建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年1月号〉

interview

特集・わが国の文教施設整備最前線

施設の利用状態をデータベース化し、トータルマネージメントを実現

東北大学施設部長 新保 幸一 氏

新保 幸一 しんぽ・こういち
昭和 31年 生まれ
昭和 54年 3月 北海道大学工学部卒
昭和 58年 4月 管理局教育施設部
昭和 59年 7月 官房文教施設部
平成 7年 4月 徳島大学建築課長
平成 9年 4月 東京大学整備計画課長
平成 11年 4月 官房文教施設部技術課補佐
平成 11年 7月 助成局施設助成課補佐
平成 14年 1月 官房文教施設部技術課監理官
平成 15年 4月 東北大学施設部長
塩釜港湾・空港整備事務所は仙台塩釜港と石巻港で、ハード面・ソフト面から、この地域ならではの多面的な整備を行っている。同事務所の「一石三鳥の港湾整備」を新保浩司事務所長に伺った。
▲片平キャンパス北門
――東北大学各地区の概要からお聞かせ下さい
新保
東北大学は創設が明治40年で、東京大学、京都大学に続く3つ目の旧帝国大学として創立されました。文系・理系を網羅した総合大学で、キャンパスは市内片平、川内、青葉山、星陵、雨宮にあります。
片平地区は旧帝大発祥の地で、現在は本部と研究所の4施設があります。学部は全てが移転しました。川内地区、青葉山地区は、昭和40年代に移転したキャンパスです。川内は主に文系の学部で、青葉山には工学部、理学部などがあります。星陵地区には附属病院があり、現在は医学部、歯学部、保健学科などがあります。雨宮地区には農学部がありますが、現在は、キャンパス移転構想に基づき、移転対象となっています。
主要施設は、仙台市内のこれら5キャンパスです。
――片平キャンパスについては
新保
片平地区は、元は本部キャンパスだったのですが、現在は本部、研究所を中心とした地区になっています。
通常は特定の研究所の専用建物ではなく、総合研究棟として建築しますが、現在整備が進められているナノスピン総合研究棟については、電気通信研究所の実験を主に行います。工事は、補正予算で行われるので期間が限られていますから、完成を来年3月に間に合わせるように進めています。
このように、片平キャンパスはいわゆる研究所が中心で、ナノ・スピンも内部はほとんどがクリーンルームなどで、先端研究の建物になっています。
――青葉山キャンパスについては
新保
青葉山は南が工学部、北は理学部が中心となっています。薬学部は北東にあります。現在は工学系総合研究棟の新営のほか理学部の建物の改修工事をシリーズで進めています。40年代の移転の時期に建設された建物が、概ね30年を迎え大規模な改修の世代になっているのです。移転の時期に集中的に造りましたから、集中的に改修時期にさしかかったわけです。
――100年建築が実現出来るような大規模な改修工事になるのでしょうか
新保
そうですね。単なる化粧直しではなく、耐震補強と設備の全面更新をセットで行います。当然外装や内装も替えていきますので、かなり本格的なものになります。外観は大きく変えませんが、サッシを全部取り替え、内外装は全て更新する大改修です。
――改修にあたっては耐震補強も行うのですか
新保
特に仙台は、今年大きな地震が2回も起きたことから、耐震補強への関心が高いですね。今回は大学に大きな被害はなかったのですが、地震対策への関心は一層高まり、補強工事の順番を待っているところもあるので、急いでいます。
――今後は施設の管理というものの重要性も増してきますね
新保
本学としても、まずは組織作りへの対応をしていく必要があります。とは言え、医学部や研究所などもたくさんある大組織ですから、まずは学内でマネージメントについての考え方を理解して頂くことが第一です。
その取り組みのひとつとして、施設の利用状態のデータベース化を進めています。これまでは施設台帳に、研究所の平面図などの記録を取るかたちでしたが、それを全てデータベースにして、実際の使用状況を入力し、トータルマネージメントを行います。要するにスペースマネージメントの武器としてデータベース化するわけですね。
そこで、片平のある研究所でテストランをしているところです。そうすると、新しいCOEがスタートするときに、どこの建物をどうやりくりすれば良いかが分かります。既存の建物でスペースをやりくりすれば、今までの台帳ではなかなか解決できなかった問題も、データベースで利用効率を上げることができるのです。片平でのテスト結果が良好なら、他のキャンパスにも適用していこうと考えています。
――法人化すれば、独立採算となりますが、大学施設への部外者による利用に課金する考えは
新保
これまでにも、講堂をはじめ学内の利用は行っていますが、法人化に向けては、さらに組織として具体的に何ができるかを考えていくことになると思います。料金徴収することは目的ではありませんが、施設を有効に利用してもらうことは考えています。
ホールや会議室などは、潜在需要がかなりあると思います。また、日曜日に駐車場が空いているので、その利用についてもいろいろ提案があります。
これまでの施設部は、専ら建設を行うのが業務でしたが、これからは既存の建物を上手に使う計画の立案も重要になります。

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