建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年1月号〉

interview

八戸から弘前へ行くのに岩手県と秋田県を経由!?

青森−八戸間を1時間で結ぶ上北道路に着手

国土交通省 東北地方整備局 青森河川国道事務所長 富岡 誠 氏

富岡 誠司 とみおか・せいじ
昭和593北海道大学工学部土木工学科卒業
昭和594建設省東北地方建設局採用
平成74建設省河川局砂防部砂防課課長補佐
平成104福井県土木部河川課長
平成124建設省中国地方建設局 斐伊川・神戸川総合開発工事事務所所長
平成139(財)ダム水源地環境整備センター 研究第二部長
平成164現職
本州の最北端・青森県。日本海と陸奥湾、太平洋に面し、自然環境にも恵まれた「みちのく」は至る所が観光資源の宝庫。全国有数の水産、農業国としても知られ、2010年に東北新幹線の青森乗り入れが実現する。大勢の観光客を呼び込み、安心して快適なドライブを楽しんでもらうためにも高速道路のネットワーク化など道路整備は大きな課題だ。そこで国土交通省青森河川国道事務所の富岡誠司所長に道路整備の現況などを聞いた。
――本年度の事業概要からお伺いしたい
富岡
17年度の当初事業費は総額216億9,100万円です。事業別では全体の88.86%に相当する192億7,500万円が道路整備、残りの24億1,400万円が河川整備、また岩木川の災害復旧に200万円という内訳になっています。
――昨年に比べて事業費が伸びているのは、重点事項が増えたのでしょうか
富岡
重点事項が増えたこともありますが、平成16年の21号台風による被害は、大災害ではなかったとはいえ、県内ではそれなりの被害はあったので、その対応も含めて増えたと思います。 道路についても、まだまだ未整備区間が多く、特に高規格道路の整備が遅れています。予算の伸び率は決して高いとはいえませんが、一定の予算は確保できたと考えています。
――河川の整備状況はいかがですか
富岡
河川整備も遅れています。例えば、岩木川でも堤防の整備率は、50%に届かないのが現状です。馬渕川も同様で、堤防のない無堤地区がかなりあります。平成16年の台風で被害を受けたのも、そうした無堤地区に集中しています。 岩木川については、私たちの事務所の所管ではありませんが、上流の津軽ダムを整備中で、本年度も37億円の予算が配分されています。治水効果が大きいので、当面は津軽ダムの整備促進が重点的な課題であると考えています。 雪国ならではの事業として、16年度から板柳町で消流雪用水導入事業に取り組んでいます。板柳町は津軽平野の中央に位置し、県内でも屈指の豪雪地帯です。最大で1mぐらいの雪が積もります。しかも中心街は人口密度が高く、排雪場所の確保が困難で、町民生活に大きな支障をきたしています。さらに、町内を流れる中小河川はほとんど水量がないため、岩木川から取水し、市街地の中小河川に通水する仕組みで、ポンプ施設や導水路整備を推進しています。これは、地元との連携事業のひとつで、私たちの河川事業として着手しました。 過去には弘前市と五所川原市でも同じ事業を実施していますが、住民の評判は良好でした。流雪溝に雪を投げ入れるだけで、ダンプに雪を乗せて運ばなくても済むので、完成が待たれているところです。
――今年3月に、弘前地区に河川防災ステーションが完成していますが、どのような機能を持っていますか
富岡
洪水時の危機管理施策として水防活動を支援したり、災害時の緊急復旧等を迅速に行うのが設置目的です。堤内地に土を盛り上げて造りますが、緊急時に使うコンクリートブロックなどの水防資材を備蓄しています。 また、ヘリポートや情報収集システムの機能を備えており、川沿いに設置しているテレビカメラの映像と雨の量や川の水位などの情報を集約できます。この7月24日に完成記念イベントを行ったところです。弘前市と協力して整備した施設で、水防団員の詰所としての機能も併せ持っています。水防資材の備蓄やヘリポートを備えたステーションは五所川原にもありますが、情報収集ができるステーションは青森県内では初めての施設です。
▲八戸南環状道路
――先に高規格幹線道路の整備が遅れているとのことでしたがどんな現況でしょうか
富岡
進捗状況のデータをご覧いただければ分かりますが、高規格幹線道路の共用率は全国、東北とも平均62%に対して、青森県は56%にとどまっています。この6ポイントの差は大きい数字です。 特に青森県は県域面積が広いうえ、核になる都市が広い範囲に点在しており、都市間を結ぶためにも高規格幹線道路の必要性は高いのですが、整備が遅れています。笑い話ですが、八戸から弘前へ行くのに岩手県と秋田県を経由するというケースがけっこう見られます。
――青森と八戸間に自動車専用道路がないのですね
富岡
途中で切れているのです。青森市は人口約30万人、八戸市は約25万人で、青森県の一番目と二番目の都市でありながら、高速道でつながっていないわけです。青森、八戸市間には三沢市や十和田市、さらに下北半島にはむつ市など、それぞれの地域の中心都市がありますが、これらの都市間が高速道路のネットワークで結ばれていないのは残念です。
▲浪岡五所川原道路
――現在の整備状況は
富岡
平成19年度の全線供用を目指しているのが、浪岡五所川原道路です。これは津軽自動車道の一部として東北縦貫自動車道弘前線浪岡icを起点に、五所川原東icを経由し、仮称・五所川原icに至る延長15.7kmの自動車専用道路です。14年度に浪岡ic〜五所川原東ic間8.1kmが暫定二車線で供用開始しており、その先五所川原icまでの7.6kmの開通を目指しています。 平成11年度に工事が始まった八戸南環状道路は、八戸−久慈自動車道の一部で、東北縦貫自動車道八戸線と接続する八戸jctを起点に、国道45号に接続する八戸南icに至る延長8.6kmの自動車専用道路です。今年3月に一部区間を供用し、本年度は八戸jct〜八戸是川ic間について用地買収に取り組んでいます。八戸南icから階上icに至る八戸南道路も15年度から工事に着手しています。久慈は岩手県ですが、生活圏は盛岡より八戸に近いこともあり、岩手県側からも早期の整備が期待されています。 また、17年度の新規事業として国道45号「上北道路」の事業に着手しました。これは国道45号のバイパス機能を有し、先程の八戸と青森間の課題に対応するために計画された、全長26kmの道路の一部で、7.7km区間の整備を推進します。青森県の悲願がいよいよ実現に向けて動き出しました。現在、車で青森から八戸までの所要時間は2時間ほどかかりますが、この26kmの整備により大幅に短縮されますから、経済的な波及効果も大きいと考えています。
――道路は物量においては重要な産業インフラですね
富岡
これは宣伝になりますが、青森県は全国でも有数な農業県なのです。例えば八戸の周辺はたまごの一大産地で、東京の卸売市場が扱うたまごの4割が八戸産で占めているとのことです。 海産物もイカ、ホタテ、ヒラメは全国ナンバー1のシェアを誇っていますから、新鮮な食べ物を首都圏にいち早く運ぶためにも道路整備の果たす役割は大きい。
―― 一方、救急患者の搬送にも高速道路の果たす役割は大きいですね
富岡
第三次救急医療施設は青森と八戸にしかありません。例えば、五所川原から高速道路で県立中央病院へ搬送する場合、国道へのアクセスを円滑にするため、昨年10月に県とjhと3者で協同して青森市内の高速道路に救急車専用の緊急退出路を整備しましたが、実際に2日に1回の頻度で使われています。 一般車を規制するため、救急車内からリモコン操作で退出路のゲートが開閉するようにしています。高速道路は信号等でいちいち停止する必要もなく、何よりも揺れが少ないのが救急医療ににおいても理想的です。
浪岡五所川原道路の整備に貢献
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