建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年7月号〉

interview

町民一人一人が夢を持ち、まちづくりの主役に

「リリパーク」は農家の経営意識を改革

小清水町長 河合 淳 氏

河合 淳 かわい・きよし
昭和 8年 12月22日生まれ、
女満別町出身、網走南ケ丘高等学校卒業
昭和 28年 小清水中学校教員
昭和 38年 訓子府中学校教員
昭和 48年 池田町教育委員会社会教育主事・課長
昭和 51年 小清水町教育委員会社会教育主事・課長
昭和 60年 小清水町教育委員会教育長(2期)
平成 5年 小清水町長に就任 現在2期目
北海道の東北部に位置する小清水町は、肥沃な大地で農業を中心としたまちづくりを進めてきた。しかし、現在の農業を取り巻く環境は厳しい。その状況を打破すべく、小清水町では「ゆう水」による土の再生、ゆり公園「リリパーク」による農家の意識改革に取り組んでいる。その新しい農家のあり方、方向性、そして小清水町のまちづくりを河合町長に語ってもらった。
――まもなく町長としての8年間を終えますが、どんな基本姿勢で行政を進めてきましたか
河合
町長の任期は4年ですので、4年間で何をしなければならないのか、何ができるかを考え、また先輩町長方は任期8年で仕事に区切りをつけていることから、私も1期ごとに責任ある仕事をしながらも、少なくとも2期8年間は務めなければいけないという考えで、町政を進めました。
今は国も行政改革を進め、21世紀という変化の節目にあり、私たち地方自治体も変わらなければならないと考えています。例えば市町村合併問題や農業の国際化問題など、私の次の任期は、21世紀の小清水町の進むべき方向性を具体的に一歩踏み込み、そして行政と町民が役割分担をして、真剣になってまちづくりを考えていかなければなりません。この町民意識や姿勢を具体的に作らなければ、21世紀のまちづくりはあり得ないと思います。
――基幹産業の農業については
河合
小清水町の歴史は、自然と共生し自然の恵みを生かした、農業を中心とした農畜産業を基幹産業としたまちづくりでした。現在は農業を取り巻く環境は厳しい状態ですが、これからの時代も、これまでに培ってきた自然との調和や肥沃な大地で生産し、安全で美味しいどこのまちにも負けない食料の生産基地として、努力することが我が町の、何よりの誇りや使命でもあり、また独自性を発揮することになります。
現在小清水町では、農業と酪農がリンクした土づくりを中心とした有蓄農業を推進し、土を生き生きとしたものに蘇らせ、基本的には土の力で食料を生産する考えで進めています。「ゆう水」はその一環で、デンプン廃液を貯めて、土壌菌などバランスの良い微生物群を培養した液体で健康な土を作り、化学肥料や農薬に頼らない農業を目指しています。食料は医学に匹敵するほど、大事だという考えに基づき、これからも徹底したクリーン農業を推進していきます。
また、農業生産者は真の経営者にならないといけません。今までの農業は生産物を農協に納めた時点で終了でしたが、これからはいつ誰に売られたのか、流通の最終段階にまで責任を持つべきだと思います。これは消費者にどのように喜ばれ、何が求められているのかなど消費者レベルのニーズにどう応えるか責任を持ち、食料を生産する事が大事で、またそうした農家の意識改革をしなければ、これからは残れないと考えています。ぜひ一戸一戸の農家が経営意識、自己責任の意識を持って欲しいものです。また意識改革の中で、1次産業と2、3次産業が連携またはリンクした農業経営、観光産業の発想が必要だと思います。
――産業が連携すると、また新たな展開もできますね
河合
わがまちが始めたのは、今年で4年目になるゆり公園「リリパーク」で、当初は農家が山奥の畑でカサブランカを栽培し、切り花として売っていましたが、ゆりの花畑をまちの中心部に作ろうと思い立ち、10ヘクタールの土地にゆりを植え、観賞料をいただき、帰りに山奥の畑の花を、切り花や球根として売り出しています。7月中旬から9月中旬までの営業ですが、その2ヶ月間で毎年、7万人ほどが訪れ、採算がとれています。
この「リリパーク」の特色は、農家が経営していることで、これはまさに農家経営における意識改革なのです。既在の農業の単純な流通過程では収入が大変厳しくなってきました。そこで観光スポットを整備して、観光と農業が融合した発想を農業に取り入れる必要があります。このリリパークの中に商工会員が店を出すようになってきました。
他にも小清水町では、浜小清水の駅前に道の駅「はなやか小清水」があり、この中に農産物の加工センターを設置しました。本来ならば加工センターは、まちの中心部に建築するのが一般的ですが、郊外に置くことにより、町民だけでなく観光客にも体験してもらうことができるのです。そこでわが町の農産品は他とは違うことを実感してもらい、同時に新しいにぎやかな人の交流を促して、経済の発展、活性化につなげたいと考えています。
――第4次小清水町総合計画では、どんなまちづくりのビジョンを描いていますか
河合
都市部の人々から小清水町に行ってみたい、もう一度行きたいと言われるような、都市に住む人々に対する魅力が山村にはあるはずです。
そこで、現在展開している第4次小清水町総合計画のテーマは「自然と共生する小清水町」であり、その基本は健康と福祉のまちづくりです。健康というのは、緑や土の健康、そこから生産される安全で美味しい食料を食べて体を健康にしたい。そして心の健康は生涯学習で養い、みんなで支え合う福祉のまちづくりです。
そうした健康と福祉のマチづくりがわが町の魅力づくりにつながるのではないかと思っています。住み続けて良かったというまちに一歩踏み込んだ取り組みをしていきたいです。
――そのために、まず着手しなければならない政策は
河合
私の考えは、まちづくりは人づくりだと考えています。現在まちの主役になって下さる方は、20、30年前に体験したことを実践しています。したがって、今の子供たちが、20、30年後に活躍するためには、目先の事だけでなく、常に人材の育成に投資をしていくことが行政の重要課題だと考えます。
現在のところ、小学校は財源の有無を理由に統合してはいません。大体20人規模の学校が4つほどありますが、これは財政論からいくと、効率的ではないと言われるかもしれません。しかし、今は学校が小規模でもインターネットなどの手段によって、情報が不足することはありません。小さな学校から夢のある人も育っています。これは小規模校の一人一人を大事にして育てる教育の効果だと思います。
また子供たちばかりでなく、学校は地域のコミュニティーセンターとして活用することができます。地域住民全てが情報を得て育って欲しい、学校を拠点にしたコミュニティの自立は、まちの自立にもつながっていくと思います。
――3期目に向けての抱負は
河合
町民に夢を持たせるということが一番難しいことですが、やらなければならないことだと考えています。これからは町民自身がそれぞれの立場で、一人一人が奮起して新しいことに挑戦していく、そのような町民像を作るのが3期目の最大の課題だと思っています。
難しいことですが、地方分権の社会というのは、町民と共にまちづくりを行うことですから、そのためには、情報を提供し共有することが必要だと考えます。今までは、役所主導の雰囲気がありましたが、これからは町民一人一人が夢をもち、主役となって積極的にとりくんでほしいと思います。そして、行政が後押しする形にしていきたいですね。 

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