建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年6月号〉

interview

産業経済の活性化をどう展開するか

it関連分野等成長産業への構造改革にカギ

北海道経済部長 吉澤 慶信 氏

吉澤 慶信 よしざわ・よしのぶ
 生年月日  昭和19年11月15日
 出身  福島町
 最終学歴  北海道大学水産学部(昭和42年3月卒)
 昭和 42年 4月 北海道職員採用
 昭和 55年 5月 東京事務所主査(通産省)
 昭和 57年 5月 商工観光部石炭対策本部石炭鉱係長
 昭和 59年 5月 商工観光部商工振興課企画係長
 昭和 61年 4月 商工観光部工業課長補佐
 昭和 62年 6月 商工観光部商工振興課長補佐
 昭和 63年 4月 商工労働観光部着用政策室主幹
 平成 2年 4月 商工労働観光部工業振興課長
 平成 4年 4月 企画振興部企画室参事
 平成 6年 4月 商工労働観光部総務諌長
 平成 7年 6月 商工労働観光部石炭対策室長
 平成 8年 4月 企画振興部計画室長
 平成 9年 6月 総合企画部計画室長
 平成 10年 4月 経済部次長
 平成 11年 5月 経済部参与
 平成 11年 7月 経済部参与(苫東代表取締役社長)
 平成 13年 4月 経済部長
九州はアジアと地理的・歴史的なつながりが深く、一体的な経済圏が確立されており、我が国におけるアジアの玄関口として位置づけられている。そのため、管内の道路整備の方向性は、アジアの玄関口に相応しいネットワークの構築、災害時に対応できる道路網の形成、本州、四国との連携強化にある。九州地方整備局の吉澤敏樹道路部長に、管内の交通事情と道路整備について語ってもらった。
――全国にもまして北海道の経済が厳しい中での就任となりましたが、新任の抱負をお聞かせ下さい
吉澤
確かに、北海道を取り巻く情勢が変革を統けている中での就任で、産業の活性化や雇用の創出など、様々な課題に直面し、責任の重さを痛切に実感しているところです。
今、我が国においては、景気回復に減速感が見られるなど厳しい経済情勢に加え、情報化、グローバル化などの急速な進展の中で、情報通信技術の活用による産業・社会構造への転換、金融システムの改善や規制改革の推進など、経済構造改革に取り組んでいくことが急務となっています。
北海道も、雇用情勢や経済環境の改善への取り組みはもとより、国に大きく依存してきた経済発展のシステムの変革が迫られています。今後、地域がそれぞれの独自性を発揮しながら、主体的、自立的な経済社会づくりを目指して、活発な企業活動や民間投資に支えられた力強い経済構造を築いていくことが重要だと考えています。
したがって、経済部としては、道政上の重要課題である「経済・雇用対策」の中心的な役割を担いつつ、業界の動向を十分注視しながら関係業界団体をはじめ、北海道経済産業局や北海道労働局などと密接な連携を図りながら、新たな産業の創造や中小企業などへの金融支援、雇用の安定や創出、多様な観光資源の開発などに積極的に取り組み、本道における経済活力の基盤づくりに最大限の努力をしていきたいと考えています。
――景気の動向と経済・雇用情勢がどう推移していくと見ていますか
吉澤
最近の景気に対する国の判断によれば、「平成11年4月を景気の谷として緩やかな改善を続けてきた」としています。確かに、生産や企業収益が回復し、民間設備投資が持ち直していることを示していますが、雇用面や消費面での改善には結び着いていないと感じます。
今後の見通しについては、アメリカ経済の減速に加え、国が4月6日に発表した緊急経済対策による金融再生措置での雇用面への影響など、懸念すべき点もあると言われていますから、依然として予断を許さない状況が続くと思います。
そうした情勢を反映してか、本道経済の最近の動向を見ると、平成12年の鉱工業生産は前年を上回って推移してきたものの、この2月には前年同月比を下回るなど、足踏み感が見られるほか、住宅投資や公共事業も前年に対して減少しており、個人消費にも改善が見られず、民間設備投資も慎重な姿勢が続いているなど、全体としては、回復に向けた動きに減速感がみられます。
一方、雇用については、有効求人倍率は前年を上回っており、改善の動きが見られるなど、厳しさは和らいでいますが、企業の倒産や企業活動の縮小などで、平成12年を通しての完全失業率は、実に5.5%と過去最高の水準にあるなど、依然として厳しい状態です。したがって、引き続き雇用の安定・創出に対する特別な配慮が必要と考えています。
――北海道経済が自立するために必要なものは、何と考えますか
吉澤
本道経済の自立化は、長年の重要な課題です。これまで公的需要に大きく依存してきた経済体質を、自立型の経済構造に転換していくには、付加価値生産性の高い製造業や、それに関連する産業支援サービス業などの集積を高め、厚みと広がりのある産業構造にしていくことが大前提です。
技術の飛躍的な進歩や環境・エネルギーの制約、市場のグローバル化など、経済社会情勢を巡る環境の変化には著しいものがあるので、これらに柔軟かつ的確に対応し得る力強い経済体質にしていくことを目指さなければなりません。
そのためには、その主体となる民間の経済活動を、いかに活発にしていくかがポイントです。
そこで、私たちは12年3月に策定した「経済構造改革の展開方策」に沿って、情報通信関連分野や環境・リサイクル分野、観光関連分野、食関連分野など、今後成長が期待できる6分野を重点的に支援していくことにしており、新たな産業の創出や既存産業の生産性向上、人材の育成などを積極的に展開していくことにしています。
幸い、本道各地で地域特性を生かした新事業を創出するための産業クラスターの活動をはじめ、産学官連携による様々な取組みが活発に行われるようになってきたほか、ITを活用した事業活動を積極的に展開している企業が数多く見られるようになってきました。
――アメリカで発生したハイテク関連株の下落は、世界中のIT関連産業の将来不安を喚起していますが、実業としては、まだまだ未知の可能性を秘めているこのIT関連産業の育成振興にどう取り組んでいますか
吉澤
道内では、札幌を中心に数多くのソフトウエア業やシステムハウス、情報処理サービス業など情報関連産業が集積しつつあり、最近では特に札幌駅北口周辺に情報関連のベンチャー企業が急増しています。これが「サッポロバレー」と呼ばれ、全国的にも脚光を浴びていますね。
また、情報通信技術の進展や利用料金の低下などから、札幌市を中心に商品販売などの顧客サービスを行うコールセンターの立地が進んでおり、道が11年12月に創設した情報関連企業立地促進補助金を利用する企業は、13年3月末現在で9企業となっており、約500人の雇用創出が見られました。これに止まらず、道内に立地したいとして照会のある企業がさらに多数あります。
一方、千歳市には電子機器の液晶表示装置などを生産するセイコーエプソンの工場進出が決まっており、これらIT関連産業の立地が、雇用創出はもとより、今後の北海道経済の活性化や高度化を図る上で重要な分野であることは確かです。
したがって、道としても、IT関連企業の集積を一層促進するため、企業誘致の積極的な展開と合わせ、企業が求める人材の育成・確保を図るなど、受入体制の整備に努めていきます。
また、中小企業などのIT化への取り組みを支援するため、13年度から「北海道創造的中小企業育成条例」の助成措置に、IT化推進枠を新たに設け、研究開発に対する助成や、事業化の際に発行される新株の引き受けを行うことにしています。
さらには、インターネットの普及や企業のアウトソーシング化に伴い、新たな事業・就業形態として注目されているsoho事業の振興方策についても検討することにしています。
――4月1日から(財)北海道中小企業総合支援センターがスタートしましたが、これは何を目的とする団体ですか
吉澤
この北海道中小企業総合支援センターは、道内の中小企業や起業家からの、資金、技術、情報などに関する様々な支援ニーズについて、ワンストップで対応できるよう(財)北海道中小企業振興公社、(杜)北海道商工指導センター、そして(杜)北海道中小企業振興基金協会の3つの団体を統合し、4月1日から新たにスタートしたものです。
業務は、北海道経済センタービル内で開始していますが、そこには専門コーディネーターを配置した「総合相談窓口」を設け、創業から事業化までの発展段階に応じた支援施策に関する適切なコーディネートを行うほか、研究開発の助成や事業化資金の貸付、支援情報の発信など、事業者に対するきめ細かな支援を行っています。「これは」というアイデアを持つ人や、開業しようという意欲のある人は、ぜひ利用して欲しいと思います。
また、地域の中小企業の方々にも、気軽に相談や指導を受けることが出来るよう、地域生活圏ごとに整備している「地域産業支援センター」や、商工会議所、商工会などさまざまな支援機関がありますので、密接な連携により、地域の中小企業の利便性を高めていきたいと考えています。
――雇用の創出については、即効性ある何らかの対策はありますか
吉澤
現在の雇用情勢は、企業からの求人が回復しつつある一方で、企業の倒産のほか、店舗の閉鎖や事業活動の縮小などから、失業者数が高止まり状態となっています。
そこで、11年12月に策定した「5万人の雇用創出に向けた実施方針」に沿って、経済界や労働界、行政などが一体となって、新しい産業の創造や雇用機会の創出などの実現に全力を挙げているところです。
今後とも、既存産業の振興はもとより、起業化や経営革新による新しい産業の育成や、成長が期待できる産業の積極的な誘致などを通じて、雇用の受け皿を広げる一方で、情勢の変化に柔軟に対応できる人材の育成にも力を入れることにより、いわば、雇用施策と産業施策が車の両輪として、しっかりとかみ合わせていくことが基本だと考えています。
国では、時代の変化に対応した雇用対策を進めるため、関係法律の抜本的な改正に取り組んでおり、地域における雇用開発においても、国と地方のコラボレイト(協働)を目指したものになるとのことですから、道としても、この動きを視野に入れながら、対応していく方針です。
――有珠山の噴火が、景気対策に水を注した一面があるのでは
吉澤
道としては、本道の主要な産業であります観光の振興についても重点政策として力を入れていくことにしています。
昨年の有珠山噴火により、洞爺湖温泉や有珠山周辺地域のみならず、道内各地においても観光客の入り込みが落ち込んでいます。そこで、有珠山周辺地域でのイベントや「感動ランド北海道キャンペーン」に対する支援を行う予定です。また、国内外からの観光客を積極的に誘致すべく、各種イベントや体験型観光などに重点を置いた宣伝誘致活動を活発に展開しています。これに合わせて、受入体制の整備、充実にも努めていきます。
道としては、世界に通用する質の高い「国際観光立国」を目指していますから、地域特性を生かした観光産業の振興を効果的に進めていくため、北海道観光振興条例(仮称)の制定に向けて検討しているところです。
――エネルギー対策は、どう取り組みますか
吉澤
エネルギー対策の推進も大事なことですので、エネルギーの安定供給の確保、効率的なエネルギー利用の促進に努めていきたいと考えています。昨年9月に制定された「北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」に基づき、行動計画を策定して、新エネルギーを導入する事業に対して支援を行うとともに、民間団体等が自主的に実施するシンポジウムなどに対しても支援を行っていきます。
石炭鉱業については、道内で唯一稼働している太平洋炭鉱の安定存続に努めていかなければならないと考えています。また、産炭地域の自立的な経済・社会システムの構築が必要なので、中長期的な支援の実施に必要な資金を確保すべく、現在、設立されている空知と釧路産炭地域総合発展基金を増額することにしています。
――前職では、苫小牧東部工業団地の分譲と会社運営に当たってきましたが、今後の見通しは
吉澤
苫小牧東部地域の開発推進については、基盤整備を計画的に進めることにし、12年5月に設立された関係機関で構成する「苫小牧東部地域企業誘致推進協議会」の活動を通じて、積極的な企業誘致活動に取り組みます。
また、国際熟核融合実験炉(ITER)の誘致実現に努めるとともに、産業技術総合支援センター(仮称)の整備について調査検討を行うなど、プロジェクトの導入推進に努めていきます。
――石狩湾新港その他の地域での企業誘致は、順調ですか
吉澤
石狩湾新港地域の開発推進については、基盤整備を効率的に進め、立地助成策の活用や事業活動資金を確保するとともに、企業誘致の促進に取り組んでいます。また、関係者による検討会を設置して、企業の立地ニーズに対応した開発の進め方や土地利用計画の見直しを行うなど、安定的な経営基盤の確立を図ります。
また、これまでのテクノポリス地域や、頭脳立地促進地域として本道産業の技術高度化などに大きな役割を果たしてきた函館、道央、旭川の各地域については、新事業創出促進法に基づく高度技術産業集積活性化計画により、これまでに蓄積された技術・人材などの産業資源を活用し、引き続き技術の高度化及び新事業の創出を支援します。
さらに各地域の生活経済圏にコーディネート機能などを備えた地域産業支援センターの整備などを進めるとともに、道産品の販路拡大に向けた販売活動に対する支援を行います。
――人材育成策としては、どんな取り組みを考えていますか
吉澤
産業活動を活発にしていくには、産業を支える人材の育成が大事ですので、部内に人材育成課を設け、総合的な人材育成方策を検討していくほか、道立技術専門学院では、個性を生かした経済状況の変化に対応できる職業能力開発を推進するとともに、12年度に策定した学院整備の基本方針に基づいて、地域における人材育成の総合センターとしての機能アップに取り組むことにしています。
 特に、ITに対応した職業訓練を新たに実施するほか、離職者に対する職業訓練の充実を図ります。
一方、季節労働者が全道の雇用者数の約1割を占めている実態を踏まえ、国の冬期雇用援護制度の活用促進によって、季節労働者の冬期雇用の拡大を図り、通年雇用化を促進していきます。
その他、男女労働者が職業生活と家庭生活を両立させつつ、安心して働き続けられる環境をつくることも必要ですから、育児などに関する相互援助活動を行うファミリーサポートセンターの設置を促進したり、育児・介護休業制度の普及に努めていきます。
――価格破壊が進み、それがデフレ要因になっていると指摘されます。その結果、地方の小売店、商店街は苦戦していると聞きますが
吉澤
道としては、豊かな暮らしと産業を支えるサービス・流通業の育成を目指しています。ところが、消費者二ーズの多様化やモータリゼーションの進展など、小売商業を取り巻く環境は大きく変化し、中心市街地における店舗の閉鎖や縮小が相次ぎ、中心市街地の空洞化が著しい実態にあります。
そこで、街づくりと一体となった魅力ある商店街づくりを進めていくことが必要で、市町村が行う中心市街地活性化基本計画策定などに対するアドバイスを行うとともに、tmoや、各地の商店街振興組合が行う空き店舗活用のソフト事業への支援をはじめ、商店街の街路灯などの施設整備、商店街の業種構成や店舗配置の改善を進めるテナントミックス事業への支援を行う予定です。

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