建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年11月号〉

interview

自然の宝庫・多摩地区の生態系に配慮した取り組み

国内初の超大断面二階建てトンネルをNATM工法を採用し、コスト縮減

日本道路公団 八王子工事事務所長 角田 直行 氏

角田 直行 すみだ・なおゆき
生年月日 昭和32年6月25日
本籍地 岡山県
最終学歴 大阪大学(大学院)工学研究科 昭和59年3月卒
昭和 59年 4月 日本道路公団入社
平成 3年 2月 東京第一建設局横浜工事事務所調査課長
平成 6年 2月 東京第一建設局水戸工事事務所工事長
平成 8年 5月 本社計画部計画第一課長代理
平成 11年 2月 東京第一管理局保全企画課長
平成 14年 5月 現職
日本道路公団八王子工事事務所は、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)と中央自動車道の一部区間の建設を担当している。施工にあたっては東京都内に残された数少ない自然の宝庫・多摩地区の生態系に配慮した取り組みや新たな工法を採用してのコスト縮減を行い、事業を進めている。ハード・ソフトの両面での多面的な取り組みを角田直行所長に伺った。
――事務所の業務概要からお聞きしたいと思います
角田
私どもの事務所は首都圏中央連絡自動車道と、中央自動車道の二路線を担当しており、圏央道の都内区間では、青梅ICから神奈川県の相模原IC(仮称)までの37qを整備しています。基本的には合併施工という形で、国土交通省相武国道事務所が道路本体部分の切盛土工と橋梁、トンネルを担当し、公団は舗装施設を担当しています。
青梅IC〜日の出IC間8.7kmのうち青梅IC側5.3kmには公団が用地及び、道路本体工事から担当、平成14年3月29に開通し、現在1日約8,000台のお客様に利用していただいています。
日の出ICからあきる野IC(仮称)(2.0km)の区間は国が本体部を整備している段階です。完成に応じて事業の引継ぎを行い、公団として造園工事、遮音壁の工事を順次進めています。
あきる野ICから八王子JCTの区間9.6qも、国が本体工事を進めています。進捗率は6割程度で、16年度供用を目指しています。その先の中央自動車道と圏央道が接続する八王子JCTは、公団が施工しています。八王子JCTを過ぎて2q南下した所には、八王子南ICがあり、17年度の供用を目指しています。現在はIC部分の橋脚を国が施工している段階です。
事務所の所掌としては、この他に東京都内区間と神奈川県内区間では、中央自動車道、国道16号、411号、20号という環状線と放射状の幹線道路がありますが、環状方向の交通需要が多くて渋滞が深刻です。中央道では改築事業を行っています。現道の20号の渋滞解消として並走する20号のバイパス事業を国で進めており、公団としては、これに接続する第2ICの立体化、接続事業を展開しています。
――路線ができる以前の状況とは、かなり地域は変わりそうですね
角田
うですね。首都圏全体、関東エリア全体のネットワークとして、環状道路が足りない状態です。首都圏には三環状九放射という計画があります。中央道、東名、東北、関越、常磐道などの放射状の道路があり、これらを圏央道、外環道中央環状道の環状道路で分散、導入を効率的に行うものです。多摩相模地域を見た場合も、我々が事業を行っている圏央道はその一翼を担うものです。
――すでに供用開始された地域では、利用状況や利便性に変化が見られますか
角田
かなりの効果が現れています。昨年3月に開通した青梅ICから日の出IC区間では、並行する国道16号の交通量が約1割減少しています。
また、青梅IC周辺道路の交通量が約2割減少するなど、生活道路としての機能が回復しています。
各々の交通量が減ることにより、車両の旅行速度は大幅にスピードアップされ、当然所要時間もかなり短縮が図られています。例えば、あきる野市と鶴ヶ島市間を通行する場合は16分〜53分の短縮の効果が出ています。
もちろん、整備によるメリットは、渋滞の解消、緩和という直接的な効果もありますが、事故を減少させる効果もあります。さらに、地域の活性化にも繋がっていきます。
最近の端的な例では、日の出IC近傍にイオングループが具体的に出店の計画をしているようですが、圏央道の開通という状況が加味されたのではないでしょうか。
――道路ができることによって新しい経済活動の場が発生するわけですね
角田
企業などの進出により、地域の労働人口を吸収するというメリットもあり、縁遠かったサービスを、地元の比較的近い地域で受けられるというメリットもあります。その意味では、経済効果とともに生活環境の改善効果も期待できると思いますね。
――施工にあたっての特色は
角田
青梅ICから日の出ICの間には、青梅トンネルがありますが、シールドマシンを用いず、国内では初の試みとして、超大断面のNATM工法で行いました。通常は上下線が平行した2本トンネル構造になるのですが、青梅市街地の街路の直下を有効に活用した上下線2階建ての構造となっています。それをシールドではなく、NATM工法で施工したものです。これによって、通常都市部で行うシールド工法よりも用地費を含めた総事業費が節減できます。
また、多摩川を渡る区間も、2階建てのダブルデッキトラス構造ですが、橋梁トラス部材についても、角形コラムという市販の一般建築用材料を使ってコストの節減を図っています。
その他、青梅IC〜日の出IC間についてはトンネルが全延長(8.7km)の約60%を占めているため、トンネルの走行環境の改善も試みています。壁面部分にはタイルを貼っていますが、上部を濃いグリーン、下部になるほど白く、変化するグラデーション処理を行いさらに側壁に照明を当てることにより、側方を際立たせ、平面線形をドライバーに見やすく、走行景観の快適さを演出しています。
この他にも、安全に視線誘導するため、路肩部の縁石に面発光体を設置して線形を分かり易くする工夫をしています。これが走行の快適性・安全性に繋がっていくものと考えています。
一方、多摩地区は都内に残された数少ない緑豊かな自然の宝庫ですから、できるだけ周辺生態系に配慮しています。法面部分とトンネル坑口の周辺部分には、極力その地域の自生種を植樹しています。周辺地域から採取した種をjhの緑化技術センターで苗に育てあげ、それを法面に帰していくのです。二世苗木には早期緑化を進めることにより、自然を復元していこうと努めています。
また、青梅ICのランプ内において、通常は造成するところを、もともとあった雑木林をそのまま残すようにしました。日の出ICでは、路面から流れ込んできた水を一時的に貯留する調整池を設けていますがそれを活用して、ビオトープの機能を持たせる構造にしています。
――区間によっては、トラスト運動を起こすなど、進捗が困難な状況もありますね
角田
圏央道の都内区間は自然豊かな地域を通過するので、植栽上の配慮や動物の種の保全ができる環境づくりなど、自然と調和する取り組みが必要だと思います。特に、この地域にはオオタカが生息しているので、現場ではできる限りの配慮をしながら施工しています。それを地域の方々に広く説明し、圏央道への理解を高め、さらには期待感を醸成できればと思います。そのためには、いろいろな広報手段や体験型フェアなどを年間を通じて計画的に実施し、皆さんに理解していただけるよう努力をしています。

中央道・圏央道の早期整備に貢献

●中央自動車道八王子JCT中(その2)工事/(株)大林組・東亜建設工業(株)・大木建設(株)JV

東京本社/東京都港区港南2-15-2
品川インターシティb棟
tel. 03-5769-1111

本社/東京都千代田区四番町5
tel. 03-3262-5102

東京土木支店/東京都千代田区神田須田町
1丁目23-2
tel. 03-3255-4115


●中央自動車道八王子JCT Gランプ橋(PC上部工)工事

本社/東京都新宿区津久戸町2-1
tel. 03-3260-2111


●中央自動車道八王子JCT Cランプ橋(鋼上部工)工事/駒井鉄工(株)・トピー工業(株)JV

本社/東京都台東区上野1丁目19-10
tel. 03-3833-5101



本社/東京都千代田区四番町5-9
tel. 03-3265-0111


●中央自動車道八王子JCT Bランプ第二橋(鋼上部工)工事/石川島播磨重工業(株)・(株)コミヤマ工業JV

本社/東京都千代田区大手町2-2-1 新大手町ビル
tel. 03-3244-5111



株式会社コミヤマ工業

東京本社/東京都新宿区大京町22 pjビル
tel. 03-3350-8511


●首都圏中央連絡自動車道下代継北地区遮音壁設置工事 ●首都圏中央連絡自動車道雨間地区遮音壁設置工事

社/埼玉県加須市志多見1361-1
tel. 0480-61-2358



信号器材株式会社

本社/神奈川県川崎市中原区市ノ坪160番地
tel. 044-411-2193



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