建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年10月号〉

interview

三月に首都圏中央連絡自動車道の1.5キロが開通

総合的なコスト縮減が課題

常総国道事務所長 田中 良彰 氏

田中 良彰 たなか・よしあき
生年月日 昭和27年11月21日生
出身地 新潟県
最終学歴 日本大学理工学部土木工学科
昭和 46年 千葉国道工事事務所採用
平成 4年 道路部 道路計画第一課 係長
平成 7年 建設本省 道路局 国道課係長
平成 9年 千葉国道工事事務所 工務課長
平成 10年 道路部 道路計画第一課長補佐
平成 13年 国土交通本省 道路局 地方道・環境課長補佐
平成 15年 常総国道事務所長
首都圏を環状に連絡する圏央道において、常総国道事務所が所管するのは茨城県内で、西は埼玉県との県境から、東は千葉県との県境に至る70.5キロ。道路整備に適した比較的平坦な丘陵地帯でありながらも、県内市町村道以上の道路整備率が全国でもワースト1であることから、地元住民からの圏央道の整備に対する期待が大きい。この3月には、いよいよつくば学園都市を取り巻く1.5キロが開通し、さっそく整備効果を発揮し始めている。管内を所管する常総国道事務所の田中良彰所長に、供用開始後の地域の様子や、今後の整備の進め方などを伺った。
▲牛久浦バイパスを上空から望む
――圏央道の整備は、関東圏だけでなく、首都圏の人々にとっても完成が待たれている重要な路線ですが、管内の進捗状況はいかがですか
田中
今年の3月29日に常磐道のつくばJCTから、一般国道6号牛久土浦バイパスのつくば牛久ic間1.5kmを供用しました。圏央道の供用に合わせての直接的なアクセスとなる国道6号のバイパスも、国道408号から学園西大通りまでの区間2.3kmを、同時供用したところです。
――この事務所が所管している区間は
田中
メインは首都圏中央連絡自動車道(以下圏央道)で、全体で300kmの計画延長のうち、当事務所で担当しているのは、埼玉県境から千葉県境までの70.5kmです。また、国道6号牛久土浦バイパスも担当しており、全体計画は15.3km、そのうちの約4kmを事業化しています。
圏央道は、極めて大規模な事業ですので、整備優先区間を絞り込みながら、事業効果が早く得られる手法を考えつつ進めています。
例えば、常磐道のやや西側に位置します、(仮称)つくばICから千葉方面側にある(仮称)江戸崎ICまで、今回の供用区間1.5kmを含む24kmを第一優先整備区間として、用地買収や工事を全面的に展開しています。今年度から始まる新しい五箇年計画の期間内の供用開始を目指しています。
その他の区間についても、設計などの進捗状況を見ながら平行する国道、あるいは交差する将来のアクセス道路となるような関連道路の整備状況、地域開発の進捗状況などを考慮して継続的に事業を進めています。
――所管区域の交通状況は
田中
放射方向の道路が、特に混雑しています。私たちが担当している、牛久土浦バイパスに平行する現道は、2車線しかない上に、それに平行して、JR常磐線があり、主要な駅が点在しています。
そのため、朝・夕は駅を利用する地域住民の通勤交通が、通過交通と輻輳する格好となり、速度は極端に落ち、主要交差点の通過時間もかなり長くなります。結果的に渋滞延長は1キロから、時にはそれ以上に及ぶ時間帯もあるのです。
そのほか、国道125号や国道294号、国道354号などにも都市部を中心とした交通渋滞の発生が見られます。
茨城県内の道路整備は、市町村道まで合算すると、道路延長が全国で第2位となりますが、整備率はワースト1なのです。その意味でも、道路整備は茨城県にとっては最重要課題の1つになっていると思いますね。
▲つくばJCT
――整備の進め方は
田中
筑波研究学園都市という国際都市と、田中国際空港を早く結ぶなど広域物流ネットワークの構築が優先課題です。(仮称)つくばicから(仮称)江戸崎ic間の整備と、県道のバイパス及び国道408号を使って田中までつながります。そこで、第1ステップとして、その区間が第一優先区間と位置づけられました。
空港のみでなく、最寄りのICから太平洋側の鹿島港などにも、短時間で到着できるようになります。
――常磐道以西については
田中
常磐道以西の猿島地域は利根川や中川で分断されていますが、埼玉県幸手市や久喜市等との地域的繋がりがむしろ強い地域ですね。通勤や経済交流にもそれらがうかがえます。
そのため、猿島地域の方々からは、圏央道によって是非とも東北道へのアクセス性を高めてもらいたいとの強い要望があります。
実際、このエリアは、東京に行くにも、東北方面に行くにも、東北道が便利ですが、並行する国道4号はかなり混雑しており、また東西方向の軸となるような道路がないため、東北道に早く圏央道を接続して欲しいという声は高いですね。
――3月に供用開始された地域の変化は
田中
圏央道の1.5km区間も、アクセス道路である国道6号のバイパス2.3km区間も、供用延長がわずかなので、極端に目立った変化は報告されていませんが、それでも二つの整備効果が見られます。
一つは、牛久周辺から常磐自動車道に乗り入れる場合に、谷田部ICと桜土浦ICとが利用可能ですが、東京方面に向かう場合、今までは学園西大通りを使い、そこから国道354号を通じてインターに乗るというルートが主流でした。その移動時間は30分弱でしたが、今回の供用区間を有効利用することにより、例えば国道6号のバイパスを一部利用し、そこから圏央道を通って、常磐道つくばjctを利用すれば、約10分強の時間短縮ができます。
同様に、水戸方面に行く場合でも、バイパスと圏央道を使うことによって10分程度の短縮効果が得られます。
一方、国道6号も、交通の流れが変化してかなりスムーズになっています。主要な交差点における渋滞長や交差点の通過時間がかなり短縮されています。そうした点で、着実に目に見える効果として現れています。
――地元自治体によるアクセス道路整備も重要ですね
田中
そうです。圏央道のICに直接アクセスする道路や、2次アクセス的な道路が整備されなければ、圏央道そのものの利便性が低くなります。のみならず、圏央道を軸として各自治体が計画している様々な地域開発も、道路のネットワークが構築されなければ、所期の効果を発揮できないという状況にあります。
圏央道の整備と一体となった、国道、県道、市町村道の整備を引き続き各自治体にお願いしていきたいと思います。
――圏央道の構造は
田中
全体の5割から6割が橋梁形式で、それ以外はほとんどが盛土形式です。他の交差道路とは、全て立体交差になります。整備するエリアは、相対的になだらかな地形で、丘陵地はあっても、若干、土をカットするくらいですから、地下構造となる地域は全くありません。
通行者にとっては、全区間にわたって開放感があるため、走行安全面では有利な構造になると思います。
車線数は片側2車線の上下4車線ですが、最近の趨勢としてコスト縮減と、初期投資の抑制によって相応の整備効果を上げるため、暫定2車線整備が一般的になっています。私たちも、それを念頭に置いて整備を進めています。
――コスト削減に向けて、他にどんな取り組みをしていますか
田中
先ほど紹介したとおり、高架橋構造が5割から6割を占めています。そこで、通常はメタル橋では桁が何本もセットされ、その上に床版が乗るのが一般的な構造ですが、できる限り主桁の本数を減らす少数主桁形式を採用しました。
これにより鋼重を減らすとともに、塗装の塗り替えも、桁の総面積が少なければ、それだけ少なくなりコスト縮減に寄与します。
また、事業のスピードアップにも力を入れています。その経済効果を定量的に算出するのは難しいところですが、いち早く一定の投資に見合った効果を提供することが大切だと思っています。
ICの形式についても工夫することとしています。国道4号や354号などの幹線道路との接続では、第二インターも立体構造で計画しているところを、当面は平面接続することで、工事費が大幅に縮減できます。
――桁をなるべくスリムにした場合、耐震性の問題が生じるのでは
田中
それは設計上、問題ありません。強度、耐用年数、品質も含めて、従前の構造物と何ら遜色がないか、むしろそれ以上のものとなります。
  特に、橋梁などは、今までは耐用年数が一般的に50年とされていましたが、最近では100年に延長されたことから、当然それに準拠した構造になっています。
――舗装は、道路公団が採用している雨水の浸透性が高いものになりますか
田中
そうです。コストは少し割高になりますが、トータルで考える必要があると思います。例えば、雨天時のスリップ等による事故によって損傷した道路付属物等の復旧工事に関わるコストに加え、事故渋滞や復旧工事に起因する渋滞による通行者の移動時間が長くなることで発生する不必要なコストなどを考慮すると、目先の経費にのみこだわらず、総合的なコスト意識を持つことが大切だと思います。
――所管区間のおよそ半分が盛土となると、資材リサイクルなども必要となるのでは
田中
確かに、全般的に土が不足しています。切土が少ししか得られないので、橋梁下部工の施工に伴う発生土を、必要に応じて改良し、盛土材として再活用したり、近傍の工事現場等で発生する、まとまった土を利用していく必要があります。
今後も、直轄事業のみならず県、市町村、民間まで含めて、発生土に関する情報交換を十分に行って有効活用を図っていきたいと思っています。
――用地買収では、いろいろと苦労するケースが聞かれますが圏央道では
田中
有り難いことに、管内は圏央道の早期整備を望む声が圧倒的に多く、協議が難航しているケースは少ないようです。計画に当たって、集落をあまり分断せず、家屋の移転も最小限に留めるよう工夫していることもあると思います。
地価が下落傾向にあり、また通過する地域の大半は農地ですが、後継者が不足している農家もあるなど、様々な要因があり、比較的スムースに用地提供を戴いている状況です。
――地域に望まれるインフラというのは、理想的ですね
田中
我々もこれまで、建設予定地の地域住民に、事業計画や、その効果などを、他の路線の事例などもまじえて説明し、ご協力を戴いてまいりました。
今回圏央道1.5kmとバイパス2.3kmを供用したことで、国道6号の荒川沖駅周辺などの渋滞が減っていることを、地域住民は実感しています。したがって、供用区間が延長され、さらに全線供用されれば、どれほどのメリットが得られるかは地域の皆様も容易に想像できるようになったと思います。
このわずかな区間の供用開始は、今後の大きなステップになったと思っています。

茨城県内の交通ネットワーク構築に貢献

●小池高架橋下部その2工事 ●阿見高架橋下部その5工事

水戸支店/茨城県水戸市泉町3-4-28
tel.029-224-5121

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