建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年4月号〉

interview

新冠町を通過型から滞在型の観光地に

「レ・コード館」「温泉」等で活性化

 新冠町長 岡 裕 氏

岡 裕 おか・ゆたか
昭和 2年 6月 30日生まれ
昭和 20年 3月 静内農業高等学校卒業
昭和 34年 5月 新冠村議会議員
昭和 38年 5月 新冠町議会議員
昭和 42年 5月 新冠町議会議員副議長
昭和 47年 4月 新冠町農業協同組合長理事
昭和 50年 5月 新冠町議会議員議長
昭和 55年 3月 日高軽種馬農業協同組合代表理事組合長、
   日本軽種馬協会副会長
平成 元年 6月 新冠町長 現在3期目
道南・日高地方のほぼ中央に位置する新冠町は、長年、「サラブレッド」による文化を築き上げてきたが、今、もう1つの文化が芽生え、20世紀の偉大な音楽遺産である「レコード」によるまちづくりを展開している。この12年間、まちづくりの先頭に立ってきた岡氏に地域振興の取り組みについて伺った。
――今年の6月で町長3期目を終えられますが、どんな施策に取り組んできましたか
12年間、議会も町民も皆さん、協力していただき、仕事も順調にできたと思っています。前町長から引き継いだ事業、授産施設や国鉄の踏切の移転も行うことができました。また町おこしとしても、日高には温泉がないと言われていたところが、後に掘り当てることができ、町の人にも大変に喜ばれ、日高管内でも随一と言われるほどになりました。
「レ・コード館」についても、「レコード」という目玉だけでは当初の計画では難航していましたが、そこで町民に、「町に何が欲しいか」と問うたところ、図書館が無く、体育館が不足しているという声が非常に多かったので、「レ・コード館」の中に併設することになりました。体育館は、新たに建設するわけにはいかないので、新冠の町民センターで行う仕事を「レ・コード館」に移し、町民センターの空いた場所を体育館として利用するという形をとりました。
 その他、新冠だけでなく、日高管内9町長や農業団体などの話し合いにより、日高に地場産業として、競馬場を建設しようということになり、私が、競馬場誘致促進期成会の会長に就任しました。色々な問題がありましたが、数々の交渉の上、門別に競馬場をつくることができました。
――「レ・コード館」を建設したことにより、町はどう変わりましたか
年間7〜8万人が訪れてくれることにより、新冠を理解してくれる人々、新冠に興味を持つ人々が増えてきたと考えています。
 そもそも「レ・コード館」を建てたきっかけは、国土庁から過疎地と都会の間で、人口の交流を図れるものをつくるよう、アドバイスを受け、10ぐらいの案を提示した結果「レ・コード館」が承認されたのです。都会の人々にとっては、2回でも3回でも来たいと思う場所ができたと自負していますので、その意味では、目的が達成されたと思います。
――それによって新冠は「通過型」から「滞在型」の観光地へと脱皮したのですね
以前は、宿泊施設が全く無かったのが、温泉ができ、「レ・コード館」、ホテル、乗馬クラブ等が新冠にできたことによって、新冠に興味を持ってもらうことができ、観光地として発展したと考えています。「レ・コード館」だけでなく、色々な事業を含め、まちづくりができたと思います。
――町では国際交流にも力を入れていますね
昨年まで町民海外研修をオセアニア、ヨーロッパ、アメリカの3地域に分けて実施し、町民118名が参加しておりますが、これからはよりソフト面で力を入れるべきだと思います。ソフト面とは、世界を視野に入れる事です。そのためには、未来の新冠を担う子供達に、町費負担で国際交流を考えています。小中学生に外国に留学してもらい、またその留学先の国からも子供達を新冠に受け入れて、国際交流を進める準備をしております。
子供というのは外国人と話すことを、恥ずかしいと考え始めると、言葉を覚えなくなるので、その前に国際交流を図り、少しでも外国に触れてもらい、成長してもらいたいと考えています。
 2000年からは「第四次新冠町総合計画」がスタートしましたが、この計画もソフト面を重視したものになっています。その基本として、町が進めているレ・コード&音楽のまちづくりのコンセプトは、「r」「cord」からなっており、心の再生を意味し、人間らしさを取り戻すまちづくりを幅広く展開していく考えとも一致します。
――新冠は「サラブレット文化」というのもユニークですね
サラブレッドは自然と人間の力を合わせて創造した最高の芸術品と言われていますが、新冠では、ハイセイコーが生産され、オグリキャップやナリタブライアンのような有名馬を輩出してきましたので、その意味では、意図して「サラブレッド文化」を創りあげなくても、サラブレッドに関心を持たなければならないような状況になっていますので、自然と形成されていったわけです。
――一方、まちを支えていく上で、基幹産業である農業・漁業・林業の振興も重要ですね
私自身も、父の代から農業に従事しています。全ての産業に言えることですが、自分たちの力で対策を行っていくのが、それらの産業であって、町として補助していくのは、限界があると思います。
 馬を生産している人々は一件で、多額の売り上げを上げているところもあるので、農業・漁業・林業もこのように自立をして欲しいと考えています。もちろん、国の制度に従って、諸々の補助は行っていますが、小さい町ですので、町単独として補助金を出すには、財源が乏しく、なかなか難しいと考えています。それでもそれらの産業は新冠の基幹産業ですので、全体で見ると、売り上げは少ない方ですが、よく対策を考え、頑張りを見せていると考えています。
――4期目に向けての抱負は
いずれにしても、町民の皆様には、12年間の私の実績を見ていただければ、評価はしてもらえると考えていますし、厳しい時代になり、苦しい財政の中で諸政策を行わなければならないので、今まで通りにはできない場合もありますが、いかに堅実な町の運営をしていくかが、カギとなると考えています。
 4期目における基本的な事業展開は、「第4次新冠町総合計画」に基づいた、まず第一に「レ・コード&音楽によるまちづくり」のステップアップを図るため、「レ・コード」という心の再生をキーワードに考え、その言葉が意味する“心・人間性・やさしさ・いやし・ゆとり・やすらぎ”を取り戻すことができる環境をまちづくり全体に浸透させ、暮らしやすさやうるおい環境、活力、誇り、そして町民の力が実感できる質の高いまちを築きあげたいと考えています。また実際には、今まで培われてきた風土や歴史を生かしながら観光の振興や地域福祉の展開、交流促進、定住促進、生涯学習などの向上を目指し、6,500人の町民が笑顔で喜んでくれ、前に進むことができる行政を行っていきたいです。

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