建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年5月号〉

interview

誰もが安心して暮らせる住まいの実現を目指して

新時代を迎えた住宅政策

北海道建設部住宅課長 福田 聖治 氏

福田 聖治 ふくだ・せいじ
97年 建設部まちづくり推進室まちづくり企画課長補佐
00年 同主幹(砂川市派遣)
02年 建設部住宅課長
高度経済成長期に次々と建築された公営住宅も、今や生活レベルの向上に伴い、全国で全面的に更新の時期が来ている。厳しい寒さの中で、道民の生活を守る道営住宅も例外ではなく、全道で建替えや改善が進められている。北海道建設部住宅課の福田聖治課長に、道営住宅の今後のあり方について、伺った。
▲グリーンコート花川団地(石狩市)
▲苗穂第二グリーン団地
(札幌市東区・管理戸数=320戸)
▲錦岡団地(苫小牧市)
▲光星団地2・3と札幌市営地下鉄駅
(札幌市東区)
▲季実の里B団地、
屯田兵により開拓された“屯田地区”
(札幌市北区)
――近年は生活スタイルが多様化していますが、公営住宅の果たす役割や、それに対する道民の要望も変化しているのでは
福田
人口減少社会が間近に迫り、本格的な少子高齢社会への対応や環境負荷の少ない循環型社会の構築が求められています。そのため、身近な生活環境の重視や高齢者に配慮した福祉環境の整備など、住まいに対するニーズもより多様化してきており、特に本道が有する広大な大地、積雪寒冷な気候条件、独自の歴史と文化、豊かな田園、自然環境といった地域特性を生かしたまちづくり、すまいづくりが求められています。
また、近年の経済と社会情勢は、全国的には設備投資が増加し個人消費が上向いているなど明るい兆しが見受けられるものの、本道の地域経済や雇用、地方財政となると、依然として厳しい状況にあります。
こうした状況から、道としては地域の暮らしを支える社会資本整備も、事業の重点化を進め、「選択と集中」による効率的・効果的な事業執行に取り組むこととし、その基本方針にしたがって、住宅施策も北海道第8期住宅建設五ヶ年計画に基づき、子供からお年寄りまで誰もが安心して暮らせる活力ある地域社会の実現に向けて、着実な推進を図ることにしています。特に、いくつかのポイントを定めて重点的な取組みを進めています。
――どのようなポイントに重点を置いていますか
福田
一つは重点プロジェクトの推進で、安心居住推進プロジェクトを進めています。これは加齢その他の事情で、健康・身体状況が変化しても住み続けられる住まい、あるいは介護が必要になった時にも、在宅での生活が可能な住まいが求められているので、ユニバーサルデザインの視点の導入によって、その実現を目指すものです。
具体的には、道営住宅の設計指針などを見直し、平成16年度から設計する全ての住宅整備に反映させ、さらには手引き書を作成して市町村や民間事業者に対しても普及を図ります。
道営住宅においては、3つのテーマを基本性能として具体的なプランを作成します。その一つは「あらかじめバリアを除いたシンプルなつくり」であり、二つ目は「在宅介護にも配慮した暮らしやすい部屋の確保」で、次は「多様な住まい方に対応できる柔軟性への配慮」です。
――プロジェクトは他にもあるのでしょうか
福田
まちなか居住推進プロジェクトも進めています。これは空洞化の進展した中心市街地の活性化対策のひとつとして、まちなかににぎわいを復活させ、高齢者などにとっても快適に生活できる場にしようというものです。
平成14年度に、市町村と道が共同で「まちなか居住推進協議会」を設置し、まちなか居住の必要性や住宅供給促進方策のほか、まちづくりや福祉施策など関係分野との連携などについて意見・情報交換や検討を行ってきたところです。
道としては、協議会での意見などを踏まえ、平成15年度に市町村向け「まちなか居住推進の手引き」を作成し、今後、広く普及を図るなどの支援に努めます。
――プロジェクト以外にも重点ポイントはありますか
福田
住宅ストックの有効活用という政策テーマがあります。住宅の長寿命化とストック重視の観点から、道営住宅では計画的な建替えや、バリアフリー化を行う高齢者向け改善事業などに加えて、平成12年度に制度化された全面的改善事業、つまり中高層住宅の構造体を残したまま、エレベーターを設置するなど、設備を新築並みに改善する事業を取り入れるなど、良質な住宅ストックの形成を推進しています。
また、少子高齢社会・環境重視型社会への対応も重要ポイントで、高齢者などが安心して生活を営むことができる居住環境づくりを進めるため、保健・医療、福祉サービスと連携したシルバーハウジング・プロジェクトを推進しています。
その他、次世代の環境を守るため、「省エネ」「資源の有効活用」「地域との調和」などを基本とした「北海道環境共生型公共賃貸住宅整備指針」を作成し、指針の普及啓発に努めながら、自らも環境共生型公共賃貸住宅の整備を進めています。
――公営住宅供給が盛んになり始めた昭和30年代当時とは、考え方も様相も住宅レベルも格段にレベルアップしてきたわけですね
福田
住宅の充実は、生活の豊かさを実感するために不可欠な条件です。住んで良かったと誇りに思えるようなまちづくり、すまいづくりを目指し、住宅行政の推進に努めていきますので、皆様方のご理解とご協力をお願いしたいと思います。

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