建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年1月号〉

interview

国庫補助制度の基準改正を熱望

建設行政と建設業界との対等関係構築が必要

北海道建設部長 山上 徹郎 氏

山上 徹郎 やまがみ・てつろう
昭和 20年 6月25日生まれ
帯広柏葉高、北海道大学土木工学科卒
昭和 43年 入庁
昭和 56年 帯広土木現業所技術部道路建設課都市施設係長
昭和 58年 生活環境部環境影響審査課 主査
昭和 60年 住宅都市部街路公園課 街路公園係長
昭和 62年 住宅都市部街路公園課街路計画係長
平成 元年 帯広土木現業所技術部道路建設課長
平成 3年 土木部道路課高速道室 主幹 兼 市町村道室 主幹
平成 5年 網走土木現業所技術部企画調整室長
平成 6年 札幌土木現業所 事業部長
平成 7年 土木部総務課 参事
平成 9年 建設部建設企画室企画調整課長
平成 10年 網走土木現業所長
平成 11年 建設部土木局長
平成 13年 宗谷支庁長
平成 15年 現職
公共事業予算が削減される一方で、建設業界の再編の歩みは鈍く、市場規模と業界規模とのアンバランス状態が続いている。北海道建設部の山上徹郎部長は、道単独事業費の確保のため、従来の維持補修にも補助制度が適用できる制度改正を訴えており、一方、無理な受発注を見直し、行政と業界との関係を見直すなど、様々な対策に着手している。今後の業界のあり方と、建設行政の方向性などについて伺った。
――全国的に見ると、民間投資は幾分持ち直しつつあるのに、建設業界は相変わらず厳しいようですね
山上
業界再生に向けて、行政として行う業界対策にも様々にありますが、基本はあくまでも事業費を増やすことです。限られた財源の範囲で、国費をできるだけ多く獲得することがポイントです。
現在、除雪や道路維持や、その他の修繕は自主財源で行っていますが、そこに政府補助を導入することができないものかと、検討中です。もしも実現すれば、補助分の予算を別の公共投資に回せます。
しかし、現実にはなかなか希望通りにはいきません。補助金とは、そもそも事業規模の大きいものを対象にすべきであって、メンテナンスなどは自治体が自ら担うものだという前提なのです。
建設業界の構造を変えるとなると、確かにソフトランディングを模索し、他の業務分野への進出を応援しようという方向性にありますが、業界側ではあくまで本業で頑張りたいという人が多いのです。
――事業費を効果的に削減する方法の一つとして、コンストラクトマネージメント方式を採用している現場もありますね
山上
確かに、アメリカではジグシエーションと呼ばれる交渉方式ですが、日本でそれを採用する場合は、かなり内容をオープンにしなければならないでしょう。
しかし、交渉とは公の場でマイクを通じて行うようなものではありません。そのため、建設行政と建設業界に対する独特の観念が出来上がっている日本の風土では、ともすれば不明朗な交渉をしているのではないかとの誤解を受けやすいものです。
――業界では、利益の出ない工事を無理にも受注し、赤字を承知で施工に当たっている事例も聞かれます。これは正常な経済行為と言えるでしょうか
山上
もちろん、それを考慮して、決められた道費の範囲で少しでも事業費を増やす努力をしています。そして、適正な利益率の確保にも取り組んでいます。振り返れば、終戦から発注者は受注者に「請け負ったのだから」と無理難題を課してきたのです。
例えば工期が3月まででありながら、その期間内には到底、完成できそうにもないような事業を、12月になってから発注するようなケースもありました。そんな無茶な工期と発注では、完成できるはずもありません。したがって、そうした場合は工期を延長させるなどの配慮が必要です。
今日の業界の苦境は、企業経営自体が好ましくない事例もありますが、発注の仕方に問題があるケースもあり得ます。これから業況がさらに厳しくなれば、発注者側が訴えられるようなケースもあり得るのではないかと展望しています。また、本来そうした社会に変革していかなければならないと思います。
――建設業は請負産業であることを、自嘲する意識もありました
山上
あくまでもビジネスですから、対等関係の構築は必要ですね。その代わり、受注者側に問題があれば、もちろん発注者として指摘し、逆に発注者に落ち度があれば、大いに指摘される対等の関係で良いのだと思います。
しかしながら、長年の風習はなかなか解消されるものではなく、今なお施工者は監督員に遠慮しがちです。
――建設業の多角化は、明るい将来像をもたらすでしょうか
山上
他分野の業務にも参入すれば、北海道全体の産業構造が変わってきます。北海道の基盤整備や開発事業は、ある程度は進んできているので、先に述べた補助制度の仕組みの変更が、今後の課題となるでしょう。
例えば、中越地震のようなケースで、災害復旧のための補助制度は、修繕が対象になるのです。しかし、それも上限・下限が決められており、その範囲内でなければ認められません。このため、非常に使いにくい制度で、戦後まもなくしてできた当時の災害基準のままになっているのです。
――抜本的な改正が必要ですね
山上
今回の三位一体改革で、どうなるかですね。より利用しやすいものへと改善して欲しいものです。戦後であれば、あらゆる基盤整備が必要だったでしょうが、今日になって、整備率が高いからもはや何もしなくて良いというものではありません。
例えば、山間部に整備された道路の山側に崩落しそうな岩盤があったなら、それを除去しなければなりません。しかし、その道路は完成しているので、社会的には改良済みとして扱われるのです。そのために補助対象とはならず、その除去を地元負担だけで実施しているのです。これが補助対象として認定されるようなシステムに変更されれば、それだけ別の事業にも取りかかることができ、より広範に公共投資が行えるようになるので、是非とも実現して欲しいと思っています。

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