建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年5月号〉

interview

観光地に適した資源が魅力のまち

高山植物等の貴重な財産を守りながらまちを振興

礼文町長 中島 忠明 氏

中島 忠明 なかじま・ただあき
昭和 9年 1月 5日生まれ
昭和 27年 3月 道立小樽緑陵高校卒業
昭和 41年 4月 礼文町役場に奉職
昭和 62年 6月 礼文町総務課長
平成 元年 8月 礼文町助役に選任
平成 5年 6月 礼文町長に就任 現在2期目
礼文町は日本最北端の島として知られ、風光明媚な花、水産の宝庫として現在まで、開拓され観光地として賑わってきた。これからも先人が築いた精神と財産を教訓に人と自然を生かし、活力に満ちた魅力あるまちづくりを進める礼文町のあり方を中島忠明町長に伺った。
――まもなく町長として8年間を終えますね
中島
最初の4年間は、前町長から引き継いだ政策がありましたので、それを行ってきました。私なりの政策が行えるようになったのは、2期目の4年間ですね。私なりに町民の話、要望などを聞きながら、できる限り期待に応えられるように政策を行ってきました。
ただ、現在はどこの町村も過疎状態にあり、礼文も同じ事が言えますが、私たちのまちは高齢者が元気なおかげで行政を行う上では助かっています。しかし、公約などの全てが実施できたわけではなく、財政もそうですが、私たちの住んでいる地域が離島なので、移出入のコスト面などの対策がもう少しできれば良かったと考えています。
――礼文町の観光は高山植物が有名ですね
中島
現在不況で観光を控える人が多い中で、高山植物の効果なのか、礼文はほぼ前年度並みに観光客数が推移していますが、礼文の主幹産業の一つとして観光が重要なウエイトを占めていますので、これからも観光客を増加させるために対策が必要だと考えています。
例えば高山植物を見に来る観光客が大変多いので、その観賞できる期間を保温施設によって開花時期をずらすなどして、もう少し観光期間を持続させる対策を行うことや、宿泊施設の数を増やし整備する、もっと島・海の味覚などを提供できる場を整備するなどしていかなければなりません。
――もう一つの主幹産業は漁業ですね
中島
昔から礼文は沿岸漁業でウニ・アワビ・昆布などが獲れましたが、昭和59年から60年にかけて流氷が来て水温が下がってしまい、アワビが全滅してしまいました。現在はウニと昆布が主流ですが、アワビは種アワビから購入して育成させ、現在では徐々に増えつつあります。観光客にとって高山植物の他の目的といえば海の幸が挙げられますので、早く以前のように漁業が活発になるようにしたいですね。またこの2つの主幹産業をミックスさせて、観光で来た人々が実際に漁業を体験できるような体験型観光の環境も整えたいです。
――隣島の利尻町2町との連携はどのように行っていますか
中島
昔から利尻・礼文は夫婦島ということであらゆる面で協力してきました。3町の主幹産業である漁業や観光ではお互いに話し合い、また稚内も観光や漁業で色々と協力する機会が多いので、利尻・礼文島に密接な稚内を含めた協力態勢を整えています。
しかし、利尻と礼文は近いようで、なかなか交通が不便なものですから、利尻島は2町で協力が考えられますが、礼文は1島1町で孤立しやすく、そのあたりが厳しい状態であることは確かです。
――その礼文島1町としての地理的不利とは
中島
やはり他のまちと陸続きではなく1島1町ですから、例えばゴミの施設やそのほかの施設にしても礼文町単独で整備しなければなりません。その点で国や道に助成や協力を求めてはいますが、資材を移入するにしても輸送コストが多めに掛かりますので、そこが他の町村と比較して不利ですね。
有利な点は、やはり離島として観光に魅力ある資源がたくさんあるという点ですね。まだまだ自然が豊かなことで大変、観光産業を活発させるのはやりやすい点があると言えますね。
――最後に次期に向けての抱負を
中島
これまでと同じく引き続き主幹産業の漁業と観光を整備する事ですね。特に漁業は漁場を整備することや、まちから出る下水で海を汚さないために下水浄化センターも建設中です。観光でも充実した観光整備を行い、体験観光などの観光客にとって魅力あるまちづくりを行いたいです。
それと一番の問題点は、礼文の漁民・町民の高齢化にありますので、その対策としてお年寄りに優しい施設づくりを行っていく考えです。
それには、漁場でも機械による作業を増やし少しでも負担を軽くして、また保健・福祉対策として「医療・保健・福祉のバリアフリー」を目指して船泊診療所の改築をして、高齢者在宅複合施設及び保健センターの建設を計画して高齢者福祉を一本化して安全、安心の施設づくりを行っていくことが必要です。
これからも行政に対する町民皆さんの期待に応えるため、行政全般にわたる点検を行い、財政の健全化を一層進めていくとともに、できる限り国・道の良質な制度資金の導入を図りながら自主的なまちづくりを行っていきたいです。

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