建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年8月号〉

interview

市町村合併断念により厳しい行革に着手

駅東部開発事業と市立病院建て替えに全力

北海道砂川市長 菊谷 勝利 氏

菊谷 勝利 きくや・かつとし
昭和 14年 6月 26日 増毛町にて出生
昭和 33年 3月 北海道立留萌高等学校卒業
昭和 36年 2月 砂川市役所奉職
昭和 46年 1月 自治労砂川市職員労働組合特別執行委員
昭和 46年 5月 〜 平成 11年 2月 砂川市議会議員(7期)
平成 3年 5月 〜 平成 7年 4月 砂川市議会副議長
平成 7年 5月 〜 平成 11年 2月 砂川市議会議長
平成 11年 4月 〜 現在  砂川市長(2期)
『賞罰』
昭和55年 砂川市自治功労章受賞
平成10年 藍綬褒章受章
中空知の中核都市・砂川市は、合併構想が流れ、単独で財政再建に向けた行政改革と、中心市街地の活性化に向けた取り組みを進めている。「いつまでも単独で存続するのは困難。いずれは合併が必要」と主張する菊谷勝利市長に、政策と展望などを伺った。
――現職に就任して、最初に着手した施策は
菊谷
私が市長に就任した当時は、すでに210億円ほどの債務があったので、まず財政の建て直しに着手しました。ただし、そのためには市民への情報発信を十分にする必要があるので、広報広聴課を組織し、砂川の財政状況を含めて、様々な市政の現況を市民に情報提供をすることにしました。「協働のまちづくり」が市政の理念にあるので、各種行政委員会のメンバーも一般市民から公募し、一緒に行政改革を進めています。
昨年の1月1日に中空知地域としての合併協議会が発足し、7月30日まで協議してきましたが、病院・消防本部庁舎の配置、議員定数、農業委員会などで折り合わず、9月30日をもって解散することになりました。そのため、私は合併に至らなかった経過と、今後自立していく上では行政も市民も血を流すほどの覚悟が必要となることを市民に説明しました。そして、3月に行革予算を議会に提案し、可決してもらったのです。
しかし、市民に対して急に大きな負担をお願いするわけにもいかないので、まずは17年度から4年間ないし5年間の行財政改革をすべく理解を得ましたが、20年には再度改革が必要になってくるのではないかと考えます。ただ、いずれは合併し、お互いに助け合いながら新たなまちの基盤整備をしていかなければならないと考えています。
――まちづくりには、どのように取り組んできましたか
菊谷
砂川市は製造業、商業で成長してきたまちです。東洋高圧、あるいは三井木材といった、製造を中心としたまちづくりが進められてきました。
かつて、中心市街地には1万2,000人が住んでいましたが、いまでは6,000人と半分に減少し、ドーナツ化現象を起こしています。これをどう解消していくかが、まちづくりの最大の課題です。
砂川の行政面積は、約80m2ですが、南北に細長く市街地が形成されており、これに膨らみを持たせたくても、西は石狩川があり、東には、国道や線路、高速道路があります。そうした制約を克服しながら、いかに東西に拡張するか。ちょうどまちの中心街から余り離れない駅東側に、廃線となったjr歌志内線、上砂川支線の土地があるので、この土地を基盤に駅東部開発事業を進めています。
――その開発事業計画の概要は
菊谷
まず賑わいをどう持たせるかを想定しつつ、老朽化した市民会館に代わるものとして、中心市街地の核となる地域交流センターなどの主要施設の建設を進めています。本年度中には全容が見える状況になります。500人を収容できる大ホールもあり、子どもから高齢者まで利用できる多目的な施設にしたいと考えています。計画にあたっては市民で構成する運営委員会を組織して、どうすれば市民に利用してもらえるかを検討し、オープン後もその委員会が管理運営に当たる予定です。
そのほか、市内1,600戸の公営住宅を統廃合していく必要があるのですが、それらを駅東部地区に移転する計画で、現在52戸分を建設しています。これによって、まちなか居住推進の足掛かりにしたいと考えています。また、保育所は5箇所ありますが、少子高齢化が進む情勢から、これも統合を進めています。2ヵ年の継続事業として建設してきた新保育園と南地区コミュニティセンターの複合施設は9月上旬のオープンを予定しています。
――保健医療福祉の施策については
菊谷
現在、平成22年度までの10ヶ年計画となる第5期総合計画を進めていますが、その当時に市民に一番望むものは何かをアンケート調査をした結果、「福祉と医療の充実したまち」にしてほしいとする回答が最も多く、40%以上になりました。
この中空知地域には5市5町が存在しますが、砂川市立病院は地域の各種拠点病院となっています。ただ、昭和43年の建築なので、老朽化が進んでおり、阪神大震災が発生した後に耐震診断を行ったところ、同規模の地震が起きると壊滅状態になるという診断でした。それを防ぐには10億円から20億円近くかけて、鉄骨かコンクリートを入れることで、補強できるとのことでした。しかし耐震補強工事を実施してしまうと今以上に狭くなり、病院機能が失われるのです。そう考えると、やはり建て替えなければならないのです。
しかも災害拠点病院に指定されているので、災害時の拠点に耐えうる施設にして、今日的な医療の充実したまちづくりを実現すべく、計画しています。
――公立病院の経営は、多くが課題を抱えていますが、今後の見通しは
菊谷
総務省では、百何十億円もの借り入れをし、建設して病院経営が成り立つのかと疑問視していますが、年間で1億4、5千万の黒字を計上してきた実績もあり、道内の市立病院でも優秀な方であることをアピールしています。ですから、病院は何としても建て替えたいと思っています。

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