建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年3月号〉

interview

北海道のために道民は何ができるかを考えるべき

高齢者対応の道路整備が必要

自民党政務調査会北海道開発委員長 岩崎純三 氏 (参議院議員)

岩崎純三 いわさき・じゅんぞう
大正13年5月5日生まれ、日大法文卒。昭和52年初当選、4回当選。
沖縄開発庁次官、総務庁長官などを歴任
北海道開発は、21世紀の省庁再編までは北海道開発庁によって進められてきているが、それを政治的側面からサポートしてきたのが自民党政調会の北海道開発委員会だ。栃木県選出参議である岩崎純三委員長に、北海道の自律と開発に関する提言などを伺った。
――委員長は、選挙区は栃木県ですが、北海道開発にはどのようなイメージを持って取り組んでいますか
岩崎
北海道開発庁が策定した新しい北海道総合開発計画では、「国の内外に開かれた自立する北海道」、「恵まれた環境や資源を誇りを持って次世代に引き継ぐ北海道」、「多様な生活や文化を享受できる安全でゆとりある北海道」をキャッチフレーズにしており、これをもって北海道の将来的な理念としています。
これには私も同感で、これらの理念を踏まえた上で、「恵まれた資源や国土空間を生かした自立する北海道」「自然災害に強い安全な北海道」「地球規模の食料基地としての北海道」「北の国際交流圏の窓口としての北海道」「観光拠点としての北海道」「地方分権における道州制的モデルとしての北海道」と、具体的なイメージを持ちながら関わると同時に、地元の人々には、そうした地域づくりに、取り組んで欲しいと思っています。
――この北海道開発委員会の持つ、機能と役割についてお聞きします
岩崎
この委員会は、党政務調査会に設置されている10の地方委員会の一つです。北海道の地理的、自然的、歴史的、社会的な特異性に鑑み、その開発に関する政策審議を専門に行う機関として設置されたもので、毎年、北海道開発予算をはじめ、開発庁・北海道に関する事項について、各省庁に対応する部会に相当する役割を果たしています。
その代表である委員長には、必ず北海道外の議員が就任することになっています。
――北海道開発委員会が目指している当面の目標は
岩崎
まずは金融安定化による北海道経済の活性化と、苫東問題の早期決着を図ることです。苫東地域は、北海道にとってはもちろん、わが国にとっても大変貴重な土地であり、この問題については、私たちも政権党の政策委員会という立場で、その調整や方向付けにはかなり時間を割いてきました。昨年12月には、関係者間協議の上、苫東開発株式会社を清算し、国(北東公庫)、北海道、民間の出資により新会社を設立することとし、平成11年度予算政府案に、新会社に対する北東公庫の出資金を計上したところであります。
また、先にも触れましたが、98年4月に策定されスタートした「第六期北海道総合開発計画」を、予算その他の都合で滞ることがないよう、着実な実施を促すことも重要な課題です。
――戦後最悪の不況の中で、北海道にとって象徴的な出来事が北海道拓銀の破綻でした。この1年間、道民にとっては殊更に厳しい嵐が吹き荒れ、いまなお後遺症に苦しんでいます。北海道の自律に向けてどう取り組むべきでしょうか
岩崎
今日の時代の流れは地方分権、規制緩和にあります。これは、裏を返せば国と地方の役割分担を明確にするということです。したがって、自己責任を高める行政や議会での論議と意識、そして市民運動が盛り上がってくることが、必要です。そうした意識や気運がなければ、国民は自分たちが住んでいるまちに誇りを持つことができないということになります。
極論すれば、地方分権が進めば進むほど、住民たちが住む町を選ぶ時代になるでしょう。国内の大企業が、各国の税制を比較して有利な国を選び進出したのと同様にです。
特に北海道に関して言えば、行政も道民もともに自己責任を持って、自分たちが住んでいる町に対する参加意識を持って進んでいかなければ、一歩も二歩も足跡が遅れてしまうものと思います。
今や日本全体として地方自治体が、お国任せという発想ではなく競争の時代に入りました。したがって、かつてケネディが大統領就任演説で「国家が国民のために何をするかではなく、国民が国家のために何が出来るかを考えよ」と強調しましたが、この発想がなければ良い地域づくりも良い国づくりも出来ません。
そうした意識の転換、言い換えれば道民に意識革命をしていただき、すべての問題に関して自立できる北海道、その中で農業問題、工業問題、中小企業問題などに皆さんの知恵も借りながら、私たちも協力していきたいと思います。
――北海道にとって、看過できない大きな課題の一つに、北方四島の帰属問題があります。昨年の小渕総理の訪ロで北方領土問題は、解決に向けて一歩前進したと評価されていますが、この点についてどのように受け止めていますか。
岩崎
小渕総理が訪ロした際、エリツィン大統領から明確な回答は出ませんでしたが、それでも国境の線引きはしなければなりません。いま四島に住んでいるロシアの人々は、共に住んで暮らしていける地域にしてほしいとの願いを持っています。
ビザなし渡航を通じて、そうした意識が高まってきたものと思いますが、今回の訪ロによって、小さくはあるものの北方領土返還への着実な一歩を踏み出したのだと、私も思います。
――先に、ケネディ元大統領の演説を例に、道民が北海道のために何が出来るかの問いかけがありましたが、道民の中には税金を単に搾取されているものと感じている人もいて、社会貢献意識の低さも見られます。のみならず、自主財源が低いために、国税に多分に依存していることの自覚も低い。地域、国のために何が出来るかと考えさせるには、まずこの認識から変えていくよう促すことが必要では
岩崎
納税は国民の三大義務の一つですが、税金の使い方が国民の目にもわかるような、いわばディスクロージャーされた行政が展開されることが、政治と行政に求められる課題です。それがなければ、税に対する国民の意識が薄れることになるでしょう。

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