建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年12月号〉

interview

見えてきた道央圏の幹線ネットワークの完成

農業基盤は北から南へ進捗

北海道開発局 札幌開発建設部長 本名 一夫 氏

本名 一夫 ほんな・かずお
昭和 48. 3 北海道大学工学部卒
昭和 51. 4 北海道開発庁採用
59. 4 北海道開発庁北海道開発局
札幌開発建設部札幌新道建設事務所工事課長
60. 7 日本道路公団札幌建設局技術部工務課長代理
62. 12 北海道開発庁北海道開発局
土木試験所第2研究部構造研究室長
平成 元. 3 インドネシア国(ジャカルタ)に派遣
6. 11 北海道開発庁北海道開発局釧路開発建設部次長
8. 7    同  北海道開発局室蘭開発建設部次長
9. 7    同  北海道開発局札幌開発建設部次長
10. 6    同  北海道開発局建設部道路建設課長
13. 7 国土交通省北海道開発局小樽開発建設部長
15. 1   同  関東地方整備局常陸工事事務所長
16. 7   同  北海道開発局札幌開発建設部長
年々、事業予算の減少傾向が続く中で、札幌開発建設部も例外ではないが、地道な整備によって幹線道路ネットワークの完成も間近となる一方、農業基盤も基礎的な整備から高度化へと向かっている。本名一夫部長に、今後の事業展開の展望などを伺った。
――札幌開発建設部の予算推移は
本名
平成16年度の予算は約920億円で、過去5年間の推移を見ると、12年度の当初予算が962億円だったので漸減傾向です。補正予算も15年度はなく、今のところもその動きはありません。補正込みで見ると、12年度は1,200億円だったので、当初プラス補正ベースで比較すれば、今年度は76.6%、つまり12年度の約4分の3となっています。これはあくまで総予算なので、諸経費と道路維持予算を除けば、実質的な改築事業費は4分の3どころか、大幅のダウンとなっています。
――来年度に向けての概算要求基準もマイナス3%ですね
本名
そうした制約の中で、必要な事業を効率的に実施しなければなりません。事業費の内訳は、農業部門では、最近は道央圏の基盤整備に力を入れているので、当初補正込みでおおむね横ばいで推移していますが、道路部門については特に厳しい傾向にあります。
――道路事業は、どこに重点を置きますか
本名
ほとんどの幹線の一次改築は終了しているので、現在力を入れているのは高規格道路と地域高規格道路です。当部で整備を進めている高規格道路は深川留萌自動車道で、現在、沼田インターまで供用していますが、これを今年度中に次の北竜インターまで供用させます。これによって留萌方面とのアクセスが格段に向上し、利便性は飛躍的に向上します。高速性もさることながら安全性も確保できる上に、万が一のための道路網のリダンダンシーも得られます。
その次の目玉となるのは国道337号で、地域高規格道路の道央道連絡道路の中でも美原大橋を含む区間の今年度中の供用を目指します。
――美原大橋の本体自体はかなり出来上がっているようですね
本名
かなり出来上がっており、現在は橋面工に着手しているところです。これを含む前後区間を供用することによって、江別東インターと石狩川右岸地域が連結されます。江別から当別方向への区間は、幹線道路としての整備はこれからですが、現在ないところに橋ができるわけですから、地域とのアクセスは格段に向上します。
一方、今述べた、275号の結節点から延長8kmの国道337号道央圏連絡道路・美原道路も促進していきます。これはすでに事業化しているので、用地補償促進、工事着手という段階です。
――地元の地権者や地域住民の反響はいかがでしょうか
本名
前向きに協力を頂いており、期待感も高いようです。美原大橋を含めて川を渡るところまでいきますが、そこから先の8km区間が完成した暁には、広域的なネットワークの3分の1が完成することになります。
一方で、新千歳空港につながる道路も、同じく337号の道央圏連絡道路の一部となります。そこに接続する南幌の中樹林道路7.3kmは現在事業化しており、設計協議で地元との協議に入っている段階です。設計協議が整ったあとに用地補償に入る手順になっています。
長沼と南幌を繋ぐ長沼南幌道路は調査中で、これから地元の意見を聞きながらルートを決定していきます。
――ルートの決定にも、いろいろな意見・要望が出るでしょう
本名
コントロールポイントを選別することになります。一口にコントロールポイントと言っても、学校や遺跡、病院など様々なものがあります。この場合の最も大きな要素は農地で、すでに碁盤の目で区画され、整備されてあるので、それを斜めに分断することはなるべく避けるようなルート選定が重要です。我々としては情報を提供し、地元の意見を聞きながらコンセンサスを得た上でルートを決めていきます。
千歳東インターから長沼にかける8.2km区間の泉郷道路は、空港と空知を結節するという目的で、千歳空港関連事業となっています。現在は千歳東インターで降りて、337号に乗り換えるという不便な線形になっているので、それを変更し、従来よりも圧倒的に便利な道路を整備しているのです。これが供用されれば、国道274号から空港からへのアクセスが格段によくなり、新たな空港連結道路網ができます。
――現在、事業着手しているところが完成すれば、管内のネットワークはおおよそ完結することになりますか
本名
もうひとつは、やはり永年の懸案であった札幌の南回りの環状線ですね。これは地域高規格道路の候補路線と位置づけられていますが、いまだに具体化していません。もっとも、今それを具体化させようとしてもエネルギーが分散してしまうので、現在の事業がある程度まで見込まれた段階で、また、時代にあった実行可能な路線選定をしていくことになると思います。
――この路線は、かなり古くから計画されていましたね
本名
プライオリティの問題もあって、今日まで来ましたが、我々ととしては、しかる後にはと考えています。やはり札幌こそ南側の路線は、ひとつは欲しいところだと思います。例えば、支笏湖方面からのアクセスや観光ルートとしての利用など、いろいろな考え方があるのではないでしょうか。
――12号線だけでは、どうしても慢性的に渋滞しますね
本名
今後は、札幌都心部の道路交通網のあり方というものを、もう一度考えなければならないでしょう。また、北空知から旭川空港に直結する452号の事業についても、具体化していく必要があります。産業や観光振興の見地からも、大切な計画だと思います。
ただ、ここには芦別山系の山脈があって、また地滑り地帯もあり、施工は技術的に難しいのです。そこでコストが問題になるわけです。地滑り地帯の工事は、非常に経費がかかるわけですね。しかし、改築費が激減している中で、いかに効率的にコストを縮減しながら、難工事を行っていくかがポイントですが、そうした場合にこそ、技術力を活かしていかなければならないと思います。
――まさに技術の見せ所ですね
本名
とはいえ、職員も経費も削減される中で、いろいろな対外協議にも時間を取られるため、我々としても、じっくりと技術を創り上げていくことが難しい状況になってきています。そこで、民間の技術力を活かしたいと思い、プロポーザルや総合評価方式、デザインビルドなどを通じて、民間の持つ技術を有効に活かしたいと考えています。
――農業基盤整備については
本名
管内は、全道でも随一の稲作地帯なので、年間予算の占める割合は、920億円のうちの4割を占めています。現在、主力的に進めているのは国営かんがい排水事業で、12地区にまたがります。マクロ的には北の雨竜川中央地区、北空知地区、空知中央地区の整備を進め、今後は南空知から石狩地区にポイントが移っていく工程となっています。
大まかに言えば、空知北部方面は今年度に完了し、18年度までには空知の中央部までが完了します。現在は、暫時深水かんがい事業を行っています。これは、田圃の水深を深くすることによって、冷害に対応するものです。水の厚みによって、温度が下がったときでも断熱材のように根を保護することができるわけです。従来のかんがいをさらに高度化していくわけです。
また中樹林地区では、農地再編事業を行っています。これは将来の転作を見据えて、区画で分かれた農地を一枚に集約するほ場の大区画化です。稲作として使っても効率は良いのですが、特に畑作の場合には大規模機械農業でなければ効率が悪いので、その転作を視野に入れての大区画化です。現在は、中樹林地区が最盛期で、今年度は由仁地区でも着工しました。
――ダム整備の現況は
本名
シューパロダムと徳富ダムに着手しています。これらはいずれも共同ダムで、用途は治水、農業かんがい、水道の3つです。国土交通省としては、治水事業としての多目的ダムがありますが、ここでは農水省の農業用ダムと供用するため、共同ダムという位置づけになっています。
――ふたつのダムが完成すると、農業基盤の体系は完成すると言えますか
本名
当面はそう言えますが、農業基盤というのは、いわば食料生産工場です。工場には必ず更新が必要で、資本投下は欠かせません。かんがい排水も一度造れば、永久に使えるというものではなく、常に手入れをしなければならないものです。転作や大規模機械化など、時代や技術の変化によっても、農地の有り様は変わってきます。
――最近は農業も純粋な産業だけではなく、観光・娯楽的な機能が確立されつつありますね
本名
最も典型的なのは美瑛の丘ですね。その他、十勝やニセコなど、農村風景が観光資源になっています。開発局では「わが村は美しく−北海道」運動を進めています。これは農村の暮らしぶり、風景を美しいものにしようという運動です。北海道観光の中で、農業農村の占める割合は非常に大きいと思いまです。
自然そのものも美しいけれど、都市と山の間に広大に展開する農村の風景も、観光資源として大事だと思うのです。そのため、身の回りを美しくしようという地域運動であり、北海道の観光資源として、大いに進めていきたいものです。

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