建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年9月号〉

interview

まちづくりの基本は基幹産業の振興

町民と同じ目線に立ち、小さな事、できる事から町政を進める

朝日町長 武市 昇 氏

武市 昇 たけいち・のぼる
昭和14年7月28日生まれ、朝日町出身、朝日町立糸魚中学校卒
昭和 48年 9月 朝日町議会議員
昭和 52年 10月 朝日町監査委員
平成 元年 9月 朝日町議会産業建設常任委員会委員長
平成 5年 9月 朝日町議会議長
平成 9年 9月 朝日町長に就任
北海道の北部、上川支庁管内の中央寄りに位置する朝日町は、北見山地の最高峰天塩岳の南西山腹を源とする天塩川の最上流に在って、流域一帯は水利に恵まれた農地が展開し、また多くの山岳森林を持ち、豊富な森林資源を擁している。「基幹産業の振興が基本」と語る朝日町長・武市昇氏に、町民と共に進めるまちづくりを語ってもらった。
――いよいよ町長としての任期を全うしますね
武市
4年間、おかげさまで無事に終えることができますが、4年間の前半は、継続業務が多く、後半で、今後の朝日町の土台づくりをしてきました。ですから当初の町政にあたって、町民の皆様への公約についても、それなりの理解は得られたと考えています。
――まちを支える基幹産業については
武市
朝日町は、農業と林業が基幹産業ですから、これらの基盤づくりを行わなければ先に進めないことが、一番の大きな課題でした。農業については、やはり土づくりです。基盤をしっかり整備しなければ、ただ作物を作れなどと言っても、過疎化や高齢化している時代には、大変厳しい状況です。この中で農業の基盤づくり、土づくりは、おおむね達成できたと思います。
林産業については、農業以上に大変な時代です。その中で何ができて何をしなければいけないかを見極めなければなりません。一つには、大工が木材に穴を掘る作業を、機械で行うプレカット工法を導入しました。また小径木の有効利用のため、集成材工場を建設し製材の利用度を高めることを木材産業として導入しています。いずれも基盤が進む道ができたと考えています。
基盤はまだ、今の段階で充分ではありませんが、おおよそ整備されたと考えています。この基盤の上に立って、例えば農業では、どのような作物、付加価値をつけるかを考え、我々は消費者の方々に本当に、安全で美味しいと言われる作物を作っていきたいと思っています。また、林産業も農業と並ぶ大きな産業ですから、企業関係者らと手を取り合い、何ができるのかをじっくり考え、進めてまいります。
何と言っても、私は産業の振興が基本だと考えていますので、基幹産業の振興には一生懸命取り組んでいきたいですね。
――環境整備はどのように進めましたか
武市
環境の整備は非常に重要な課題です。これは下水道やゴミ処理の問題などを町民負担で行わなければならない、また国の基準を守らなければならなりません。
その中で下水道は、去年の3月に一部供用開始となり、予想を超えて接続率が上っています。ゴミ問題については、ダイオキシン対策が来年の10月に開始されますので、現在は、ゴミを焼却していますが、埋め立て地工事を今年に入って発注しました。
――朝日町は自然が素晴らしいですね
武市
朝日町は山中にあり、岩尾内湖や天塩岳を一つの核とした観光資源を有しています。天塩岳については、道立自然公園に指定されています。私は北海道第2の長流「天塩川」の最上流であり、源流であることを常に念頭に置き、観光振興を進めています。
そこで自然を大事にしつつ、自然を満喫できるようにアウトドア的な事業を進めています。例えばテントが張りやすいように整備したり草花などの整備をしたりしています。またバンガローも、今年は三棟ほど整備する予定です。去年は管理棟を建設しました。また、アウトドアレジャーに来られた方から、朝日町は温泉が無いので、シャワー施設や洗濯ができる施設が欲しいという要望がありましたので、管理棟にコインランドリーやシャワー室を整備しました。この春から既に利用していただいております。これも皆さんが自然を愛し、大切にしてくれているおかげですから、なるべく作らずに自然環境を守り自由に利用していただきたいと考えています。
また数年前にアウトドアの雑誌で紹介されたこともあり、それ以来観光客が増加し、この岩尾内湖を中心にして層雲峡や紋別市に行く観光客もいます。そのように近隣地域の観光を楽しんでいただき、また朝日町の自然の素晴らしさを満喫していただきたいですね。
――子供達や町民の育成は
武市
中学2年生になると全員、夏休みにはオーストラリア研修を行っています。すでに6年間行っています。子供達には直接外国を体験してもらい、視野を広く持って欲しいですね。また同じ日本の中で、同じ漢字で書く朝日町、朝日村が9つあり、私どもの朝日町と一番人口が近い、岐阜県の朝日村と毎年、小学校6年生が交流を行っています。私達の町の学校は、小学校1校、中学校1校で生徒数も、併せても今年は100人少々です。現在、子供達の教育問題が騒がれていますが、我が朝日町は、町民の皆さん、先生方のおかげで健全に教育されています。
またスポーツ交流でも新潟県の小千谷市とスキー交流をしています。オールシーズン使えるジャンプ台が、40mと60mの2本あり、日本全国から多くのジャンパーとその関係者の皆さんが合宿に来ています。その人達との交流も盛んに行っており、町外から若いジャンパーが夏休みになると来町され、にぎやかになります。朝日町は若い人が少ないですから、高齢の町民の皆さんが元気づけられ、若い力をもらっています。
――高齢者が元気になるのは、福祉問題の対策につながりますね
武市
福祉問題は、避けては通れない問題です。特別養護老人ホームを町が建設し、社会福祉法人に委託して、今年で10年が経過しますが、これに併設して来年度は、一人では生活が不自由な方などのために高齢者福祉センターを建設する予定です。ここで総合的な高齢者福祉対策を行いたいと考えています。
これからは自治体として、しなければならないこと、色々な事を同じ目線に立ち、何をこの人達が望んで、何をしてあげると助かるのか、あまり大きな資金を投ずることはできませんが、職員一丸となって小さな事から、できることから進めていこうと考えています。
併せて医療関係では、今、朝日町には医師が一人いますが、高齢で50年も勤めていただき、病院も50年前の建物です。来年には新たな先生も来ていただくとなれば、医療施設の新築も考えなければなりません。また内科の施設が不充分なので、人工透析などで士別市へ行かれる人がいます。交通手段が無い人については、料金は頂きますが、士別の病院までお送りしています。またお年寄りで食事準備ができない人は、給食サービスを行っています。このように朝日町としてできる小さな事からしていこうと考えています。
――最後に、今後の政策展望は
武市
基本的なことは、1期目と同じです。1期目の後半の2年間で行ってきた土台を固め、完成させていきたいです。
また一昨年開町50周年が終了し、振興計画も第2期総合計画が来年度に終了を迎えます。第2期振興計画の基本理念は、「町民のための町政の推進」でした。
第3期総合計画は、今年と来年の2カ年を掛け、平成15年から24年までのものとして計画します。これは町民の皆様のご意見を聞きながら進めてまいります。
しかしその基本は、先程述べた通り、やはり産業の振興ですね。これをしっかりしないと環境も福祉も教育もできないと考えており、またこれらのやるべき事を着実に行い、町民の皆さんの期待に応えてまいります。 

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