建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年5月号〉

interview

地域住民意識でまちづくり

体験学習センターで地域交流、交流人口増加を図る

音別町長 高野 武 氏

高野 武 たかの・たけし
昭和 32年 3月 北海道釧路湖陵高等学校卒業
33年 7月 音別町奉職
53年 2月 音別町税務課長補佐
55年 10月 音別町農業委員会事務局長
57年 9月 音別町議会事務局長
平成 2年 4月 音別町振興課長
4年 4月 音別町収入役
9年 6月 音別町収入役退任
9年 8月 音別町長に就任
釧路支庁管内の最西南端に位置する音別町は、美しい山野が清流に映える自然に恵まれたまちであるが、それらを活かす町民の人口減・高齢化などにより、産業の状況は厳しい状況だ。しかし体験学習センターや蕗(ふき)の栽培試験で蕗まつり復活を目指す、新たな音別町のまちづくりを高野武町長に語ってもらった。
――町長1期目を振り返って、どう自己評価していますか
高野
平成9年8月に町長に就任しまして、大変町財政が厳しい中で、特に農業振興対策としては、家畜ふん尿処理対策に努めてまいってきました。あるいはエゾシカの防護柵の設置、生活環境整備については、一般廃棄物最終処分場、リサイクルセンターの建設なども実施してきました。さらに二俣小中学校の廃校舎を利用し、体験学習センターとして整備を致しまして、去年から供用開始をしています。また小学校の大規模改造なども手がけてきました。生活環境部門では、公共下水道が平成7年から工事を進めていましたが、今年4月から一部供用開始ということになりましたし、ソフト面においては、6歳未満児の乳幼児の医療費全額無料化と出産祝い金の創設などに取り組みました。現在は昨年度から診療所の新築と簡易水道の増補改良に取り組んでいます。以上のことをまちの発展として取り組み、概ね所期の目的を達成できたのではないかと考えています。しかし少子化などによる自然減・人口減がありまして、過疎化に歯止めをかけられなかったことは、音別ばかりが過疎化状態ではないですが非常に残念だという感想を持っております。
――まちを支えていく基幹産業の農業・林業の状況はどうですか
高野
農業は、農家数の減少や後継者不足、就業者の高齢化などによって生産構造の脆弱化が懸念されています。また、輸入品との競合や環境問題、食品の安全性に対する関心の高まりなど、農業を巡る情勢は厳しいものになっています。
したがって、地域の実情に即した経営体質の強化、収益性の高い農業の確立を目指して、農業生産基盤の整備、担い手の育成、環境と調和したクリーン農業の推進などに努めていかなければなりません。
また、家畜ふん尿処理対策と農業生産を高める草地整備として、引き続き畜産基盤再編総合整備事業を進めたいと思います。
エゾシカの防護柵については、平成11から3ヶ年で予定していましたが、平成12年度で完了させ、約4億5千万円をかけて整備を致しました。今後、エゾシカによる食害が無くなることを期待しています。
林業については、輸入木材の増加などによる木材価格の長期低迷や経営コストの増加による収益率の低下、農業と同じく就業者の減少と高齢化により、林業・木材産業も厳しい状況にあります。このため、森林は木材生産の場としての役割の他に、国土保全や水資源のかん養、生活環境の保全と森林レクリエーションの場など、森林の公益的機能に対する関心が高まっていますから、適切な森林整備の管理に努めていく方針です。
――音別の名産といえば蕗ですね
高野
蕗は音別の昔からの名産で、昭和34年に第1回目の蕗まつりを開催して以来、大変、盛大になりました。その後も順調に続けてきましたが、蕗の乱獲によって第10回目の開催を最後に、47年からは中止を余儀なくされました。現在も乱獲状態が続いており、自生数が年々減少しています。
このため、平成11年度から3ヶ年計画で、道の補助を受け、畑作による蕗の栽培試験を実施しています。栽培試験は今年度で終了する予定なので、この試験栽培の結果によっては将来の蕗まつりの復活もあり得ると考えられます。音別では昔から蕗を利用して商品開発をしており、かつては蕗の皮で作ったこけしなどを作っていました。現在では蕗の和紙「フキ紙」を作っています。
このように音別の発展のためには蕗が欠かせないので、何とか蕗を音別の名産として長く残していけるよう、今後も努力し続けたいと考えています。
――その一環として「フキ紙」づくりを体験学習センターで体験できるわけですね
高野
先に述べた二俣小中学校を利用した体験学習センターが、平成12年度から供用開始されたのですが、利用者は当初の計画よりも多く、4,000人近くが利用しました。この体験学習センターでは、「フキ紙」以外にも手打ちそば作りなど色々な体験ができます。これからもさまざまな体験を通じて自然とふれ合い、チャレンジすることの楽しさを発見できる施設であってほしいと思います。
また、この施設を十分に有効活用するため、体験学習センターを拠点に自然とふれあうことの少ない都市住民や小中高生の校外学習などの推進による地域間交流、または交流人口の増加を図りたいと考えています。
――現在、国民健康保険診療所の建設も進められていますね
高野
現状の診療所では、老朽化が著しいため、去年から国民健康保険診療所の整備を進めており、今年10月には完成の予定です。年内には新しい施設に移転し、なんとか診療をスタートさせたい考えです。また、施設整備と併せて高度医療機器の導入により、診療の充実に努め、安心して暮らせるまちづくりを進めていきたいと思っています。
昨年度から介護保険制度が導入されましたが、音別には介護老人福祉施設などが無く、各市町村に依存しなければならない状況でしたが、今後は、高齢者グループホームなどの施設整備にも努めていきたいと考えています。
――町民が住みやすい環境整備は
高野
一般廃棄物最終処分場とリサイクルセンターを設置した他に、簡易水道や公共下水道の一部供用開始しました。また、住宅・宅地の整備を促進するため、新築住宅に対する助成措置を行っており、今年度からは中古住宅を購入した場合にも、この助成措置を行っていこうと考えています。
この他、公営住宅の建て替えも計画しています。これらが定住促進に少しでもつながればと思っています。
――町政の今後の展望は
高野
町民が生きがいと住みがい、我が町に対する誇りと愛着を持って音別町に暮らせるよう、第2次音別町総合計画では、豊かな森と水を活かして、水・森・人を育むまち、音別の創造を目指しています。そのために、恵まれた自然環境を持つ音別町の発展の可能性を考え、新たな産業の振興と生活構造の構築に向けて、町民参加型のまちづくりに努めています。
また、総合計画は長期計画なので、急激な社会情勢の変化に対応するため、時代にあった事業の見直しを必要としています。このため、今後は保健医療福祉の基盤整備など生活環境整備にも努めていこうと思っており、さらには基幹産業の振興や企業誘致にも努め、雇用の場の創出や人口減の歯止め対策として定住策を進めていきたいと考えています。

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