建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年12月号〉

interview

平成16年9月の台風により被災した
大森大橋本復旧事業としてトンネル工事を推進

新大森トンネル・大森トンネルの建設が進む

北海道開発局 小樽開発建設部 岩内道路事務所 山崎 睦雄 氏

昨年9月8日に北海道を通過した台風18号は、最大風速51mを観測するなど、北海道のほぼ全域を暴風域に巻き込みながら日本海沿岸を北上し、各地に大きな爪痕を残した。後志管内神恵内村の一般国道229号では、大森大橋の橋桁が流され、積丹町字沼前〜神恵内村大森間の延長15.4kmが全面通行止めとなった。この被災を受け、北海道開発局小樽開発建設部は24時間体制での仮橋応急復旧工事を実施。現在は大森トンネル、新大森トンネルなどの本復旧工事を進めているところだ。事業の概要について、岩内道路事務所の山ア睦雄所長に伺った。
――大森大橋の被災状況からお聞かせください
山崎
大森大橋のある国道229号は、小樽市を起点に積丹半島の日本海沿いを通る総延長287.3kmのルートで、水産物資源の輸送のほか、観光ルートとして地域経済を支える路線です。 落橋した大森大橋は、コンクリート製の橋桁が約159mにわたってくの字に折れ曲がる形で岸側に落下しました。人的被害はなかったのですが、この落橋によって、神恵内村珊内〜大森間の5.2kmが通行止めとなり、地域のライフラインに甚大な影響が出ました。
――地元の方々の生活にはどのような影響が出たのでしょうか
山崎
村の市街地と珊内・川白地区の交通手段が寸断されたために、住民は通勤・通学に積丹半島を大きく迂回しなければならなくなってしまったのです。 また、神恵内村役場でうかがった話では、被災後は地元の小中学生が家族と青少年村コテージで仮住まいをして通学したり、神恵内地区の親戚宅から通学をしたり、積丹町の余別小学校に仮編入をしたようです。 医療面でも村の診療所からの珊内・川白への巡回診療が通常週二回だったのが、週一回に減り、ゴミの収集も週三回の収集が分断後週一回となり、郵便では午前中で配達が終了していたものが、分断後は午後までかかる状況で、速達にも対応できない状態が続いたとのことです。
▲大森トンネル
――応急復旧の概要は
山崎
大森大橋の落橋後、すぐに復旧検討委員会が行われました。大学教授なども参加してもらい小樽開発建設部で発足したのです。その中で、大森大橋が落橋してしまった要因については、3つの要因が重なったとの結果が出ました。ひとつは台風によって気圧が低下したことに加え、強風によって大森大橋付近の水位が異常に上昇したこと。二つ目はリーフ状地形であることに加えて、背後にすぐ崖が迫っているために、波が崖で反射し、水位がさらに上昇したということ。三つ目は水位が上昇することでリーフ状の波高が増大し、崖から反する波と重複して水塊が橋桁に作用したのです。 簡単に言えば、波によって橋が持ち上げられてしまったのですね。 委員会では仮橋の応急復旧を行う案と、山側を迂曲している旧道利用案が検討されました。旧道案については、不安定岩帯であることや、20年以上使っていない狭隘なトンネルがあること、急勾配であることなどから、廃案となり、仮橋案が採択されました。 応急復旧は被災直後から休日返上の24時間体制で工事を進めた結果、仮橋が復旧し、片側交互通行による供用を開始したのが12月10日です。そして16日には2車線が供用となりました。 また、平成13年度から工事を進めてきたウエンチクナイトンネルについても、仮橋の開通に併せて通行を開始しました。 これにより、生活道路と積丹半島観光ルートが確保されたほか、泊原発緊急避難路が確保されました。
―――本格的な復旧の見通しは
山崎
応急復旧と並行し、恒久対策について検討されました。そこで現橋復旧案、海上橋梁案とトンネル案が検討されたのですが、工期、経済性からトンネル案が採用されました。既設のウエンチクナイトンネルに新トンネルを接続して山側を迂回する延長2,509mの新大森トンネルを建設する計画です。
――トンネルの計画概要は
山崎
新設のトンネルは、延長685mの大森トンネル工事、延長641mの新大森トンネル工事の2件で、16年3月から工事に着手しており、神恵内村側と積丹町側の両方から掘り進める格好になります。 現在は2交代制で工事を進め、10月6日現在で600m程度掘削が進んでいるところで、貫通は18年3月を予定しています。
――供用開始の見込みは
山崎
改良工事や道路の嵩上げ工事で、トンネルから現道の路面を片側ずつ盛り上げる作業があるため、トンネルそのものは19年の早い時期にはある程度かたちができてくるとは思いますが、供用開始はその年の夏頃を予定しています。
――その他の施設の復旧は
山崎
トンネル掘削工事のほか、「道の駅・オスコイ神恵内」の周辺部のルートを山側にシフトし、道路の高さを3〜4m嵩上げする工事を進めています。 また、この先の大森地区では消波ブロックの越波対策や赤石改良を進めるほか、法面対策も行います。 道の駅については、現在は休止中であり、駐車場スペースはトンネルの作業ヤードとして利用し、建物の2階は休憩所として利用しています。村の方では、営業開始の目途は立っていないようですが、今後は嵩上げされる道路からのアクセス方法などを検討する予定です。
▲新大森トンネル施工状況
新大森トンネル(仮称)概要
路線名:
工事箇所:
構 造:
交通方式:
設計速度:
幅員構成:
内空断面積:
延 長:
トンネル等級:
舗 装:
一般国道229号
古宇郡神恵内村大字珊内村字キナウシ
第3種第3級(幹線−D地域)
2車線 対面通行
60km/h
0.75-0.50-3.00-3.00-0.50-0.75=8.50m
49.2u(CI)
既設延長=1,027m、新設延長=1,482m、総延長2,509m
B等級
コンクリート舗装 t=20cm
一般国道229号 神恵内村 大森トンネル工事
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