文化の光を村にも当てるために、水力発電所を初代の村長が作った経緯があります。そして現在、白滝は内陸では珍しいですが、高地にあるため風が強く、その風を活かすために、風力発電の研究を行っています。今後はこの研究を進め具体化していき、クリーンエネルギー化を目指します。
この他にも、地域経済の活性化など、現在抱えている課題を解決しながら、21世紀の白滝村を、真の豊かさが実感でき、安心して暮らすことができる希望の持てる地域にしていくために、一層の努力を注いでいきたいです。

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