建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2000年9月号〉

interview

有珠山噴火で治山事業の重要性がクローズアップ

水産物供給基地として、早急な施設整備の完成を

北海道水産林務部長 大野 馨 氏

大野 馨 おおの・かおる
昭和15年11月生まれ、知内町出身、函館水産高卒。
昭和 53年 檜山支庁水産課振興計画係長
56年 水産部振興計画課事業係長
57年 水産部漁場調整課沿岸係長
60年 宗谷支庁水産課長
61年 水産部国際漁業課主幹
62年 水産部漁業調整課長補佐
63年 水産部漁業管理課長補佐
平成 元年 函館水試企画総務部長
3年 水産孵化場総務部長
4年 胆振支庁経済部長
6年 水産部栽培漁業課長
7年 水産部漁業管理課長
9年 水産林務部技監
10年 水産林務部水産局長
11年 現職
北海道の有珠山の噴火により、治山事業の大切さが改めてクローズアップされている。北海道水産林務部では、早急に山林の防災対策のための森林整備を急ぐことにしている。近年、森林といえば、単に木材生産の場としてだけでなく人々の憩いの場としても活用されている。その要求を最大限、意識して整備されたのが「道民の森」で、道民の要望に応じて、拡張整備が始まる。一方、水産業は、国際的な資源規制の強化や資源水準の低下などで厳しい展開が続く。全国一の水産物供給基地を誇る北海道としては、生産効率向上と漁業の安定に向けて、漁港漁村、沿岸整備など施設整備を急がねばならない。大野馨部長に、林業と林業土木、水産業と水産土木について語ってもらった。
――北海道の有珠山が噴火したり、群馬県では谷川岳で鉄砲水が発生したりと、いかに土木技術が進歩しているとはいえ、自然現象は侮れませんね
大野
そのとおりです。我々が行っている治山事業は、森林の維持造成を通じて、山地に起因する災害から国民の生命・財産を保全し、また、水資源のかん養、生活環境の保全・形成などを図る、極めて重要な国土保全政策の一つです。安全で住みよい国土の確保・定住条件の整備を図るうえで、必要不可欠の事業です。
こうしたことから、治山事業は治山治水緊急措置法によって策定された第9次治山事業七箇年計画に基づき、緊急にそして計画的に進めることにしています。
特に、近年は社会情勢が急速に進展し、国土の高度利用が進んでいますから、火山噴火や地震、集中豪雨などの多様な自然現象に起因する山地災害の危険性は高くなっています。のみならず、良好な自然環境、生活環境の保全ヘの要請が高まっていますから、そのため、災害に強い地域づくり、水源かん養の機能強化、豊かな環境づくりが求められています。
こうした状況に鑑みて、今後とも第九次治山事業七箇年計画にもとづき、山地災害危険地区の早期解消に努めるとともに、水資源の確保を図る水源地域の機能強化、緑豊かな生活環境や自然環境の保全など効果的、計画的に治山事業を推進しています。
特に、今回の有珠山噴火の状況などを考慮し、防災対策の一層の強化を図っていきます。また、緊急間伐5ケ年対策の一環として、保安林機能を高度に発揮させるための本数調整伐などの森林整備を、引き続き積極的に進めていきます。
――山地の高度利用の好例は、当別町の「道民の森」ですね
大野
道民の森では、青山中央地区において新たな整備計画を検討しています。
事業計画地である当別町青山中央地区は、当別ダム建設予定地の上流部に位置しており、計画では、「道民の森」の拡張整備として、水源かん養や土砂流出防止などの公益的機能を発揮する森林の整備を行うとともに、道民参加による森づくりを実践する場としての活用などを目的に行うものです。
事業の実施にあたっては、環境への負荷をできる限り回避・低減することや、その他の環境保全について十分な配慮を行うことにしていますが、将来にわたる健康・安全性への志向、緑豊かな自然環境の保全などを重視する道民意識の高まりから、広く意見や要望を聞きながら、道民の意向を踏まえた計画にしたいと考えています。そのため今回、整備計画(素案)を公開し、整備計画を策定することにしています。
――ところで、森林の多用な機能の発揮に対する道民の期待は一層高まってきている中で、どのように民有林の整備を進めようとしていますか
大野
現在民有林においては、目的別に「森林保全整備事業」と「森林環境整備事業」を実施しています。
「森林保全整備事業」は、森林の公益的機能の発揮や安定的な林業経営の基盤となる森林資源の整備に補助を行います。
その一つとして流域森林総合整備事業を行います。これは、流域を基本的単位とした森林資源の整備を目的としており、森林所有者などが行う森林事業に対して補助しています。
この事業で中心となっているのは、流域森林総合整備事業です。これは、流域を基本単位とした森林資源の一層の高度化を図る総合的な森林整備に対して補助を行うものです。13流域、186市町村で実施しています。
事業内容としては、森林の造成を目的として苗木の植栽を行う人工造林、林木の健全な成長の促進を目的として雑草木の除去を行う下刈り、不用木や不良木の除去を行う除間伐が主なものとなっています。
もう一つの「森林環境整備事業」は、森林の保健、文化、教育的な利用増進や都市や農村の良好な生活環境の保全・創出を目的としており、市町村などが実施する多用な森林の整備等に対して補助しています。
――林道整備は、計画どおりに進んでいますか
大野
林道は、森林の多面的機能を高度に発揮させ、林業の生産性を高めるうえで基幹となる施設であるだけでなく、農山村地域の産業振興と生活環境の改善に資する重要な役割を担っています。
しかし、これまでの社会経済を支えてきた枠組みが大きく変革しようとしている中で、道としては、新世紀北海道の発展に向けた経済構造や行財政システムの改革に取り組んでおり、本道の林道事業を取り巻く情勢も大きな転換期を迎えてます。
このため、森林に対する道民の二―ズを十分に踏まえながら、道と市町村との役割分担の明確化や施策水準を踏まえた制度の見直しを進め、21世紀という新たな時代に応じた林道網の整備を進めていく必要があります。
――課題は、厳しい財政状況にどう対応するかですね
大野
市町村財政状況の悪化、林業生産活動の低迷といった状況の中で、長期的視野にたって着実な林道整備が進められるよう、市町村との連携を深めることが大事です。
特に林道事業は、代行営、補助営などの公共林道やふるさと林道の起債事業などが組み合わされ、一体となっていることを念頭に、補助営事業の推進に取り組む必要がありますので、より効率的で効果的な林道事業の仕組みづくりを検討する必要があると考えております。
――一方、北海道は長崎に次いで漁港、海岸が多い地域ですが、その整備は進んでいますか
大野
本道の海岸線は、全国の9%に当たる約3千qにも及んでいますが、その多くが砂浜域となっているため、自然の良港が少なく、漁業者の漁港整備への思いは大変強いものがあります。現在、北海道には、285の漁港がありますが、これは長崎県に次ぐ数で、全国の約10%を占めているという状況です。
漁港は、水産物の陸揚げや漁船の係留、給油など漁業活動の場としての役割を持つほかに、休憩場所や避難所といった漁船の乗組員だけでなく地域住民の生活や憩いの場としての役割も持っているのですが、本道では、これまで、漁船の大型化や隻数の増大に対応するために、どちらかというと陸揚げ施設や係留施設などの基本施設の整備が優先されて、強い日差しや風雪を防ぐ快適な作業環境であるとか、住民の地域活動の場といった視点での整備が遅れてきたという面がありました。
現在は、平成6年から平成13年までの第9次漁港整備長期計画に基づき、「消費者ニーズに合致した水産物の安定供給」や「ふれあい漁港空間の創出」といった5つの基本目標を掲げて整備を進めていくことにしていますので、基本である安全性の向上はもとより、これまで遅れてきた快適な就労環境の場や生活環境の整備、さらには、つくり育てる漁業の推進、消費者ニーズの多様化、海洋性レクリエーションを楽しむ人たちの増加など社会環境の変化にも対応した総合的な漁港・漁村の整備を進めているところです。
――新たなニーズに対応した漁港としては、どのような港があるのですか
大野
道では、国の新マリノベーション構想に基づいて、都市住民との交流などを促進するための拠点形成を目的として、新たな「ふれあい整備計画」を釧路、上磯、余市の3地区で策定していますが、この中で、千代の浦、桂恋、茂辺地、余市河口の4漁港において、フィッシャリーナや釣り公園、種苗生産施設などの整備が行われているところです。
――北海道の海岸線は3千qもあるとのことですが、海岸の整備はどのようになっていますか
大野
漁港海岸事業は、現在、第6次海岸事業七箇年計画に基づき整備を進めています。計画の基本目標は3点です。
一つは、国民の生命・財産を守り、国土保全に資する質の高い安全な海岸の創造、つまり安全な海岸にすることです。二つは、自然との共生を図り、豊かでうるおいのある海岸の創造、つまり自然と共生する海岸づくりです。そして三つは、利用しやすく親しみのもてる、美しく快適な海岸の創造、つまり利用され親しまれる海岸ということです。
――代表的な事例は
大野
高潮対策事業として、浜中町の奔幌戸漁港海岸高潮対策事業があります。津波対策の水門などの遠隔化を行い、海象データなどの監視と保全施設の制御を一元的に行うための津波防災ステーションを整備しています。
環境整備事業では、標津町の標津漁港海岸環境整備事業があります。海岸の侵食対策と海水浴場の整備に必要な砂が不足しているため、漁港事業の浚渫砂を養浜に利用し、渚の再生を推進しています。
公有地造成護岸等整備事業としては、松前町で茂草漁港海岸公有地造成護岸等整備事業を行っています。越波による背後被害を防止し、地域住民を波浪から守るとともに、災害時の避難広場を兼ねた公共用地の計画的な造成の促進を図るため、海岸保全施設を整備しています。
――今、公共事業ではコストの削減が求められていますが、何か取り組んでいる事例はありますか。また、沿岸漁場の整備では、漁業者から様々に要望があると聞いています。北海道として特徴的な事業があったら教えて下さい
大野
例えば、建設海岸保全事業との連携事業として、新松前地区養殖場造成事業(原口工区)を行っています。この事業では、背後の集落を守る海岸事業の離岸堤を少し沖に出すことによって、ウニ養殖事業としての静穏海面の造成を合わせて行っているものです。両事業が一体化することで約2億3千万円のコスト削減効果を見込んでいます。
また、本道に特徴的な事業としては、網走の常呂町における第2サロマ湖地区沿岸漁場改良事業が、流氷からの養殖施設の被害を防止するための流氷流入防止柵の設置を行う事業として全国でも例のないものとなっています。
――今後の課題、北海道が果たす役割、将来的な可能性について、どう考えていますか
大野
国は、昨年12月に策定した水産基本政策大綱で、沿岸漁場整備開発事業と漁港漁村整備事業を一体的に実施する方向を示しています。北海道においても、地域のニーズを聞きながら次期長期計画(h13年〜17年)の構想づくりを進めているところです。
今、公共投資の透明性・効率性の確保や行政の説明責任の明確化が求められており、とくに計画の策定にあたっては、事前の評価が重要となっています。水産の公共投資においては、水産物の資源増大、漁獲、陸揚げ、流通といった一連の流れの中で、可能な限り同じ基準・手法に基づいて実施・評価することが必要です。
次期計画の基本方針としては、漁場整備の沖合への展開、水産物の流通拠点の整備、沿岸域における漁場と漁港の一体的整備、漁村の総合的な振興、漁場環境等の積極的な保全・創造を念頭に計画づくりを急いでいるところです。
北海道は全国シェア約25%を占める一大水産物供給基地であります。国の水産基本政策大綱では10年後の自給率目標が掲げられていますが、この目標達成に向けてはもちろんのこと、新鮮で、安全な水産物を多くの皆さんに供給していくことが北海道に求められていると考えております。

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