建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年8月号〉

interview

町民参加や福祉に重点を置いたマチづくりを展開

日高管内の中核都市としての役割を果たすために、しっかりとした基盤整備を推進

北海道静内町長 沢田 房晴 氏

沢田 房晴 さわだ・ふさはる
生年月日 昭和22年12月2日生まれ
最終学歴 北海学園大学法学部卒
昭和 48年 5月 北海道庁入庁
平成 5年 8月 渡島支庁地方部振興課長
平成 7年 6月 石狩支庁地方部振興課長
平成 10年 4月 道総務部管財課長補佐
平成 11年 5月 道総務部参事
平成 11年 5月 静内町助役就任
平成 12年 8月 同上退職
平成 12年 8月 静内町長就任 現在1期目
競走馬のふるさと北海道静内町は、日高管内の中核都市として発展をしてきたが、現在は軽種馬産業の低迷などで財政状況は厳しい状況だ。沢田房晴町長は、平成12年8月に就任して以来、町民参加のマチづくりや福祉施策などに重点を置いて、町の再生に取り組んできた。同町長に4年間の取り組みと、今後の政策の展望を伺った。
▲静内川
――町長に就任してからの4年間を、どう評価していますか
沢田
平成12年に就任した当時は、7年に全国的に話題となった給食センターの食中毒事故問題や、道立平取養護学校「ペテカリ」の分校建設地問題が重要課題となっていました。
そこで、安全・安心な給食を提供することができる給食センターの整備は、なんとか財源を確保して実現でき、ペテカリの分校も静内高校の裏地に、新しい校舎が昨年春に建設されたことで何とか解決できたので、その点は自己評価しています。
――まちづくり政策の基本姿勢として進めてきたものは
沢田
町民参加のマチづくりを基本に、様々な施策に取り組んできました。例えば、町民と直接に対話する「まちづくりふれあい大夢」や、職員が各種団体等に出向いて行う「まちづくり出前講座」などを実施しましたが、この2つで年間約6千人の町民と、直接対話する機会を得ました。
その結果、たくさんの要望や陳情はありましたが、町財政の状況から、できるものできないものを説明した結果、町民も現状を理解してくれました。財政は厳しい状況ですから、その健全化や行政改革に向けて、町民参加による行政評価を行うなどの取り組みを進めてきました。
その他にも、日高中部組合でごみの焼却施設やリサイクル施設を整備したり、特別養護老人ホームは建設中ですが、環境や福祉には重点的に取り組んできました。
――軽種馬産業は苦況のようですね
沢田
中央競馬も道営競馬も厳しい経営状況で、軽種馬産業を取り巻く環境は厳しいものがあります。今年6月には国会で、競馬法が改正され、国でも諸対策が検討されていますので、それ等の実現に向け、地元として強力に取り組んでいこうとしています。馬産地としては、8千頭規模の軽種馬の生産を行っていますが、今後は頭数の適正化も図りながら、そして強い馬づくりも同時に進めていかねばなりません。
一方、経営の強化も必要です。現在は豊富な粗飼料、現有施設・機械を有効活用した「黒毛和牛」の繁殖素牛を計画的に導入していくことにより、農家経営の複合化による安定化への取り組みを進めています。平成15〜17年度までの3年間で150頭の導入を目指していますが、今後も頭数を増やし、経営強化に努めていきたいですね。
――高規格幹線道路「日高自動車道」の建設が待たれますね
沢田
「日高自動車道」は、昨年8月に厚真・鵡川間が供用開始され、平成17年度末には、門別町富川まで開通する計画で整備が進められています。この道路は現在、静内までが事業計画区間となっており、現在、厚賀静内間は平成18年度を目処に環境アセスメントを実施しており、その後、事業着手する予定です。
日高地域は、国道235号線が唯一の主要幹線道路ですが、地震や大雨で度々通行止めになるなど、住民生活や観光・社会経済活動などに与える影響は大きいものがあります。昨年の台風10号でも、河川の氾濫で通行止めとなり、山側を迂回したために、新冠町で死者がでるなど痛ましい犠牲がありました。
その意味でも、高規格自動車道路は、災害発生時の代替道路としての役割が非常に大きく、さらには観光拠点へのアクセス道路としての意義や、救急患者の輸送短縮、軽種馬の輸送も含めた物流の効率化など、地域の発展・活性化に繋がる大きな効果が期待されます。
▲特別養護老人ホーム「静寿園」完成予想図
――高齢者の福祉対策は、どこの自治体にも深刻な課題ですね
沢田
高齢化者福祉対策としては、公営住宅「緑町団地」に3棟の高層住宅がありますが、そこに日高管内では初の単身者や夫婦二人の高齢者世帯を対象として、介護などを含めた生活相談員が常時待機するシルバーハウジング住宅を建設しました。
また、特別養護老人ホーム「静寿園」は、全道でも初めての全室個室というユニットケア方式を採用した施設として建設中です。さらに平成18〜19年を目処に、生活支援ハウスも整備する計画で、今後の高齢者福祉は非常に充実していきます。
この他、全道に先駆けて保健・医療・福祉が三位一体で連携した取り組みを行っており、例えば「静内町総合ケアセンター」は、町立病院と介護老人保健施設「まきば」、保健福祉センターが一体となった複合施設で、総合的な支援体制が確立されています。その施設の周辺に、先のシルバーハウジング住宅や特別養護老人ホーム「静寿園」が設置されるので、今後も誰もが安心して暮らせるまちづくりが実現するでしょう。
――合併問題については、進展があるようですね
沢田
合併については現在、静内町、新冠町、三石町との日高中部3町で協議しており、平成14年4月に研究会を設置し、15年1月からは任意的協議会、同年11月からは法定協議会を設置して順調に進んでいます。
それぞれの町が自立することも考えられましたが、全ての自治体が三位一体の改革や財政問題を抱えており、自立しにくいのが現状です。その意味では、3町長が1人になり、議員数も約半分になるので、行政の効率化や財政面では効果的です。
また、静内町と新冠町、三石町は隣接しており、通勤・通学などの生活圏、商業圏、医療圏など日常生活圏が共通しているので、合併には理想的な地域なのです。
――合併後の名前も決定したとのことですね
沢田
3町の町民に広報誌やホームページを通じて公募した結果、「ひだか市」に決定しました。今後は、一つ一つの合併項目を着実にクリアし、ぜひ成立させたいと考えています。
合併特例法が今年の春に改正され、期限が1年間延びたことから、平成17年の秋頃までには実現させたいと考えています。したがって、それまでに議会の議決をとるなど、3町の意思決定は遅くとも来年の2月か3月位までには必要だと思います。
▲みゆき通り
――中心市街地の活性化も重要ですね
沢田
現在、新冠側からの国道沿線は、大型スーパーなどが集中的に建設され、大型店の進出が目立っています。これが、雇用拡大など経済の活性化に繋がっており、土日には5〜6万人を動員する商業圏へと成長し、日高の消費者動向が変わりつつあります。それを視野に入れて、確固たる基盤整備を進めていかなければなりません。
しかし、その反面では町内のメインストリートである「みゆき通り」が、あおりを受けている状況です。中心商店街の活性化として、行政のてこ入れを行い、「みゆき通り」の活性化も図っていきたいですね。
――静内は日高管内の中核都市ですから、合併後はその役割がさらに大きくなりますね
沢田
全道的に札幌の一極集中という弊害がある反面、それが道外への転出を防いだ一面もあります。その意味では、静内もそうした役割を果たす必要があると感じます。
高規格道路の開通で、苫小牧や札幌への流出が懸念されるので、管内全体の活性化のために、住む人にも訪問する人にも良いマチだと評価される基盤整備を進めたいと思います。
――今後の展望として、どのような将来像を描いていますか
沢田
この4年間で進めてきた町民参加のまちづくりと、行財政改革などを強力に進め、3町の合併を成し遂げることが優先課題です。
同時に、管内は第一次産業が基本ですから、農業では、軽種馬産業の「黒毛和牛」による複合化の他、減農薬・減化学肥料の取り組みを行い、消費の拡大を目指して地産地消を進めていきたいですね。
また、林業は元から大きなシェアを持っており、その主力たる地場資源のカラマツ材の付加価値を高めることが必要です。水産業は、ウニや昆布などの栽培漁業を展開していきます。
この他、昨年の台風10号の被害で、文化センターや図書館が全壊し、使用できない状態なので、教育・社会教育の充実のためにも、早急に再整備を行いたいですね。
21世紀のマチづくりをしていくためにも、これらの大課題を克服し、私自身が責任を持って頑張らねばならないという強い責任感があります。

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