建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年6月号〉

interview

「市民と共に語り、共に考え、共に行動する」ことが私の基本理念

稲作とITをマチづくりの柱と位置付け、地域を振興

北海道深川市長 河野 順吉 氏

河野 順吉 かわの・じゅんきち
生年月日:昭和13年3月30日(満66歳)
最終学歴:北海道立深川農業高等学校卒業
現在の主な役職: 深川市長(平成6年10月から現在3期目)
北海道市長会副会長
北海道高速道路建設促進期成会副会長(会長知事)
道央圏地域整備展開構想推進協議会会長
(財)北海道地域活動振興協会理事長
過去の主な役職: 深川市議会議員(連続7期当選)
北海道社会教育委員
深川市議会副議長
賞:北海道社会貢献賞受賞(昭和51年2月17日)
北海道産業貢献賞受賞(昭和57年7月1日)
北海道深川市は、北海道の中央に位置し、道内有数の良質米生産地として、さらに交通の要衝として発展を遂げてきた。河野順吉市長は、現職に就任してからマチづくりの先導役を担い続け、今年で10年目を向かえた。これまでの深川のマチづくりを述べるとともに、河野氏がマチづくりの基幹として位置付ける「ライスランドふかがわ構想」、道内では先駆的なマルチメディアへの取り組みなどについて語ってもらった。
――市長に就いて、約10年間が経ちますね
河野
早いものです(笑)。これまでの政策については、後世の評価に託したいと思いますが、私自身は悔いのない取り組みをしてきたつもりです。市長就任以来、「市民の皆さんと共に語り、共に考え、共に行動する」ことを基本理念として施策を進めてきました。これは、今日の行政の基本姿勢として相応しいと思います。
また、そうした「人」との出会いによって、私は支えられていると思います。市長会での出会いや青年団での出会いなど、一つ一つに思い出深いことが多く、私の財産となっています。
――平成16年度のマチづくりについては、どのように進めますか
河野
市政の目標である「市民とともに創る住みよいまち深川」の実現を目指し、様々な事業を展開していきます。基本的な考え方としては、市民・企業・団体との協働を推し進め、新規就農や就業機会の創出、産・学・官の連携により、活力ある地域づくりを推進します。
また、市立総合病院の改築など、保健・医療・福祉の連携を図ることや、情報化をさらに推進し、電子自治体実現のための基盤を積極的に活用していくつもりです。もちろん、持続可能な財政基盤の確立を目指し、行財政改革にも取り組んでいかなければなりません。
――特に、基幹産業である農業への取り組みは重要ですね
河野
深川の農業は、石狩川と雨竜川により形成された広大な低平地に広がる肥沃な土壌と、内陸性の恵まれた気候条件のもとに、水田を主体に畑作、野菜、果樹、畜産など多様な農業を展開しています。特に水田は、北海道を代表する稲作地帯として、良質良食味米の主産地として高い評価を受けています。
しかし、近年の農業をとりまく環境は、輸入農産物が増大し国際化が進み、国内農産物価格が低迷するなど、大変厳しい状況です。また、bseや食品の偽装表示問題などから、食の安全性確保も重要な課題です。
一方、生産者においては、経営の先行き不安などから後継者不足や高齢化が進み、農家数も大きく減少をし、専業農家が主体の本市にあっては、担い手への農地集積と大規模経営によるコスト削減などが急務となっています。
しかし、あくまで深川は農業のマチです。厳しい時代だから『大変だ』と騒ぐだけではなく、むしろ農業が基盤の市長として、これから輝く時代が来るという自負を持っています。
今後も、食料の安定供給を図りながら魅力ある農村を確立し、消費者ニーズに沿った安全で良質な売れる農産物の安定生産と、ゆとりある農業経営の実現を目指します。そのために農業者自らの創意工夫や、経営感覚に優れ、時代の変化に対応できる担い手の育成確保に努め、環境に調和した農業、活力ある農村づくり、農業の情報発信に力を入れていきたいですね。
――その象徴的な取り組みが、「ライスランドふかがわ構想」ですね
河野
そうです。この構想は、「こめのまち深川」のイメージをマチづくりに生かすもので、特性を生かした「4つの里」を中心として多角的な地域交流を促すものです。
地域の総合的な情報を発信する拠点施設として、平成15年7月にオープンした道の駅「ライスランドふかがわ」では、深川の持つ魅力を多くの利用者などにprするために整備しました。この施設により、深川の農業を広く普及させていきたいものです。
――マルチメディアへの取り組みも積極的ですね
河野
「ライスランドふかがわ構想」とともに、マルチメディアを通した「ふかがわ・愛メディアシティ構想」への取り組みは、深川市のマチづくりの支柱と考えています。
その取り組みは、平成8年度に策定した「ふかがわマルチメディア推進基本構想」に始まります。これに基づき、平成10年度から平成12年度にかけて、自治体ネットワーク施設整備事業、地域イントラネット基盤整備事業など、総務省の補助事業を積極的に活用しながら、地域公共ネットワークの整備に取り組んできました。
また、平成13年度から平成15年度にかけて、総務省が実施した「電子自治体推進パイロット事業」に、将来の電子自治体構築を先取りした全国9自治体の一つとして、北海道では唯一の自治体として参加しました。
――北の情報発信基地という地位を固めつつありますね
河野
これまで狭い領域にとどまっていた地域の活動領域は、ITによってネットワークを通じて飛躍的に拡大し、地理的な制約を超え、他の地域との直接的な交流が可能となります。従来の受け身の姿勢から、積極的に情報を発信し、地域の境を超えて繋がりや交流を求め、豊かな地域資源と多様な発想により、物や人の流れをこれまで以上の規模において実現できるはずです。その意味でも地域の将来を切り開くツールの一つとして、ITを活用していきたいものです。
――一方、市立総合病院の改築も進んでいるようですね
河野
改築規模は、地下1階、地上6階、塔屋1階で、病床数305床、17診療科を予定しており、外来患者数は1日当たり1,000人を想定しています。改築工事は、平成14年12月に着工して以来、順調に進捗しており、この10月には建物全体が完了します。その後、試運転・調整などに2ヵ月程を要して、12月末に竣工となる運びです。
そして、およそ5ヵ月程の移転準備期間を設け、病院スタッフによる各種医療機器、設備などの習熟、安全性を確保した患者移送、機器備品の搬送を経て、来年6月には開院する予定です。
医療環境については、居住性・機能性・安全性・経済性の調和に配慮した設計となっており、患者の立場に配慮した医療環境として、来院者に分りやすく、安心できる病院を目指しています。ぜひ、この市立病院が深川市だけでなく、北空知地域の中核病院としての一翼を担う施設にしたいものです。
――来年に期限が迫っている市町村合併の準備は、どのような状況ですか
河野
北空知地域では、1市5町(深川市・妹背牛町・秩父別町・北竜町・沼田町・幌加内町)で、「北空知地域づくり検討会」を組織し、合併議論を進めてきました。しかし、最近では沼田町が離脱を表明しました。そのため、5月10日に沼田町を除く1市4町で進めることを意思確認しました。5月中には、各市町が議会での決議を得て、6月から「法定合併協議会」として出発していく考えです。
深川市ではこれまで、市町村合併に関する冊子を全戸に配布したり、「ふかがわ市民会議」では、市町村合併をテーマに開催するなど取り組んできました。先頃、市内全世帯を対象に実施した「法定合併協議会の参加に関するアンケート」の結果では、回答者数4,530世帯の内、67.2%の世帯から「『法定合併協議会』に参加し、市町村合併の議論をすべきである」との回答がありました。
それに基づき、「法定合併協議会」で合併の論議を行い、情報を住民に提供し、住民主体で合併の是非を判断していただきたいと考えています。
――今後のマチづくりの展望は
河野
やはり、市民が深川に住んでいて良かった、これからも住みたい、あるいは他地域の人達が深川に訪れてみたいと思うマチづくりを進めなければならないと考えています。そのためには、今後とも初心を忘れず、「市民の考えを聞く」というスタンスに徹してマチづくりを進めていくつもりです。またこれが、深川市の第四次総合計画の「市民とともに創る住みよいまち・深川」というマチづくりの未来像なのです。
景況の厳しい時代ですから、市民の力を活かすために、なんでも行政に任せるのではなく、市民もマチづくりにどう貢献できるのか、行政と一緒になって行うという気持ちを持ってもらい、逆に、行政は市民に理解を求めていく姿勢が必要だと思います。

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