建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年7月号〉

interview

市民生活の質的な向上と大都市にふさわしいまちづくりを推進

千葉市長 松井 旭 氏

昭和2年11月24日生まれ、北海道旭川市出身、昭和26年中央大学専門部経済学科卒。
昭和27年自治庁選挙部勤務、昭和33年自治庁財政局財政課勤務、昭和39年山口県下関市財政部長、昭和42年千葉県衛生部主幹、昭和44年千葉市財務部長、昭和49年千葉市第二助役、昭和52年千葉市長初就任、現在六期目。
――はじめに、新世紀を目前に控え、今年度はどのような施策を重点的に進めていかれますか。
松井
新しい世紀までいよいよあと2年たらずとなりました。
今年度は、その基礎固めを行う極めて重要な時期ですから、市民の皆さんが来るべき21世紀を希望をもって迎えることができるよう、21世紀の千葉市づくりの指針となる「千葉市新総合ビジョン」の策定をはじめ、市政に全力で取り組んで参ります。
また、市民の皆さんが、健康で明るく生きがいに満ちた生活を送れるよう、保健・医療・福祉、環境、教育などのソフト施策の充実を図るとともに、介護保険制度のスタートに向けた諸準備にも万全を期して参ります。
その一方で、道路、公園、下排水、廃棄物処理などの生活関連施設の整備を進めるとともに、魅力ある都市づくりを計画的に推進するため、街路、土地区画整理事業などの都市基盤整備や都市機能の充実に努めるほか、現下の緊急課題である地域経済の活性化にも十分配慮して参ります。
――景気対策が急務となっている中、千葉市では、地域経済の活性化に向けて、どのように取り組んでいかれますか。
松井
景気は依然として深刻な状況にあり、国は、今年度において景気対策に最優先で取り組むべく、積極型の予算編成を行いました。
本市においても、地域経済の活性化は緊急かつ重要な課題であり、国の景気対策と軌を一にして、可能な限り取り組む必要があります。
このため、国の第3次補正予算に伴う国庫補助金等を最大限に確保し、平成10年度2月補正予算に公共事業等の追加事業費を計上するとともに、今年度当初予算におきましても、道路、下排水等の生活関連施設の整備をはじめ、街路、土地区画整理などの都市基盤整備の推進に必要な事業量を確保し、切れ目のない予算執行に努めて参ります。
――中小企業対策はどうですか。
松井
中小企業を取り巻く経営環境は非常に厳しく、経営者の皆さんは大変な努力をされています。
そこで、中小企業者への対応として、資金融資枠を330億円から480億円に拡大し、金融面からの支援強化を図ります。
さらに、商店街販売促進支援策として、ポイントカード導入や期限付商品券発行助成事業などを創設するとともに、いきいき商店街活性化事業を推進するなど、地域商業の振興策にも十分意を用いて参りたいと考えています。
――次に、千葉市での行政改革の取り組み状況についてお聞かせください。
松井
本市では、平成7年に策定した千葉市新行政改革大綱に基づき、これまでも行政改革の推進に積極的に取り組んで参りましたが、その後の社会経済情勢の変化や地方分権の推進に柔軟かつ弾力的に対応できるよう、行財政運営の体制整備が必要となっています。
このため、昨年11月に市行政改革懇談会から「大綱の見直しに関する提言」をいただき、12月に新行政改革大綱の改定を行いました。
この改定した大綱に基づきまして、本年2月に、平成11年度を初年度とする推進期間3か年の「行政改革推進計画」を策定し、現在この計画に基づき、行政改革に取り組んでいるところです。
――「推進計画」の内容はどうなっていますか。
松井
「推進計画」は、数値目標の設定、財政構造の健全化、地方分権の推進などに伴う対応を基本的な考え方とし、事務事業の見直しや財政構造の健全化、組織・機構、定員、給与の見直しなど10の推進項目について、147の取り組み項目を設定しています。
今年度においては、経常的経費の削減をはじめ、給与の見直しや、し尿・浄化槽・汚泥処理事業の見直しなどにより、経費の削減に努めることとしていますが、今後とも、市民サービスの向上を図り、魅力ある大都市に向けたまちづくりを進めるため、引き続き積極的に行政改革を推進して参ります。
――ところで、松井市長さんは、6期にわたって市政を担っておられるわけですが、これまでを振り返って、どのように感じておられますか。
松井
市長に就任して22年が経過しようとしておりますが、最も印象深いのは、何と言っても政令指定都市への移行ですね。
私が市長に就任した昭和52年7月当時、千葉市の人口は70万人で、県都として、また首都圏の中核都市として、発展を続けていました。
そのような状況の中で、将来の100万都市を見据え、都市基盤の整備・充実や市民サービスの向上を図り、大都市行政を確立するために、政令指定都市への移行がぜひとも必要と感じたわけです。
そこで、昭和53年4月に指定都市調査室を設置して以来、14年の歳月を経て、平成4年4月に、念願の政令指定都市へ移行することができました。
――千葉マリンスタジアムのフランチャイズ化もありましたね。
松井
そうですね。千葉マリンスタジアムヘのロッテ球団の誘致は、もともと千葉市にお住まいの方と新しい住民の方が、千葉市民として、千葉県民として、共に応援できるものをつくろうということで進めたのですが、市民の皆さんの熱意によって、平成4年にロッテ球団の移転が実現しました。
千葉ロッテマリーンズは、今ではふるさと球団として定着し、市民・県民のふるさと意識の醸成に大いに寄与しておりまして、今シーズンこそは、ぜひともパ・リーグ優勝、さらには日本一を期待いたしております。

ごみの「5分別収集」が定着

――その他には何かありますか。
松井
ごみ問題への対応も印象深いものがあります。
本市では、昭和38年から、「ダストボックス方式」によるごみ収集を始めたのですが、その後、人口の増加やライフスタイルの多様化などにより、ごみの収集量・処理量は急増し、ごみ問題は緊急かつ最重要課題となりました。
そこで、市内3番目の北清掃工場の建設を契機に、新しい時代のごみ処理対策に積極的に対応するため、平成4年2月に「ごみ処理基本計画」を策定し、同年10月から、21世紀に向けた資源循環型社会の構築を目指して、ごみの「5分別収集」をスタートさせました。
今では、市民の皆さんのご理解とご協力により、すっかり定着をいたしておりまして、今後とも、ごみの減量化・再資源化に努めて参りたいと考えています。
――さて、先ほど、「新総合ビジョン」を策定されるとのお話しがありましたが…。
松井
はい。 21世紀においては、本格的な少子・高齢化社会の到来や、地球規模の環境問題、地方分権の進展、ライフスタイルの変化など、私たちを取り巻く環境は大きく変化すると思います。
そこで、時代の潮流に的確に対応するため、21世紀の都市づくりの指針となる「千葉市新総合ビジョン」の策定を進めておりまして、今年度は、公募を含めた100名の委員による審議会でご審議をいただき、来年3月を目途に取りまとめたいと考えています。
21世紀のまちづくりの主体は市民の皆さんですから、「市民提案募集」や「区民懇談会」などで寄せられたご意見・ご要望をできる限り反映したビジョンをつくりあげたいと思っております。
――最後に、21世紀における千葉市の将来像についてお聞かせください。
松井
21世紀を展望しますと、『ゆとり』や『豊かさ』の視点からのまちづくりが、より強く求められるものと思います。
例えば、芸術・文化・スポーツの振興などは重要な要素の一つだと思いますが、そのためには、大都市にふさわしい中核的文化ホールや総合スポーツセンターの整備が必要だと思います。
また、市民の豊かな生活を確保し、大都市として発展を続けるためには、都市機能の充実・強化も重要な課題です。
蘇我臨海部と蘇我駅周辺市街地を「第三の都心」へ
まず、本市の“顔づくり”の観点から、jr千葉駅を中心とした千葉都心地区の活性化が重要で、現在、中心市街地活性化推進事業に鋭意取り組んでいるところです。3月24日に、モノレールの千葉駅から県庁前駅までの区間が開業しましたので、中心市街地のにぎわいが、より増してくるものと期待をしていますが、中心街の回遊性を創出するために、千葉駅前大通りの地下街構想についても、具体化に向けた検討を進めたいですね。
また、蘇我臨海部と蘇我駅周辺市街地についても、相互に関連を持たせながら一体的な都市整備を進め、「千葉都心」、「幕張新都心」に次ぐ「第三の都心」として、まちづくりを進めたいと考えています。
さらには、市民の皆さんの“足の確保”のために、モノレールの環状ルートもぜひ実現したいものです。
――ソフト面についてはいかがですか。
松井
新しい世紀を迎えるわけですから、時代の変化を的確にとらえ、市民ニーズを十分に反映した施策を展開していかなければなりません。
21世紀には、少子・高齢化がますます進むでしょうから、福祉施策の充実や市民生活に密着した保健・医療、生涯学習の向上など、ソフト施策にも力を入れ、市民の皆さんが健康で明るく、生きがいを持って暮らせる“千葉市”にしたいですね。

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