建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年8月号〉

interview

南北交流に新時代

三遠道路の起工に高まる地元の期待

国土交通省中部地方整備局 浜松河川国道事務所長 三橋勝彦 氏

三橋勝彦 みつはし・かつひこ
昭和34年6月16日生 千葉県出身
昭和 58年 東京工業大学工学部土木工学科卒
58. 4. 1 建設省中部地方建設局道路部道路計画第一課採用
60. 4. 1 奈良県土木部計画課
62. 4. 1 本省建設経済局宅地開発課係長
平成 元年 4. 1 道路局企画課係長
2. 4. 1 東北地方建設局青森工事調査第二課長
4. 7. 1 東北地方建設局道路部道路計画第一課長
5. 4. 1 本省建設経済局調整課長補佐(併大臣官房政策課)
6. 10. 16 建設大学校建設政策研究センター研究調整官
9. 11. 1 土木研究所道路部道路研究室主任研究員
10. 4. 1 土木研究所道路部交通安全研究室長
12. 4. 13 近畿地方整備局浪速国道事務所長
14. 4. 1 都市基盤整備公団都市施設交通部都市施設第二課長
16. 7. 2 中部地方整備局浜松河川国道事務所長
国土交通省中部地方整備局の浜松河川国道事務所は、静岡県と愛知県にまたがるインフラ整備を担っている。17年度事業費295億円のうち9割弱の260億円が道路整備を占め、その目玉事業となる自動車専用道路の三遠道路にもいよいよ本格着工した。静岡県と長野県飯田市とを結ぶ三遠道路は、かつての「塩の道」、「秋葉街道」を現代によみがえらせ、南北交流に新たな時代の扉を開くものとして、地元の期待が高まっている。東西の大動脈である国道1号線では、天竜川渡河部で渋滞解消のため8車線化の橋梁工事が急ピッチで進み、掛川、湖西両市には「道の駅」が初めて整備された。三橋勝彦所長は「安全・快適な道路交通サービスを提供するとともに、沿道環境の改善、安全・安心を与える河川整備に努めたい」と抱負を語った。
――浜松河川国道事務所が所管する事業概要からお聞きしたい
三橋
私たちは主に静岡県西部地域の直轄道路、直轄河川の管理、整備を行っています。大井川の西側がエリアになります。道路で言えば国道1号線。藤枝市の一部から愛知県との境までの整備を担当しています。もう一つは高規格幹線道路である三遠南信自動車道、国道474号の整備が本格的に動き出したところです。静岡県三ケ日町から愛知県を通って長野県飯田市まで、総延長100kmの自動車専用道路です。私たちはそのうち、長野県より南側を受け持ちます。ただし、引佐町―三ケ日町間は日本道路公団が整備します。
いまのところ事業化が決定しているのは、引佐町から県境を越えて鳳来、東栄まで延び、ふたたび静岡県に戻って佐久間までの区間です。引佐から鳳来までが三遠道路、東栄と佐久間の間が佐久間道路。佐久間道路については、15年度から用地買収に着手。三遠道路の鳳来以南は用地買収が完了し、工事が本格化しています。6月11日には、引佐町で盛大に三遠道路の起工式が行われました。
河川は、天竜川と菊川の2本の河川を管理しています。天竜川は、諏訪湖から長野県、愛知県、静岡県を流れて遠州灘に注ぐ流路延長213km、流域面積5,090km2の河川で、長野県を除いた水域が私たちの担当エリアになります。
下流は浜松市と磐田市の境を通り、佐久間ダムからは右岸が愛知県、左岸が静岡県を流れています。河口から上流約70kmの本川に、昭和31年に完成した発電用の電源開発株式会社の佐久間ダムは、この40数年間に1億m3もの土砂が堆積しました。そこで、治水容量の確保と排砂恒久施設整備のため、16年度から天竜川ダム再編事業に取り組んでいます。
菊川は国内でも最小クラスの一級河川です。流域は小さいですが、牧之原台地に降った雨が一気に平地を大きく蛇行して流れ出るため、これまでも頻繁に水害が発生してきました。流域には茶畑が広がっていますが、実はお茶の木は保水能力があまりないのです。しかも、近年の周辺の宅地化とともに流出が早くなっています。そのため、菊川では支川の下小笠川に捷水路を建設しており、17年度中に通水します。
――東海地方は全国的にもインフラ整備が進んでいると思いますが
三橋
戦後、国策として大阪、名古屋と東京を結ぶために、日本有数のインフラが整備されてきました。例えば、東名高速道路しかり、新幹線しかり。このほか国道1号、東海道本線もあり、さらに第二東名の建設も進んでいます。いずれも東西の「ヨコの流れ」です。しかし、南北に目を転じると、国道152号線の県境付近は、いまだに不通区間です。長野県へ行くには途中から林道に入らなければなりませんが、マイクロバスが通るのがやっとです。当然貨物トラックは無理で、しかも冬季間は路面が凍結します。かつて「ヨコの流れ」の代表が東海道であり、「タテの流れ」としては「塩の道」、「秋葉街道」や天竜川を活用した鉱石、木材輸送の例が挙げられるように南北の交流がありましたが、「タテの流れ」を支える国道152号はモータリゼーションの今日でも青崩峠で途絶えたままです。その意味では三遠南信道路は、遠州と三河と信州を結ぶ、地域にとって重要な道路になるので最も力を入れている事業です。
――東西の横軸はほぼ整備が終わったと言えるのでしょうか
三橋
「ヨコの流れ」を支援するため、静岡県内一の渋滞箇所である天竜川の国道1号橋梁で新天拡幅事業を推進し、全体の8車線化に向けて新しい橋を整備していきます。また、国道1号の利用者に道路情報・休憩場所を提供し、快適に利用していただくため、掛川市、湖西市で「道の駅」整備を進め、今春、掛川の上り車線側にオープンしました。オープン以来、満員の盛況で、整備効果はあったと思っています。17年度末には下り車線側にも完成の予定です。湖西市の潮見についても、本年度末に上り線パーキングが整備されます。
――国道1号バイパスの無料化に取り組まれましたね
三橋
浜名、磐田、掛川、藤枝バイパスが今年3月30日から無料開放しました。東海4バイパスの無料開放により、現道の交通がバイパスに転換し、交通混雑や沿道環境が大きく改善されました。特に裏道というのか、生活道路の交通量が大幅に緩和され、地元から感謝されています。
――平成17年度事業費の内訳は
三橋
当事務所は職員数107人体制で、17年度の事業費は約295億円。このうち河川・ダム関係が36億円、残りは道路整備です。事業の一部は愛知県内でも行われています。山岳道路を抱えているせいもあって、現在、4ヶ所でトンネル工事を施工しています。静岡・愛知県境に跨る三遠トンネルは全長4.52km、中部管内の直轄国道では最長、全国的には4番目の長さです。引佐側と鳳来側との2区間に分けて工事を行っています。そのほか、静岡県側では久井田トンネル(1,580m)、別所トンネル(940m)、愛知県側では大島トンネル(160m)もあります。
磐田市―浜松市間を4車線から8車線に広げる新天拡幅工事も、当事務所の目玉事業です。国道1号の天竜川渡河部は名古屋方面への下り、東京方面の上りとも交通量が多く、最大で約4kmにもなる渋滞は県下ワースト1。19年度に上流側の上り線の8車線化が完成の予定です。
管理業務では、震災対策を19年度までに終了させるつもりで取り組んでいます。これは、発生が予想される東海地震に対応するため、橋梁の橋脚補強対策として既設のコンクリート橋脚の外側にコンクリートや鋼板を巻立てることによる補強方式で、対策の必要な橋脚269箇所のうち、16年度末までに228箇所(85%)が終了しています。

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