建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年1月号〉

interview

羽越水害の悪夢を解消する横川ダム

洪水調節 産業用水の供給のみならず観光資源としても多角利用

国土交通省 北陸地方整備局 横川ダム工事事務所長 七澤 馨 氏

七澤 馨 ななさわ・かおる
平成 9年 北海道開発庁水政課開発専門官
平成 11年 北海道開発局旭川開発建設部旭川河川事務所長
平成 12年    〃     〃   旭川道路事務所長
平成 14年    〃  事業振興部技術管理課防災対策官
平成 15年 現職
山形県小国町に建設される横川ダムは、いよいよ本体コンクリート打設の段階に入っている。かつて甚大な被害をもたらした羽越水害の悪夢から、このダムに対する地域住民の期待は高く、また水資源の供給も担うため、地域産業とライフラインとしても貴重な事業計画だ。完成後には、観光資源としての多角利用も検討されているこのダムの事業の概況と、地域事情などを横川ダム工事事務所七澤馨所長に伺った。
――横川ダム建設の経緯は
七澤
荒川は、山形県の南西部から新潟県北東部へ流れる河川で、流域は古くから大雨が降るたびに洪水が発生しました。特に昭和42年8月28日に発生した羽越水害では、荒川流域で総雨量が700mmに上る集中豪雨により、90名の人命が失われ、住宅や田畑の流出、さらには道路や鉄道が寸断されるなど、甚大な被害をもたらしました。上流の小国町などは、中心部全域が浸水してしまったほどです。
この荒川は、羽越水害以前は県が管理していましたが、水害後に一級河川に格上げされ、国の直轄で治水対策が行われることになりました。
計画としては、ダムによる洪水調節と、河道の改修によって安全度の向上を図ることになります。
――横川ダムの概要は
七澤
横川ダムは洪水調節のほか、流水の正常な機能の維持、工業用水、発電を目的とする多目的ダムです。堤高は72.5m、堤頂長約280m、堤体積約25万m3、総貯水容量2,460万m3の重力式コンクリートダムで、昭和62年から実施計画調査に着手し、平成2年度に着工しました。4年度は、主要地方道川西小国線をはじめとする付替道路に着手し、13年度に転流工、15年度にようやくダム本体工事に着手しました。
――完成後の機能は
七澤
下流にある大石ダムと横川ダムとによって、荒川の一番下流の基準地点で洪水を1,000m3/s分カットします。昨年4月に策定された河川整備計画では、荒川の下流での目標は7,500m3/sで、そのうち1,000m3/sをダムによってカットし、河道では6,500m3/sを流下させます。
貯水の一部は、工業用水として供給します。小国町は山間部の町で、農林業が中心と思われるかもしれませんが、就業人口を見ると一次産業よりも二次産業が多いのです。
この地域には、ハイブリッドカーに使用する水素吸造合金や半導体の工場があり、戦前から立地しており、企業城下町のように発展してきています。荒川にはこの横川ダムのほかにもダムがあり、水資源や電気が豊富だったことが、立地の理由ではないかと思います。
一方、渇水期でも飲料水や農業、工業用水などを確保しつつ、安定した流水量を保つことで、動植物を守り、河川環境を保全します。
そして、利水用水をダム下流へ補給する際に、水力発電を行います。年間の発電量は約2,590万kwhで、これは一般家庭約7,000戸分に相当します。
――今年度の工事概況は
七澤
6月24日にコンクリート本体の打設が始まり、今日までに概ね5万3,000〜5万4,000m3を打設しました。ダム全体のコンクリートのボリュームが約25万m3ですから、2割方のところまで打設が進んできたというところで、順調に計画通りに進んでいます。コンクリート打設は平成18年8月までに完了させる予定で、19年度末の完成を目標に工事を進めているところです。
――地域住民の事業計画への反応はいかがですか
七澤
羽越水害が大きな洪水だったので、治水については非常に強い関心が持たれています。
――ダム工事に関して、情報公開についての取り組みは
七澤
この工事事務所の1階に広報室があり、模型やパネル、パソコンなどを設置し、気軽に学べる空間を設けています。新潟県関川村の道の駅に隣接したところには、川の資料室があります。ダムばかりではなく、荒川の河川事業や砂防事業などを総合的に展示しています。
また「“しゅん”の里づくり」という地域情報紙を、年4回の季刊で刊行し、小国町の広報誌と一緒に配布してもらっています。「横川safety」と題した、施工に当たる安全協議会の発行するパンフレットもあり、現場見学会も開催しています。
――ダムという土木資産の多角的有効活用策は、検討していますか
七澤
このダムが、観光資源などの地域の財産になればと期待しています。ダム湖や、あるいはダム湖周辺をどう使っていくか、地元の小国町とはよく協議しています。
水遊び、あるいは紅葉の季節であれば紅葉狩りなど、いろいろな使い方があると思いますし、地域振興に役立てばと思っています。

横川ダム本体建設工事

●飛島・戸田・福田特定建設工事共同企業体

北陸支店/福井市宝永4-9-13
TEL.0776-22-0723

北陸支店/金沢市片町2-2-15
TEL.076-231-4121

本社/新潟市一番堀通町3-10
TEL.025-266-9111

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