建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年9月号〉

interview

千葉県はまさに首都圏のなかの『新大陸』

千葉県土木部長 武藤 和宏 氏

武藤 和宏 むとう・かずひろ
昭和22年6月23日生まれ、岐阜県出身。
昭和46年金沢大学土木工学科卒後、建設省入省。
三重県土木部道路課をはじめに、昭和53年 中部地建名四国道工事事務所調査第二課長、昭和56年 九州地建道路計画第二課長、昭和62年 岐阜県道路建設課長、平成5年 中部地建名古屋国道工事事務所長を経て、平成8年5月 関東地建道路部長に。平成11年4月 現職。
千葉県においても他県と例外ではなく、少子高齢化、経済のグローバル化、価値観の多様化などの経済社会システムの転換期を想定した政策を進めている。平成8年度からスタートした「ちば新時代5か年計画」は、「ひと」を中心とした新たな社会システムの創造を基本理念としており、限られた財源を有効に活用しながら、高齢社会や自然との共生に配慮するものである。
この4月に関東地建道路部長から就任した武藤和宏部長は千葉県について、「大きな可能性を持っている。基盤整備もまだ十分ではないので、国と地方とのバランスをどう取るかが大切」と語る。
コスト縮減対策や公共事業の「再評価システム」の効率化、透明化により一層努めていかなければならない現状があるなか、改めて“首都圏の千葉県”について、その位置付けを武藤部長に聞いた。
――4月1日付で千葉県庁の土木部長に就任されましたが、前職は建設省関東地建道路部長を務めていたとお聞きしています。まず最初に、千葉県に対してはどのような印象を持たれていましたか
武藤
千葉県は首都圏の1都3県の中で「魅力ある県」だと感じていました。これから非常に伸びる可能性を秘めた県という意味に置いてです。基盤整備に関しては、まだ不十分な場所が随分あるので、開発には余力があります。“行政マン”としても、なかなか面白い県ではないでしょうか。
――ご専門は道路ですか
武藤
現在は河川のほかに、港湾も担当しています。我が土木部は、県土の基盤整備を推進するセクションです。県民の産業活動から社会活動、日常活動の基盤になる部分を司っているわけですから、そういう意味でも大変に面白い展開ができるのではないかと思っています。
これまでも何回か千葉県を上空から見る機会があったのですが、「緑が多く、海がきれいな県」、それが一般的な印象です。
――首都圏のなかではユニークな土地柄ですね
武藤
はい。県土の面積もかなり広いですから、東京に近い部分と、房総、太平洋に面した地域は自然が残されています。地形的にもさほど険しい所はなく、低い山だからこそ豊かな自然や植物群落が確認できるのかもしれません。
管内をまだ十分に見てはいないのですが、山の上に登った眺望はけっこう山並みに見えますから、高さがせいぜい300m程度クラスの山なのでしょうか。見方によっては面白い眺観があります。
――そういう山であってもダムがありますね
武藤
そうですね。ダムでいえば、千葉県も水が不足している県です。こういった低平地ですから、貯える場所が非常に少なく、川に頼らざるを得ません。ところが、国内の河川のほとんどは短いですから、県内にダムが出来ない分、利根川の上流のダムに頼る部分もたくさん出てくる訳です。
――やはり県の北部はそういう状況ですか
武藤
県自体が水関係でいえば利根川に三分の二以上頼っているという現状があります。
――道路に関してはどうですか
武藤
道路も基幹となる道路が十分に出来ていない状況にあります。現在、特に一番力を入れているのは圏央道(首都圏中央連絡自動車道)ですが、全長95kmのうち、千葉東金道路A期の16kmが開通しているだけです。一昨年の12月に待望の「東京湾アクアライン」が開通したので、圏央道を生かしながら幹線道路の枝葉を付けて、半島性の解消を図ることが県としての重要な施策になります。
もともと京葉道路だけだったのが、湾岸道路が出来て千葉の道路事情は随分と良くなっています。湾岸自体も高速道路の部分はそこそこ流れていますが、首都高速に入ると渋滞しますし、一般道は常時混雑していますから、東京と千葉のつなぎの湾岸道路がもう一本必要です。
それから、“アクアライン”から来て“成田”に延びていく圏央道の整備が重要になってきます。もう一つはいま、建設省と日本道路公団が建設している“松戸”と“市川”を通る「東京外かく環状道路」ですが、これは千葉から東京へアクセスする重要な道路となります。
この代表される三つの道路をはじめ、その幹線と地域の中心を結ぶ道路の整備は、まだ手付かずのまま残っているところが少なくないのです。 
そういうことからも、これから開発できるスペースが十分に残っているので、インフラ整備が進んでいけば、現在約 600万人の人口はさらに1割程度は増えるキャパシティは潜在的にあるのです。
――東京湾口道路の展望は
武藤
アクアラインの交通量はまだ少ないので、湾口道路はさらに先の段階の話しとなりますね。
――武藤部長が千葉県に感じられるその他の印象は
武藤
まず千葉県は、「県境が分かりやすい非常に特徴のある県」というもう一つの顔を持っており、全ての県境は川で仕切られ、片側は海が広がっています。「ランドサット」の写真でも県境が確認できるほどの美麗さを誇っているのです。改めて自然に恵まれている県だと感心してしまいます。
――非常にまとまりのある県ですね
武藤
東京に近い所と地方といわれる地域とでは考え方も違います。いずれにしろ一つのものさしで県内のこれからの基盤整備を全部出来るというわけにはいかないでしょう。
財政状況が厳しいので重点投資がさらに必要ですが、いわゆる「交通需要が多く困っている地域」か、「シビルミニマムが達成されていないから困っている地域」を優先するのか、同じコストと便益でも、県民の皆さんの理解が得られなければ難しい面があります。
――建設省出身の部長は国とのパイプも太いですから、県の土木行政も国政の流れの中で進むのが理想では
武藤
中央と密接に関係を持ちながら、国にしていただくことと、地方がするべきことをきっちりと仕分けをしてバランスの取れた整備を推進していくのが望ましいでしょう。
もちろん、地方ではやりにくい部分も多々あります。大きな幹線道路の整備などは、地方のレベルで進めると全体の大きなエリアの中でのアンバランスが生じがちなので、国で実施してもらい、それらとの整合を取りながら、県としてはきめの細かい土木行政、建設行政をより推進すべきだと考えています。

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