建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2000年6月号〉

interview

17年度に下水道普及率90%、14年に公園一人約10平方メートルを目標

熊野町で福祉連携モデル住宅を整備

広島県都市局長 坂井重信 氏

坂井 重信 さかい・しげのぶ
平成 3年 4月 技術管理課 工事管理監
4年 4月 香川県道路建設課 課長
6年 4月 道路建設課 課長
9年 4月 都市局 次長
10年 4月 土木建築部 次長
11年 4月 都市局 局長
広島県は、中国山地を背骨に瀬戸内海に面しているため、平地が少ない。しかも河川と山地で地域が分断されているため、都市開発が困難な地理的事情があり、海浜の埋立と中山間地開発によって宅地を確保してきた。したがって、限られた都市空間と分断された地域での下水道網整備、住宅供給、公園開発を余儀なくされている。県都市局の坂井重信局長に、県内の都市施設の整備状況を伺った。
――都市局は、公園、下水道、住宅、学校、公共施設と幅広くまちづくり事業に携わっていますが、県内の下水道の整備状況と特徴から伺いたい
坂井
公共下水道で見ると、下水道整備率は平成10年度末の県内の人口普及率は53.3%と前年より1.9ポイント上昇しました。全国平均58%に比べ県内普及率はまだ立ち遅れていますが、その差は毎年わずかずつですが縮まっています。このうち、過疎市町村の普及率は7.4%と極端に低い状況で、反面、広島市が84%ですから、県都の整備率が全体平均を押し上げる格好です。
したがって、下水道の当面の整備目標は、平成17年までに概ね9割の排水処理率とし、県内のどこでも下水道の恩恵に浴せるように、「日本で一番住みやすい生活県ひろしま」を目指しています。
――実際に、整備にはどのように取り組まれていますか
坂井
坂井 県内86市町村のうち55市町村、つまり12市41町2村で事業実施中ですが、このうち35市町村では一部供用を開始しています。着手率は64%というところです。
また、流域下水道事業については、太田川、芦田川、沼田川の3流域で事業を行っており、太田川、沼田川では12年度、芦田川については18年度までに幹線管渠の工事を完了する予定です。その後は処理場の増設と更新改築を予定しています。
今後、県の下水道事業の課題としては、流域下水道事業の推進を積極的に進めるとともに、遅れている過疎地域を支援することで、平成7年度から過疎代行制度および過疎地域支援事業を創設し、促進を図っています。
県の長期総合計画においては、17年度末に普及率約90%を整備目標としており、その達成に向けて、流域下水道建設事業、過疎代行事業及び中山間地域下水道整備補助事業を推進し、県内の下水道整備の促進を図ることになっています。
――財政力の弱い過疎町村では、代行事業への依存率が高いのでは
坂井
そうです。過疎地域について、県では新規に下水道整備事業に着手する市町村に対し、財政及び技術的な支援を行っています。供用開始までの幹線管渠、終末処理場及びポンプ場の設置を県が代行するわけです。
また中山間地域の市町村にも、財政力や整備率などを考慮して、市町村が実施する単独管渠整備について、県費補助を行っています。補助比率は対象事業費の15%を上限としています。 
――太田川、芦田川、沼田川流域下水道計画はどんな事業ですか
坂井
太田川流域下水道計画(瀬野川処理区)は、昭和56年度から幹線管渠の建設工事に着手し、昭和58年度からは東部浄化センターの建設工事に着手したもので、昭和63年度に一部供用開始しました。当初は1日24,600立方メートルの処理能力でしたが、現在は73,800立方メートルで稼働しています。
平成11年度に幹線管渠が全線概成したため今後は浄化センターヘの流入水量に呼応し水処理・汚泥処理施設の充実を図る予定です。
芦田川流域下水道計画(芦田川処理区)は、昭和51年度から幹線管渠の建設工事に着手し、昭和53年度から芦田川浄化センターの建設工事に着手したもので、昭和59年度に一部供用開始しました。当初は33,600立方メートルの処理能力だったのが、現在は112,000立方メートルで稼働しています。
今後は、沼隈幹線の建設を促進し、沼隈町区の供用開始を行い、浄化センターヘの流入水量に呼応して水処理・汚泥処理施設の充実を図る予定です。
沼田川流域下水道計画(沼田川処理区)は、平成3年度から幹線管渠の建設工事に着手し、平成7年度からは沼田川浄化センターの建設工事に着手、平成8年度に一部供用を開始しました。現在、11,900立方メートルの処理能力で稼働しています。
今後は、平成12年度末に幹線管渠を概成する予定で、河内町で供用開始し、浄化センターヘの流入水量に呼応し水処理・汚泥処理施設の充実を図る方針です。
――下水道の整備が進むと、居住の利便性が飛躍的に向上しますが、県内の住宅供給状況、特に福祉連携住宅の整備状況について伺いたい
坂井
広島県では「長寿の住まいづくり」、「地域定住の促進」、「安全で快適な住生活の創出」を基本目標としています。子供から高齢者まで全ての県民が、県内のどの地域においても、安全・快適で豊かな住生活を営むことができるよう、持家、借家などの住宅の所有形態、地域の特性、生活者の年齢・世帯構成など、多様な住宅需要に対応した住宅施策を積極的に進めています。
そこで民間住宅については、特定優良賃貸住宅や高齢者向け優良賃貸住宅に対する補助や、住宅建設資金貸付などを講じることにより、優良な住宅の供給を促進しています。
公営住宅は、県内約100万戸のうち、44,500戸すなわち約4.4%を占めていますが、引き続き昭和30年から40年代に建設した狭い住宅の建替事業などにより、居住水準の向上、高齢者対策や住環境整備を図ることにしています。
――人々の生活様式が変化しているので、住宅の整備、供給方法も常にそれを捉える必要がありますね
坂井
そうです。とりわけ核家族化が進展した中で、高齢化・少子化に対し、高齢者の「居住の安定」と「生きがいと健康づくり」及び子育て世帯の「子育ての喜びや楽しみ」を支援することにより、誰もが「安心して生活できる地域コミュニティの実現」を図っていくことが必要となります。
そのためには、介護保険の実施に伴う高齢者対策や子育て支援、入居者の高齢化による住宅対策など、福祉と住宅の双方の行政にまたがる課題の解決に向けて、福祉部局と住宅部局が緊密な連携をとりながら、総合的な施策として推進していくのが効果的です。
この課題に対し、県による高齢者設備などが整った県営住宅に、町による地域福祉センターや児童クラブ、広島県住宅供給公社による子育て世代向けの特定優良賃貸住宅を一体として建設し、子育て世代から高齢者までの多様な世代が共に暮らしやすい、福祉連携住宅をモデル的に供給することにしています。
――高齢者の単身居住を拒否する傾向が、特に民間住宅に見られます
坂井
そこで、例えば県営熊野住宅では、高齢者向け設備などが整った県営住宅と熊野町による福祉施設、住宅供給公社による子育て世代向け賃貸住宅の一体的整備を実施しています。
これによって、高齢者と子育て世代が共に暮らしやすい住宅ができますが、これをモデルとして、市町村などへの普及を図ることにしています。
――一方、人間の心を癒す都市空間としては、公園も欠かせませんね
坂井
そうです。公園は、都市住民の安らぎと憩いの場として、またレクリエーション活動の場として、さらに都市における自然環境の保全や災害の防止、災害時の避難地となる役割を有する重要な施設です。こうした機能が総合的に発揮できるよう住区基幹公園、都市基幹公園、特殊公園及び都市緑地などを、その種別に応じた適正な配置と規模で設置しています。
県内の都市公園の開設現況は、平成10年度末において都市計画区域内人口一人当たり面積が8.7平方メートルとなっており、全国平均7.7平方メートルを上回っています。とはいえ、現実には都市によって非常にバラツキがあり、国の長期目標である20平方メートルにはまだ遠く及ばない状況です。
平成8年から14年までの第6次都市公園等整備七箇年計画では、10年度時点で事業費進捗率は国73.9%、県31.2%、整備量進捗率国では国27.2%、県18.3%で、都市計画区域内人口一人当り面積は、平成7年度末時点で国7.1平方メートル、県:8.2平方メートルで、10年度末では国7.7平方メートル、県:8.7平方メートルとなっています。
今後の整備目標としては、平成14年度末に向けて都市計画区域内人口一人当り面積を国9.5平方メートル、県10.5平方メートルとしています。
県としては、今後とも県民のレクリエーション活動の広域化、多様化に対応するため、広域公園を配置し、健全な野外レクリエーション活動を促進します。
――現在、整備が行われている公園と事業内容は
坂井
現在オープンしている県立公園は「びんご運動公園」と「みよし公園」で、県民のレクリエーション活動の広域化・多様化への対応及び体育、スポーツの振興を図ることをねらいとして整備を進めています。国では、「国営備北丘陵公園」の整備を進めています。
びんご広域運動公園は、備後圏における都市公園の水準を引き上げ、広域化し、多様化するレクリエーション需要に対処するとともに、スポーツの振興を図るため、陸上競技場、球技場、テニスコート、野球場などの運動施設を中心とした施設を整備しています。
みよし公園は、備北新都市圏における総合文化ゾーン建設の方針を受けて、文化活動を推進する主要施設として、を整備しています。公園にはカルチャーセンター、こどもの広場、パークゴルフ場、テニスコート、文化の広場、芝生広場、温水プールなどを設置して、備北新都市圏域に提供しています。
さらに、国が所管する国営備北丘陵公園では、中国地方の広域的レクリエーション需要に対応するため、昭和57年度からの整備を行っています。この公園は、中国地方のほぼ中央にあたる庄原市の国兼池周辺に位置し、地域の歴史や伝統文化とのふれあいや多様なレクリエーション活動を通じて人間性の回復の向上の場となる公園として整備するものです。
平成7年4月の第一期開園後、平成元年度に見直した基本計画に基づき、平成11年6月にオートキャンプ場も開園しました。今後、つどいの里などの施設整備を進めながら、早期全面開園の実現に期待しています。
また、新たに世羅高原の持つ気候と地形に優れた自然環境や、周辺観光レクリエーション施設、果樹栽培等の地域資源を活用した公園づくりを図り、都市と農村の広域交流や多様な自然が楽しめる「県民のやすらぎ交流拠点」を創出することにしています。

HOME