建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年6月号〉

interview

留萌川の洪水対策の要となる留萌ダム

留萌市を洪水から守り水道用水を確保

北海道開発局留萌開発建設部 留萌ダム建設事業所長 箱石 憲昭 氏

箱石 憲昭 はこいし・のりあき
本籍地 岩手県
生年月日 昭和38年9月28日(40歳)
昭和 61年 3月 北海道大学工学部土木工学科卒業
昭和 61年 4月 建設省中部地方建設局企画部企画課
昭和 62年 4月  同 岐阜国道工事事務所調査課
昭和 63年 4月 栃木県土木部河川課
平成 元年 4月  同 都市計画課
平成 2年 4月 建設省土木研究所ダム部ダム水工研究室研究員
平成 5年 7月 建設省関東地方建設局宮ヶ瀬ダム工事事務所
調査設計課長
平成 7年 4月  同 河川部河川調整課長
平成 8年 4月 通商産業省資源エネルギー庁公益事業部
開発課課長補佐
平成 10年 4月 建設省土木研究所ダム部水工水資源研究室
主任研究員
平成 13年 4月 国土交通省国土技術政策総合研究所企画部企画課長
平成 15年 4月 国土交通省北海道開発局留萌開発建設部
留萌ダム建設事業所長
昭和63年に約140億円もの損害を与えた留萌川の氾濫は記憶に新しい。その時留萌市の都市機能は数日間にわたって完全に麻痺した。このような事態が再び起こらないように洪水を調節し、新たな水源を確保する留萌ダム。暮らしの安全と安心を確保する上で留萌ダムの存在は大きい。
――このダムの事業目的は
箱石
洪水の調節と、流水の正常な機能の維持、留萌市の水道用水の供給といった3つの目的を持つ多目的ダムです。
――過去の氾濫による被害状況は
箱石
留萌川は、過去に何度も氾濫した歴史があります。昭和59年から留萌ダムの実施計画調査を行っていたの ですが、63年には留萌市街の3分の1が浸水するという過去最大の洪水があり ました。幸いなことに人的被害は無かったのですが、被害額は約140億円にのぼり、市民生活に大打撃を与えました。道路・鉄道・工場・公共施設等が浸水し、留萌市は一時陸の孤島と化してしまったほどです。
これを受け、平成元年度に留萌ダム建設事業に着手しました。また昭和63年度から平成4年度まで激特事業(直轄河川激甚災害対策特別緊急事業)により、市街部の河川改修が実施されました。河川改修と現在建設中の大和田遊水地・留萌ダムによって、63年当時の洪水では守れなかった市街地を浸水から守ることが可能となります。
――水道水の供給については
箱石
留萌川の流域は、全域が留萌市内で完結しており、ダムの建設地も留萌市内で、水道の供給地域も留萌市が対象となります。現在は隣の増毛町を流れる川からの取水に依存している状況です。昭和55年と57年には水不足で夜間給水制限を余儀なくされたこともあり、留萌市として新たな水源が必要とのことでダム事業に参加していただいています。
――ダムの概要は
箱石
型式は一般的な中央コア型ロックフィルダムです。ダムサイトの地質に最適で、安全性・経済性の面からこの型式を採用しました。堤高は41.2m、堤体積は1,225千F、総貯水容量は23,300千m3で、水道は日量1万tの取水量を予定しています。
――施工上の特徴は
箱石
ダムの基礎岩盤が、乾湿を繰り返すとボロボロになる「スレーキング」を起こしやすい性質のため、掘削したあとに出来るだけ早くモルタル吹き付け等を行っ てスレーキングを防止しなければなりません。そのため、施工の迅速化とコスト縮減を兼ねて、仕上げ掘削にツインヘッダーという機械を導入しています。これ はバックホーの先端に回転する削岩機を取り付けたもので、すばやく仕上げ掘削を行ってスレーキング対策を行うことが可能です。
――残土処理はどのように行っていますか
箱石
原石山から発生する表土は付替道路の路体盛土として利用しています。また、ダムサイトの掘削土は一部を堤体のコア材として利用するほか、付替道路の路体 盛土や堤体上下流の埋め戻し材として利用します。また、ロック材よりも若干性能の低い材料も活用できるように堤体の設計を見直してトランジションゾーンを設け、原石山から発生する廃棄岩の量の抑制を図っています。
――施工上の自然環境への配慮は
箱石
ダム近辺は自然が豊かなところで、多種多様の生物が生息しています。生態系への影響を考慮して夜間工事は原則行わないようにしていますが、グラウト工事などでどうしても作業が夜間に及ぶ場合もあります。その際には現場の照明は必要最小限とし、かつ虫が集まりにくいナトリウム灯を用いています。また、作業終了後には照明付近に集まった虫の死がいを掃除してもらっています。これは虫を餌にする別の生物が集まることで生態系を攪乱しないようにするためです。
――このダム事業に対する地域の反応は
箱石
昭和63年の洪水災害の記憶から、ダムの必要性についてはみなさんに理解していただきました。ただ、ダム建設地のチバベリ地区に入植し、営農してきた人々は、開墾に当たって並みならぬ苦労があったとのことですから、そこに敬意を表して、付け替え道路の橋名には入植した初代の人々の名前を頂き、橋名プレートに残させて頂くことにしました。原野だったところを切り拓き、生活してきたのですから、土地に対する思いも一方ならぬものがあることでしょう。
――地元でのダムの多目的利用の計画は
箱石
ダムの堤体の下流側に、土を埋め戻すことから平らな広場ができます。その広場を公園として活用したいという要望があり、市といっしょに計画を進めようと考えています。また、市等と連携して市街地から留萌ダムまでを結ぶ留萌川沿いのサイクリングロードを整備する計画もあります。
――試験堪水の様子が見られるのは
箱石
平成20年の秋頃を予定しています。雪解け水の量が年間の割合で占める割合が高いので、大体雪解けで満水になると思います。
――ところで、最近は様々な公共事業の分野において、アウトカム指標が提示されますが、留萌ダムについてはどう評価できるでしょうか
箱石
留萌ダムは平成13年に策定された留萌川水系河川整備計画に位置づけられています。この計画では、留萌ダム・大和田遊水地・河川改修により、既往第2位の洪水である昭和56年8月洪水と同規模の降雨が発生しても、全川で氾濫が起こらないようにするとともに、特に下流の市街地においては、既往最大洪水である昭和63年8月洪水規模の降雨が発生しても氾濫が起こらないようにするとしています。
つまり、留萌ダムは、大和田遊水地や河川改修と相まって、昭和56年8月洪水時の氾濫面積が367ha、浸水家屋数が220戸だったのをそれぞれゼロにし、昭和63年8月洪水時の氾濫面積が1,290ha、浸水戸数が3,376戸だったのをそれぞれ340ha、34戸に減少させることとなります。。
留萌ダム建設工事
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