建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年7月号〉

interview

水産物の販路拡大と木材資源の有効活用に向けて新たな取り組みに着手

19年度全国植樹祭の開催地に決定

北海道水産林務部長 達本文人 氏

達本 文人 たつもと・ふみと
採用 昭和48年5月1日
平成 8年 4月 1日 渡島支庁経済部長
平成 10年 4月 1日 総合企画部計画推進室参事
平成 11年 5月 25日 水産林務部漁港漁村課参事
平成 12年 4月 1日 水産林務部漁業管理課長
平成 13年 4月 1日 釧路水産試験場長
平成 14年 4月 1日 水産林務部技監
平成 15年 6月 1日 水産林務部水産局長
平成 17年 4月 1日 水産林務部長
北海道にとって、食と観光はその存在基盤とも言える貴重な産業で、農業とともにその一翼を担う水産・林産は、道政においても重要な政策部門だ。そのトップとして水産林務部長に就任した達本文人部長に、今年度の政策などを伺った。
――部長に就任しての抱負をお聞きしたい
達本
この4月に部長という重責を拝しましたが、身の引き締まる思いと、本道の水産業、林業・木材産業の振興のために全力を尽くさなければならないとの決意を新たにしたところです。
北海道は、我が国の漁業生産や森林面積の四分の一を占めており、水産物の供給基地として、また水産業、林業・木材産業は地域の基幹産業として発展してきました。それを踏まえて、職員にはこうした重要な職務に携わることを誇りに思い、「浜のため」、「山のため」に知恵を絞って仕事をすることが、我々の使命であると話しています。
――北海道は、一次産業の生産力の高さにおいて秀でていますが、水産、林業の近年の情勢はいかがですか
達本
本道の水産業、林業・木材産業は、就業者の減少や、水産物、木材価格の低迷、漁業・林業経営の悪化など、依然として厳しい状況にあります。その振興を図るには、「北海道水産業・漁村振興条例」や「北海道森林づくり条例」に基づく各種の施策を着実に進めていく必要がありますが、道の財政状況も非常に厳しい状況にある中で、執行すべき施策の「選択と集中」が一層に求められます。
知事は「食と観光」を、道政執行の柱と位置づけており、道産の水産物は重要な食料としてだけではなく、本道観光の魅力を高める上でも欠かせないものと考えています。
このため、安全で安心な道産水産物を提供していくための取り組みと資源づくりを進め、浜の皆さんが安心して仕事をしていけるような施策を進めていきたいと考えています。
また、今年2月に発効した京都議定書により、日本には6%の温室効果ガスの削減が課せられています。そのため、道としても、地球温暖化防止に向けた森林づくりに向けて、道民、森林所有者、事業者の方々の理解と協力のもとに、関連する施策を実施していく方針です。
特に、平成19年に開催する全国植樹祭の成功に向けて、全力をあげて取り組んでいきたいと考えています。
▲栽培水産試験場完成イメージ

▲えりも以西海域栽培漁業拠点センター
完成イメージ
――その基本方針に基づき、17年度はどんな政策を執行しますか
達本
水産関係については、特に水産物の販路拡大や資源づくりなどを積極的に展開するため、海外への道産水産物の販路拡大、鮮度保持対策の促進による競争力の強化や、海域の特性に応じた栽培漁業、離島漁業の再生などを推進することとしています。
そこで、まず道産水産物の販路拡大や北海道ブランドの創出については、本道の主要な魚種であるホタテやサケが、輸出水産物のトップブランドを築きつつありますが、特に中国向けの輸出量の増加がめざましく、平成11年と比較して、サケ・マスは数量で26倍、金額で22倍、ホタテは、数量で9倍、金額で32倍に上っており、今後とも有望な市場として期待されることから、「道産水産物輸出ステップアップ事業」により、道漁連が海外で行う展示、商談会の開催などに対して支援します。
――近年は食の安全への関心が高まっていますね
達本
そうです。道が行ったアンケートによると、約8割の人が「鮮度」を魚を購入する際の最大のポイントと回答するなど、消費者の鮮度志向が高いことが判明しました。そこで、生鮮水産物の鮮度保持対策を進め、道と水産試験場が浜の協力を得ながら、漁法や荷揚げ方法、魚の〆(しめ)方などの鮮度保持に有効な方法をまとめた「鮮度保持マニュアル」の作成や、新たな刺身商材の開発に向けた技術開発などを行い、安全・安心で高品質な水産物の提供を目指します。
――水産資源が悪化している情勢から、資源の回復も課題ですね
達本
水産資源が悪化し漁業生産が低迷する中で、資源を積極的に増大していくためには栽培漁業の推進が不可欠です。近年では、沿岸漁業生産に占める栽培対象魚種の割合は、年々高まり、量で7割、金額で6割を占めるまでに増大しています。
このため、道は、室蘭市に栽培水産試験場の整備を進めており、平成18年度には供用開始となる予定です。栽培水試では、漁業者からのニーズの高い、マガレイ、キツネメバルなど、新たな魚種の栽培漁業の技術開発などを進めることにしています。
また、マツカワ大量種苗生産施設として、伊達市とえりも町に、えりも以西海域の栽培漁業拠点センターの整備を進め、18年から100万尾の放流体制の確立を目指します。なお、昨年の大漁に浜が湧き、期待も大きい日本海ニシンの資源増大対策についても、引き続き取り組んでいきます。
――後継者対策については、どのような施策を考えていますか
達本
漁業が基幹産業でありながら、輸送や生産資材の取得など、販売・生産面において不利な条件にある離島地域においては、消費者の鮮度志向が強まる情勢から、さらに販売面での不利が拡大し、漁業者の減少、高齢化が進んでいます。
このため、国は新規事業として「離島漁業再生支援交付金」を創設しました。道としても国や市町村と連携し、離島の漁業集落が集落協定に基づいて共同で行う種苗放流、藻場干潟の管理など、漁場の生産力の向上に関する取り組みや流通体制の改善、簡易加工など、集落の創意工夫を生かした新たな取り組みなどに対して支援を行い、離島漁業の振興を図ることにしています。
――最近は放置された森林が増えて荒れていると聞きますが、森林づくりについてはどのように取り組みますか
達本
林務関係の主な施策については、地球温暖化防止に向けた森林づくりと木材の有効利用に積極的に取り組むとともに、次世代を担う子どもたちが森林・木材にふれ親しむ環境づくり、さらには平成19年に開催する全国植樹祭に向けた準備などに、重点的に取り組むこととしています。
先にも触れましたが、地球温暖化防止に貢献する森林づくりを進めるためには、川上サイドの「森林の整備」と川下の「木材の有効活用」を一体的に進めることが重要であると考えています。そこで平成17年度からは、資源が充実しつつあるトドマツなどの人工林を対象として、森林の整備に必要不可欠な間伐をこれまで以上に進めるため、木材の搬出を伴う間伐を支援する「北の森づくり機能強化対策事業費補助金」を新たにスタートさせるとともに、搬出された間伐材などの木質資源をペレットなどに加工し、新たなエネルギー源としての利用を促進する「木質バイオマス資源活用促進事業」を、前年度より大幅に拡充して実施します。
特に、木質バイオマスの利用促進については、札幌市と合同で利用促進に向けた情報交換、利用方法の検討などを進めているところであり、札幌市などの人口集中地域での利用促進についても、併せて検討を進めていく考えです。
――森林は教育環境としても活用できますね
達本
そうです。昨年の子ども未来づくり条例の制定、モデル校での森林環境学習などの取り組みなどを踏まえ、平成17年度から新たに「子ども未来の森林づくり推進事業」を実施します。具体的には、乳幼児期から親子が森林、木材・木製品とふれあう機会を提供するとともに、子どもたちが森林を活用した体験活動を行う「げんきの森」を全道に設定し、森林づくりの大切さについての理解の醸成を図ることとしています。
――全国植樹祭は、皇室のご参加の実績もある由緒あるイベントなので、その開催地としての準備は、重責ですね
達本
昨年、平成19年の第58回全国植樹祭が苫小牧東部地域を会場として開催することが正式に決定しました。道としては、全国植樹祭を「道民との協働による森林づくり」の中心的行事として位置づけており、今年度は基本計画の策定や会場づくり、ボランティアによるキャンペーン活動など、全国植樹祭の成功に向けて着実に取り組んでいく考えです。

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