建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年3月号〉

interview

通年型観光の好条件をバネに、農業と観光を連携

留寿都銘柄の農畜産品の商品力と、レジャー施設の集積でパワーアップ

留寿都村長 澤 宣彦 氏

澤 宣彦 さわ・のぶひこ
昭和 7年 1月 13日生まれ
昭和 29年 3月 北海道大学農学部卒業
昭和 29年 6月 北海道日高支庁産業課勤務
北海道根室支庁長、北海道教育委員会教育長、
学校法人静修学園高等学校理事長などを経て
平成 9年 4月 留寿都村長就任
ルスツリゾートで有名な留寿都村は、澤宣彦村長による1期目の村政が終わろうとしている。農業と観光を中心とした地域振興を目指す、沢村長の、今期の自己評価と今後の地域振興に向けての戦略などを伺った。
――村長として、1期目の任期をほぼ勤め上げましたが、どう自己評価していますか
平成9年に、村政を預ってから今日まで、村民の皆さんの信頼を心のよりどころとして、人間性豊かな村政の推進を心がけ、村の可能性を追求しながらひたすら村民福祉の増進に微力を尽くしてきました。
就任早々、開村百年記念事業など、各種イベントの実施や第4次留寿都村総合計画の策定をはじめ、21世紀を展望する村づくりの基礎となる施設に着手してきました。
公共下水道の建設、留寿都高の改築、全小学校グラウンドの改修、村民総合運動場の改修、村営住宅31戸の移転改築、消防庁舎の移転改築など、多方面にわたる政策の遂行に全力疾走してきました。
 村の発展のために貢献できればと、小人数体制で職員には大変な無理を強いましたが、議員各位のご指導ご支援と職員のご協力を頂き、当面、急がねばならない課題のほとんどを成し得たという成就感をもつことができました。
――道教育長と村長との立場の道いをどう感じましたか
確かに、私は35年間、道職員として勤務してきましたが、アナト−ル・フランスは、「一つの生涯に入るためにはその他の生涯において死なねばならぬ」との格言を残しました。また、栄西は「臨済録」で、「随所に主と作れば、立処皆な真なり」と残しました。
これらの言に従い、私はいつ、いかなる状況下にあっても、自分が置かれている立場において、全力を尽くすように努めているので、立場の違いを思うことはありません。
ただし、常に住民と身近に接し、住民生活に直結している第一線の行政に携わる者は、とかく当面のカンフル剤的な施策を選択しがちになるので、常にこれを自戒し、村の未来のため、長期展望に立って実施すべき施策事業を、たとえ人気がなくとも実行するよう心掛けてきました。
――4次総合計画では、留寿都村の未来をどう描いていますか。
「留寿都村」は、明治30年に、当時の虻田村から分離独立して、自治行政の第一歩を踏み出して以来、一世紀余にわたる先人の苦闘の積み重ねにより、留寿都銘柄として品質・食味が高く評価される畑作・園芸特産物を供給する水準の高い農業を築き上げて来ました。
一方、道内屈指の規模を誇るスキー場やレジャー・ランドが立地し、海外を含めて多くの観光客が訪れる国際的リゾート地としての発展を見ています。
そこで、21世紀を迎えた今日、豊かな自然と肥沃な大地に根ざした村の優れた可能性を伸ばし、新しい時代の飛躍的な繁栄を確かなものとするため「第4次留寿都村総合計画」では、名峰羊蹄山の麓に広がる「夢・はぐくむ彩りの丘・留寿都」を、村づくりの目標に掲げながら、村民みんなで知恵を出し合い、汗を流しなから行政と民間との協働によって、村民が生き生きと暮らし、「安らぎ」と豊かさを実感できる希望と活力に満ちた豊かな農業と観光の村として描き出しています。 今後、この総合計画に即して、21世紀と共に歩む村の開村二世紀の発展に努めていきます。
――基幹産業の農業と観光の振興について、具体的な戦略は
農業は、観光産業との結び付きを強めなから、食味・品質の優れた留寿都銘柄の特産農畜産物の生産振興と、付加価値を高める高度加工を促進して、収益性と安定性を高める一方、農村生活環境の一層の美化向上をはかる方針です。
 観光は、全国有数の雪質の良さを誇る大規模スキー場と道内最大のゴルフ場・レジャーランドが立地する国際的な「ルスツ・リゾート」と連担する観光拠点として、温泉保養施設の開設や郷土資料館、観光物産センター、ハーブ・ガーデンを整備した「カントリ−・パーク」、河川公園、森林公園、観光農園、観光牧場、自然体験学習施設・キャンプ場などを整備し、滞在型、体験型観光の振興をはかっていこうと考えています。
――昨年、温泉の掘削に成功しましたが、その後の活用法は
温泉に対する村民の皆さんの要望も多いことから、昨年暮れに留寿都温泉保養施設を開設しました。
この温泉は、ナトリウム塩化物泉で、神経痛、関節痛、疲労回復、皮膚病、消化器病などに効果があるとされています。
後期高齢者には無料としていますので、豊かな自然に恵まれた景勝地で、村民の皆さんの「健康ふれあい」と「憩い」の場として、末永くご愛用して欲しいと願っています。
――2期目に向けては、どんな政策の展開を考えていますか
私としては、広く村民の皆さんの力を結集し、村民の声が生きる村民本位の行政を行う方針です。
一方、村政の合理化を徹底し、ムダの無い行政を進めます。また、常に庶民の風が吹き抜ける役場にしていきます。
そして、地域振興における重点目標としては、表情豊かな農業の展開を考えています。
農業は古くて新しい産業であると同時に留寿都の基幹産業です。そこで、農業の基盤整備をすすめるとともに、消費者のニーズを先取りした高品質な農畜産物の生産をはかり、足腰の強い経営を育てます。
特に、馬鈴薯、アスパラガス、大根などの特産物の付加価値を高め、地域経済に貢献できる仕組みをつくります。
観光については、「知恵ともてなしの観光の推進」です。
観光は裾野の広い産業です。さいわい留寿都には、ウインター・スポーツのフィールド、夏には、レジャーランドと通年観光の条件が整っています。
また、我が国の代表的童謡「赤い靴」ゆかりの母思像もあり、指圧で有名な浪越徳次郎さんの胸像もあります。
これらのモチーフを生かしながら、温もりと安らぎを提供する、もてなしと知恵で、四季折々の観光を進める方針です。

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