建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年3月号〉

interview

着実な進歩を遂げる海洋施工技術

不慮の事故の完全防止が課題

社団法人日本埋立浚渫協会 北海道支部長 橋爪 俊明 氏
(東亜建設工業株式会社北海道支店長)

橋爪 俊明 はしづめ・としあき
昭和 46年 3月 北海道大学工学部土木工学科 卒業
昭和 46年 4月 東亜港湾工業株式会社 入社
(昭和48年12月に東亜建設工業株式会社と改称)
昭和 53年 5月 土木本部 設計部設計2課
昭和 55年 2月 海外事業部 サウジアラビアアルジュベール作業所副所長
昭和 60年 4月 中国支店 工事部 工事2課長
平成 2年 4月 北海道支店 工事部 工事1課長
平成 6年 4月 北海道支店 工事部長
平成 12年 4月 北海道支店 支店次長
平成 14年 4月 北海道支店 副支店長
平成 16年 4月 北海道支店 支店長
平成 16年 4月 社団法人日木埋立浚渫協会 北海道支部長
北海道の港湾は本州と異なり、積雪寒冷地と言うハンディを背負った地域であるが、日本埋立浚渫協会北海道支部では、施工技術の開発、合理化、安全施工の推進等について積極的に取組み、北海道の港湾の整備発展に寄与すべく活動している。今後の支部の活動と課題について橋爪支部長に語って貰った。
▲安全衛生委員会による安全パトロール
事務書類聞き取り点検状況
▲安全衛生委員会による安全パトロール
埋立地ダンプ運搬盛土確認状況
――景況が回復しそうな雲行きもありながら、一方では公共投資の減少という逆風もありますが、海洋土木業界の近況は
橋爪
道内の景気が低迷している中、特に道内の市町村の財政は逼迫しており、港湾、漁港整備の予算も縮小されてきています。年々港湾予算が減っていく中で、この傾向は今後も続くものと思われます。
こうした状況ではありますが、当協会としてはこれまでに培ってきた海洋施工技術やノウ・ハウを活用して頂き、事業が効率的、効果的に推進されるよう関係各位へお願いしているところです。
――北海道支部の主要な活動は
橋爪
当支部は昭和47年に全国に6支部の―つとして発足しました。平成13年には運輸省と建設省が統合され、全国の地方整備局にあわせて、北海道支部という体制になったのです。会員は現在12社ですが、少数精鋭の体制となっており、私は昨年4月から支部長を務めています。当支部の活動は大きく分けて、技術委員会と安全衛生委員会の2委員会を中心に活動しています。
――技術委員会の活動の趣旨は
橋爪
一口に言えば、港湾の整備に関わる諸問題への対応であり、主として先に述べた会員の蓄積された施工技術、ノウ・ハウを活用しての港湾諸施設についての施工合理化に関する調査、研究、資料収集、作業船の能率向上に関する研究、その他当面する各会員の抱える諸問題の検討を行い、本部と連携して関係機関への提案、要望等を提示してハード及びソフト面でも対応するのが当委員会の役割です。
検討課題には、新入札制度や入契法といった法制度もあります。そうした課題に対する各社の意見を集約するわけです。
――今後とも、そうした業界側からの提案は重要となるのでは
橋爪
関係機関との意見交換を行う機会もあり、協会が抱える問題点の提起、提案を行うのは言うまでもなく、大事なことと考えています。技術開発に関しても、行政からの指導によるものもありますが、業界側が先取りして、いかに良いものを安く提供するかが重要になります。国土交通省はコスト縮減を大きなテーマにしているので、その実現に向けての技術開発が必要になると思います。
――予算の削減、コスト縮減など企業としては厳しい情勢にありますが、どのように対応していますか
橋爪
工事量が減少していく中で、いかに健全度を保っていくかが大きな課題となっています。やはり個々の工事での施工過程上の創意工夫で、いかに採算を高めるかがまずは大事だと考えています。
特に、海上施工は日本海で実施する場合と、太平洋で実施する場合、あるいはオホーツク海で実施する場合で、それぞれ固有の海象条件が異なります。太平洋ならば、冬場でも施工が可能ですが、日本海やオホーツク海は不可能です。そのため施工期間も制約されるなど、陸上施工とは条件も違うのです。そうしたハードルをクリアしていく上でも、培ってきた施工ノウ・ハウをもって克服していくことが大切です。
――安全衛生委員会の活動は
橋爪
安全衛生委員会の主な活動は安全パトロールです。本部・支部合同パトロールは年1回、支部パトロールは年2回、発注者との合同パトロールは年十数回実施しています。それぞれのパトロールの結果を公表し、「安全が最優先」という意識の徹底化を繰り返し行っています。また、事故の事例を分析し、情報を会員会社が共有し、海上施工における安全講話、研修会に生かしています。
――事故防止の上での課題は
橋爪
事故が発生すれば、個人はもとより家族が不幸に見まわれ、会社は社会的信用を失うことになるわけですから、工事に携わる所員、作業員が常日頃から緊張感を持続させ、事故は絶対に起こさないというプロ意識が一番大事だと思います。特に、港湾工事では海中施工が多く、潜水士による作業は直接その作業を視認できないケースが多い。このような状況下では一歩間違えば、死亡に至るケースが多く、本部では視認できるような機器の開発を進めていると聞いています。
――技術の進歩によって施工を無人化することは可能でしょうか
橋爪
省力化は可能であっても、海上工事では無人化までは非常に困難だと思います。
例えば、基礎捨石の均し作業では、道内では30〜40tの重錘機で落下させ、省力化を図っています。最近はそうした基礎マウンド均し機など、省力化する機械も充実しつつあり、各社で様々なシステムが開発されています。
社会資本整備と言っても、まだ全てが充足したわけではなく、安全な施工をにらんだ技術開発のニーズは今後も一層増えてくると思います。それに対応した研鑚を継続していくのが協会の使命でもあると思います。

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