建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年9月号〉

interview

自動車のまちを支え、地域の未来を支える名古屋高速道路

技術的な課題を克服しつつ、高速16号一宮線と高速6号清洲線の建設が進む

名古屋高速道路公社 建設部長 竹野政昭 氏

竹野 政昭 たけの・まさあき
昭和 48年 3月 名古屋大学大学院工学研究科
土木工学専攻修士課程修了
48年 4月 名古屋高速道路公社入社(工務部工務課)
51年 4月 計両部計画課
55年 10月 計画部企画課
57年 5月 計画部企画課主査
62年 4月 計画部計画課計画第二係長
平成 2年 4月 工務部設計課課長補佐
6年 4月 建設部工事第一課課長補佐
8年 4月 〜11年3月 名古屋高速道路協会へ出向(技術部技術課長)
11年 4月 技術管理室室長
12年 4月 企画調査部調査課長
16年 4月 建設部長
わが国の中央部に位置する名古屋圏は、製造業・商業・サービス業の一大拠点として、自動車が人やモノの移動に大きな役割を果たしてきた。名古屋高速道路は、市街地交通の円滑化・効率化を目的に、1979年に開通。現在では1日23万台もの車に利用される重要な幹線道路となり、そのエリアはさらに広がりつつある。しかし市街地の交錯したエリアでは、道路建設は至難の業だ。そのような中で環境に配慮し、どのように技術的な課題を解決していくのか、今年度事業の内容を中心に、名古屋高速道路公社・竹野政昭建設部長に伺った。
凡例
供用区間

高速6号清洲線
事業中区間
入口出口
――現在、一宮から明道町にいたる高速道路の整備が進められていますが、その概略をお聞かせ下さい
竹野
この路線は、東名阪自動車道と交差する清洲jctを境に、南北二つの路線として整備しています。清洲jctから北側は、名神高速道路一宮icに接続するとともに、さらに北へ延伸し、155号に至る延長約8.9kmを「高速16号一宮線」として整備しています。
一方、清洲jctから南側は、都心環状線の明道町jctまでを結ぶ延長約7kmを「高速6号清洲線」として整備しています。
ただ、その直下には国道および市道が通っており、高速道路の工事が完了すれば、原型復旧しなければなりません。
――北部の「高速16号一宮線」の整備状況は
竹野
現在は床版工事が、ほとんど収束に近い段階です。ご存じの通り、常滑沖の中部国際空港が来年2月17日にオープンし、また万博も開催されるので、それまでには開通させるべく工事を進めているところです。順調に進めば来年の2月には開通出来るだろうと思います。
今年の9月末までに床版工事を全て終え、電気工事、料金所の上屋、照明等の保全施設部が行う施設工事に引き継ぐことになります。一部床版工事が残るところはありますが、それを逐次終えて落下防護工を撤去すれば、下から見るとすっきりした形状に仕上がってくると思います。北側では工事が完了したところから22号線の中央分離帯の復旧工事をはじめています。歩道、車道など、街路整備を含めて、秋風が吹く頃には、かなり完成がイメージできるものになってくると思います。
――一方、名古屋都心部に至る「高速6号清洲線」の進捗状況はいかがですか
竹野
6号清洲線は、16号一宮線と一体となって、岐阜・一宮方面と名古屋市内とのアクセスを強化するとともに、国道22号等の交通混雑の緩和を図る重要な路線となっています。本来は空港開港までに16号一宮線と併せて、都心ループに接続する構造を想定していたのですが、この区間は用地買収がかなり必要で、その遅延も影響して着工が遅れたのです。さらに、この路線の一部区間の地下には、地下鉄鶴舞線が通っており、この近接施工と阪神淡路大震災以降の耐震設計の見直しにも時間を要したことも影響しています。
現在の進捗状況は、国道22号の庄内川から北が全面的に着工しており、柱がかなり建ち始めている状況です。
また、庄内川を渡るエクストラドーズド橋は、渇水期施工のために施工期間が限られつつも、早期に着工できたため、現在はほとんど出来上がっています。
堀越から、明道町までの南半分の区間は、街路幅員が50m、40m、30mと、部分的に幅員が変わるところがあり、そうした状況で現道の車線を確保しつつ進めて行かなければなりません。狭いところでは、工事の占用帯を設ける必要があるため、歩道を狭めて車道を広げる工事と、埋設物、占有物件の移設を実施しているところです。今後、庄内川以南の都心部に至る区間は、工事が大きく進むと考えており、来年度中には大半の箇所で下部工事に着手する予定です。
▲エクストラドーズド橋の全景を望む
▲庄内川に架かるエクストラドーズド橋
――高速6号清洲線のエクストラドーズド橋の特徴は
竹野
エクストラドーズド橋は、従来の桁橋で桁内に配置されていたpc鋼材を、より効果的に用いるために桁外に配置し、強力な偏心力でプレストレス力を主桁に作用させようとした新しい橋梁形式になっています。
外観は斜張橋に類似し、構造的には桁橋に近い特性を持っており、通常の桁橋に比べ、桁高を低くすることが可能で、主塔高は斜張橋に比べてかなり低くできるため、施工性が向上出来ます。また、斜ケーブルは活荷重による応力変動が小さく、通常桁内ケーブルと同様のシステムが利用出来るため経済的です。
この区間は長支間であるために、当初は鋼床版箱桁橋で計画していたのですが、通常のpc橋と比較して桁高を約半分に抑えることができ、建設コストを約10%削減出来ることからエクストラドーズドpc橋となりました。
――他に工法的な特色はありますか
竹野
高欄に採用した工法に工場で予め製造したプレキャストコンクリートの壁と鉄筋をセットで設置し、現場ではコンクリートだけを打つ工法があります。本体は事前に造られていることから、このための足場や防護工の必要がなく、コスト削減になるのです。
ただ、足場や防護工は不要という建前ではあっても、やはりコンクリートを打つ際には慎重に進めなければなりません。
▲地中連続壁基礎施工状況 ▲鋼管矢板基礎施工状況
■橋脚構造 ■主桁断面形状
▲正負交番載荷実験状況
――近年は、工場で製作したものを、現場で組み立てる工法が盛んになっているようですね
竹野
鉄筋を加工する職人、組み立てを行う職人が少なく、できるものは工場で製造したほうが効率的という事情もあるようです。
――強風で、現場の資材などが吹き飛ばされる可能性もありますね
竹野
台風などの自然災害もあるので、夜も携帯電話が離せません。特に今年は、早々にかなり大きな台風が来たので、施工各社には口煩いほど注意を促し、公社職員にも自分の持ち場の工区を、休日にも巡回させて備えました。例えば、16号一宮線床版の落下防護工の通称あさがおなどは取り払って、極力、風を受けないようにしました。本来は時間をかけて下ろすつもりだったものも、できる限り下ろすようにしました。何しろ、名古屋市内でも瞬間的に30m強の風が吹いたようで、いかに手当てしていても、思わぬものが倒れるということも考えられます。
▲既設構造物防護工
▲作業車(ワーゲン)
――都市高速道路工事に伴う国道22号や名古屋市道の街路復旧に関して、公社ではどのように取り組んでいるのでしょうか
竹野
中央帯の他、施工のために形状を変えた箇所を復元する工事は全て公社で行います。街路復旧工事については、その構造、工事箇所の分担等、今後道路管理者と詳細に詰めていくことが必要です。
例えば、一部区間では、電線類の地中化など道路のグレードアップ工事等も予想されますので、公社としてもできる範囲で対応していきたいと考えています。
――地域柄、施工しづらい区間もあるのでは
竹野
1号楠線においても幅員30mの街路区間がありました。こうした狭い幅員の中で、現況の交通の流れを確保しながら地下埋設物を移設し、高速道路の構造物を構築していくためには、何回も交通の切り廻しが必要となりますので、通行される車がとまどって事故を起こさないように、切り廻しの形態に配慮することが重要です。
また、工事の占用帯(作業ヤード)のなかに、必要な機械ができるだけ多く置けるよう、合理的な配置をし、効率的な施工で少しでも工期を短くすることが必要です。
――工事中にも、生活道路の通行を確保するわけですね
竹野
そうです。ここには地下鉄鶴舞線も通っており、地下鉄のメガネ型シールドの上に、高速道路が乗るかたちになっており、施工が難しいのです。計画段階とは施工条件が変わってきたこともあり、難しくなりました。例えば、幅員30mで地下鉄シールドと都市高速の橋脚が競合する何箇所かでは、計画では、シールドの両端に杭を深層まで打って仕上げる予定だったのが、実際にはsmwという壁構造が現地に残っているため、杭が打てなくなったのです。
そこで、かつて名工大の学長を務められた吉田先生を中心とする、jciという第三者機関にお願いし、鋼管杭を途中で止める構造とし、薬液注入で固める工法に変更したのです。
地下鉄の構造にもよりますが、やはり地下鉄自体が保つのかどうかが問題です。施工に伴う荷重計算が、計画段階と実際とでは、やはり違ってくるのです。
――都市が成長し、過密化すると、地下埋設物も増える一方、歴史の深い地域となれば、史跡の存在にも配慮しなければなりませんね
竹野
そうです。そうした残存物件については、用地買収段階でそれらをすべて処理し、スムーズに施工できれば理想ですが、現実は着工してから、かなりの残存物件を取り去ることとなり、時間と費用がかかるということがありますし、史跡が発見されれば、その調査に時間がかかることになります。今回の区間(路線)では、朝日遺跡という遺跡の調査に時間を要しました。名古屋の都心部付近では、近傍に旧街道筋があったり、名古屋城築城当時からの街並みがあります。
こうした歴史を感じながら、都市高速道路という大規模土木構造物を構築していく。土木技術者冥利ということになるのでしょうか。
――両路線の工事は、まさに難工事というわけですね
竹野
新川という川があり、それを跨ぐための施工箇所でも、現道の橋自体がそれほど丈夫ではなく、重機の荷重に耐えられないために、わざわざ連続地中壁を打って補強した上で工事を行うのです。その分、時間と費用がかかってしまうわけです。
また、難工事という点では、国道22号の盤下げ工事も大変でした。国道22号には側道があり、本線と側道との間には段差があります。横断道路に近いところでは、高低差はそれほどでもないのですが、下がっていくと3m近くの高低差となります。そこで擁壁と盛土を撤去し、フラットにするのです。この盤下げ工事だけでも8か月から10か月かかったとのことで、本体工事に着手するまでに、それだけの準備作業が必要でした。16号一宮線では、この盤下げ工事が最大の難工事だったと聞いています。
▲堀越工区下部 庄内3通交差点より ▲新川その3工区下部 起点より終点を望む ▲一宮南その4工区床版 西側より起点を望む
▲一宮ic工区下部 名岐aランプ始点方向より ▲一宮北その1工区床版 外崎交差点より南行き ▲一宮北その2工区中央帯 P168より北行き
名古屋高速道路建設工事安全協議会
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