建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年10・11月号〉

interview

特集 わが国の文教施設整備最前線

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不断のメンテナンスにより100年建築を目指す

法人化後は施設管理部として一元管理体制へ

新潟大学施設部長 北島 弘公 氏

北島 弘公 きたじま・ひろむ
長野市出身
1964年 4月 信州大学施設課
1989年 4月 金沢大学建築課長補佐
1992年 4月 岡崎国立共同研究機構建築課長
1994年 4月 福井大学施設課長
1998年 1月 京都教育大学施設課長
2000年 7月 神戸大学建築課長
2002年 7月 新潟大学施設部長
日本の最南端である沖縄県は、多数の米軍基地や駐留施設を抱え、日本の国防拠点としての役割を果たしてきた。しかし、ただでさえ狭い領土を広範囲に占拠され、しかも高温少雨の厳しい気候から、本州のような経済構造は形成されにくい。反面、自然環境は南国特有のものがあり、本州には見られない天然記念物の宝庫で、観光資源としては世界に誇るものがある。そうした地域では、インフラ整備の意義も、観光産業支援にシフトしたものとなり、公共事業不要論と同じ土俵で捉えることはできない。沖縄総合事務局開発建設部の北島俊一部長に、沖縄の地域性と基盤整備の概況について伺った。
▲五十嵐地区
――新潟大学の主要キャンパスである五十嵐地区の概要をお聞かせ下さい
北島
新潟市の中心部である西大畑地区から、主要な学部が移転して整備されたのが五十嵐キャンパスです。1970年代前半から本格的に移転が始まり、82年の教育学部で移転が完了しました。敷地は新潟市西部の五十嵐地区59万7,645m2で、日本海の望める閑静な場所にあります。
学部は人文学、法学、経済学、教育人間科学、理学、工学、農学の7学部と、大学院として現代社会文化研究科、自然科学研究科など6研究科があります。建物は延べ床面積19万4,180m2で、学部校舎のほか、本部事務局、体育館、附属図書館、食堂などの福利更生施設、学生寮、国際交流会館などがあり、サッカー場や陸上競技場、野球場などの屋外施設も整備されています。
――旭町地区については
北島
旭町キャンパスは敷地17万192m2で、医学、歯学の2学部と大学院医歯学総合研究科、同学部の附属病院、脳研究所などがあり、建物の延べ床面積は17万8,357m2です。
――整備に当たって、新潟大学の地域的特色は
北島
キャンパスはかなり緑が多く、敷地そのものが比較的平坦です。キャンパスの雰囲気としては非常に良いものがあります。前任地の神戸では、かなりの傾斜地に建物を造りましたが、それと比較すると平地で緑が多く、学生にとっては非常に恵まれた環境です。
▲旭町・西大畑地区
――五十嵐・旭町キャンパスの施設整備状況と今後の計画は
北島
自然科学系の総合研究棟(生命・環境系)新営のT期、総合教育研究棟改修(A棟)、医学系校舎改修、理学系校舎改修(A棟)、(旭町)総合研究実験棟が今年8月までに完成しました。現在は病棟(軸U)、医学系校舎改修(U期)、ベンチャービジネスラボラトリーを進めています。
今後は総合研究棟(生命・環境系)のU期(SRC造6階建て延べ4,800m2、機器分析センター1,200m2も併設)の新営のほか、理学系校舎改修のU期(RC造3階建て延べ3,860m2)、総合教育研究棟改修の最終年次となるB、E棟(RC造4階および2階建て延べ5,090m2)などを予定しています。
さらに、今後設置を予定している文理融合型で、部局横断型の学内組織「超域研究機構」の受け皿として、新総合研究棟(src造7階建て延べ8,000m2)の整備も計画しています。今年機構内には、創生科学研究と社会貢献研究の2部門が発足し、これらの研究・交流・情報発信などのためのスペースを備えることになっています。
  また、現在進められている医歯学総合病院の再開発計画に伴う、中央診療棟、外来診療棟の整備も計画されています。
――佐渡島にも農学部の広大な敷地がありますね
北島
演習林で、面積は504万5,000m2です。新潟大学は9学部で、全体の面積は629万m2ですが、このうちの500万m2が農学部の演習林となっています。ここにはフィールド佐渡ステーションがあるのですが、昨年はここにログハウス(研究宿泊棟)を建設しました。2年次計画の1期目ということになります。
――大学が法人化しますが、現在、整備された施設の完成後の管理体制はどうなりますか
北島
今までは、どこの大学でも文部科学省に予算要求して、予算措置されたものを施設部が設計、積算し、現場管理まで行って完成させ、終わればその施設は各学部に引き渡されてきました。各学部には建築や電気、設備の専門家はいないので、学部の会計系が主に管理を担当していたのです。
しかし、これからは施設部も造るだけではなく、運営管理がメインの仕事になります。文部科学省もこれからの施設整備の在り方について、何年も前から調査研究協力者会議で議論をしてきました。壊れてから直すのではなく、常日頃から技術の専門家である施設部の視点で管理し、少しずつ事前に手を打っておけば、同じ建物でも長持ちさせられるわけです。
設備系の寿命が、仮に20年であっても、事前に手を打つことによって、50%増の30年に延長できれば、非常に経済的です。全て壊れてからまた造るとなると、さらに予算が必要になります。したがって、施設整備と運営管理を一体的に行う施設マネージメントを積極的に取り組むことと言う考え方ですね。
――キャンパス全体を施設部が一元管理するのですね
北島
資産として施設を長期的にわたり有効に活用していくためには、施設の維持管理を計画的に行うことが重要ですね。施設部に今までは、維持管理を専門とするセクションがなかったのです。現在の建築課、設備課を解体し、仮称ですが、環境整備課というセクションで、キャンパスの有効利用を含めた維持、保全、管理を進めていくことになるでしょう。また、新増築、大型改修は、施設整備課に建築担当、機械担当、電気担当の専門家を配置して、計画および工事を実施します。
――各大学でも、施設部の名称が変わるのでは
北島
今年度には、徳島大学が施設部を施設マネジメント部へ改称しましたね。これからは維持管理もメインに置いた部構成を考えなくてはなりません。私たちの場合は、施設部ではなくて、施設管理部に改称する予定で準備しているところです。構成は、今現在は施設管理課、施設整備課、環境整備課の3課で検討しています。
――大学施設部の歴史的転換点になりますね
北島
教育改革、大学改革そのものがそうですが、施設部にとっても100年に1度の転換期ですね。少なくとも、新制大学になってから50年は経過していますから、国立大学法人化は歴史的に転換の時期と言えるのかもしれません。
――今後は、改修による建物の最高寿命を、どのくらいに設定していきますか
北島
以前に、文部科学省の文教施設部長は100年建築という概念を提唱しました。古い建物だからと言って安易に壊さずに補強し、長く使用していこうという考えから、その言葉が出てきたのです。
一方、近年は環境問題が注目されています。古い建物を解体すると、廃材が発生し、新しい建物を造るとなると、新しい資材を消費することになります。資材を使うために資源を消費し、製造過程でエネルギーが消費されて、地球に負荷を掛けているという認識です。したがって、出来るだけ既存のものを再利用していこうという考えが、近年の主流だと思います。
建物もリサイクルと同じです。古い物を単に壊すのではなく、改修し、構造補強まで加えて長く使おうという考えは、地球環境の保護に由来するのです。
――リサイクルを前提とするなら、建物の構造も自ずと従来とは違ってくるのでは
北島
建物を壊さないで改修する時に、リサイクルしやすい部屋割りにしておくことが必要です。個別に小さな部屋を造るのではなくて、大部屋にしておいて、パーティションで区切って執務室にするのです。そうすると、解体するときの手間は省け、模様替えもしやすくなります。フレキシビリティに対応出来る施設計画と言われますが、これからの建築は、最後の解体まで含めてリサイクルを考えていく。そういう時代になってきています。

(後編)

市民のアクセスと利便性に配慮したキャンパス整備

新潟大学旭町地区は医学部・歯学部があり、附属病院(15年10月から医歯学総合病院)を中心としたキャンパスの再編整理が進んでいる。市街地にある旭町地区では、現在どのように整備が進められているのか、前号に引き続き北島弘公施設部長に伺った。
――旭町キャンパスの施設整備は、どのように進んでいますか
北島
ここは医学部が中心で、附属病院の病棟T期工事が2000年10月に竣工し、2001年4月に開院しました。昨年から行われているA期工事の規模は、src造地下1階地上12階建て延べ2万1,610m2で445床。@期と合わせた810床で、05年8月の竣工、06年1月の開院をめざしています。
総合研究実験棟は、中核的研究拠点(COE)形成プログラムの支援対象に選定され、昨年度建設したSRC造6階建て延べ3,940m2の脳研究所を中心とした同棟の北側に、SRC造6階建て延べ3,000m2規模で予定しています。旭町地区全体の総合研究施設として大型機器を導入するとともに、特殊機能の実験室も配備し、大学院充実にも対応していくものです。
医学部保健学科校舎の改修にも着手する予定で、初年度としてRC造4階建て延べ4,850m2を対象とします。このほか新潟市内の関屋地区の学生寄宿舎、六花寮の改修(SRC造4階建て延べ5,230m2)も予定しています。
――旭町は本当に街の中にあるのですね
北島
旭町は街の一等地ですよね。市役所のすぐ前ですから。敷地も狭いのですが、建物の面積は五十嵐地区とあまり変わらないのですよ。それだけ敷地を目一杯使っているのです。例えば五十嵐地区の場合は土地が59万7,000m2に対して、建物が19万4,000m2あるわけです。同じく旭町地区については、土地が17万m2しかありません。一方で建物は17万8,000m2ありますから、面積はそんなには変わりません。それだけ密度が濃くなっているということですね。
――附属病院は市民や県民に対するアクセスが非常に良い場所になっていますよね
北島
そうですね。私が金沢大学にいた時も同じような話があったのですが、今金沢大学では角間のT期とU期の移転を進めていますね。私はこの@期の時に担当しました。附属病院の再開発計画が持ち上がったのですが、その時に同じ角間に病院も移そうという話があったのですよ。土地がたくさんありますからね。ところが地の利の関係で患者さんや市民のことを考えると、やはり街場に病院がなければならない。そういうことで現地再開発で、今は宝町というところに整備していますが、ここも同じ話ですよね。市民の利便性を考えれば街場にあった方が交通の便もいいですし、仮に敷地がもっと余裕があったとしても、おそらくは移すことはできなかったでしょう。
――地域の方々に対する貢献ということで高層の建物になったのですね
北島
そのとおりです。病棟は12階建てで整備を進めています。なお、中診棟は4階建て、外来棟は5階建てで再開発を計画中のところです。
――そうすると新潟市内でも相当高い部類に入るのでは
北島
そうですね。最近は朱鷺メッセがずば抜けて高いのですけれども、それに匹敵するくらいの病棟ですから市内でも割合目につく建物になっています。

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