建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年9月号〉

interview

釧根の元気回復が日本経済回復のバロメーター

国民の「生の声」を政治に生かしていきたい

民主党釧根代表 仲野ひろ子 氏

仲野 ひろ子 なかの・ひろこ
昭和 34年 3月 3日生まれ 青森県出身
昭和 56年 3月 弘前学院大学英米文学科卒業
昭和 57年 4月 根室市柏陵中学校臨時講師に就職
(昭和59年6月同講師を退職)
昭和 59年 4月 英語塾自営
平成 元年 9月 根室市議会議員初当選 以来3期連続当選
平成 12年 6月 衆議院議員選挙に初挑戦
平成 13年 4月 民主党北海道第7区総支部代表 
北海道の釧根地域は、我が国最大の湿原を擁する「釧路湿原国立公園」や神秘的な自然景観の「知床公園」など雄大な自然景観を有する地域であり、また、産業的にも生乳や漁業生産などで、地域経済の根底を支えてきた。しかし、現在は太平洋炭鉱の閉山などから、大打撃を受け、かつての勢いは影をひそめている。それでも、民主党釧根代表の仲野ひろ子氏は、まだまだ釧根地域は潜在能力を秘めていると主張。「日本経済の回復は、この釧根地域から」と訴える。仲野氏に、釧根地域の現状と今後の在り方を伺った。
――現在の釧根地域の産業や経済の現状は、いかがですか
仲野
バブル崩壊以降の10年余り、日本全体の深刻なデフレ不況が続いていますが、それにともなって倒産、あるいは失業の波が、この道東の釧根地域にも押し寄せていることを、常日頃から感じています。また、昨年1月には、80数年の歴史を持つ太平洋炭鉱が閉山し、それによる様々な影響がこの釧根地域全体に現れていますね。
そして、とりわけこの釧根地域は、道内の中でも社会資本整備が遅れている状況にあります。しかも、それに拍車をかけるような、国と自治体の財政危機による公共事業の削減・縮小が、さらに厳しい追い打ちを与えていますね。
基幹産業を中心に、そうした深刻な状況が続き、このままではこの地域全体の経済状況が沈没しかねない深刻な現状にあると、私は受けとめています。
――将来に明るい展望は期待できない状況でしょうか
仲野
確かに、先程述べた通り、釧根地域は大変厳しい状況です。しかし私は、まだまだ産業や経済の潜在力・可能性を秘めていると思います。
例えば、漁業・酪農とその関連産業、あるいは製紙・パルプ産業、港湾・流通産業など、国内経済的に大きなウエイトを占めているのは、この釧根地域です。また、複数の国立・国定・道立公園や、最近では知床の世界遺産登録の動きも活発化しています。そうした自然環境も、国内・国際的に優れた観光資産となっています。最近ではまた、バイオ発電や石炭の液化プラントなど、まだまだ実験段階ですが、地域産業に結びついた先端技術の開発にも取り組んでいます。
これらをどう伸ばしていくか、この可能性をどう引き出していくかが、重要課題ではないでしょうか。
――過去には水産業が水揚げNO.1を誇っていた釧根地域ですから、地力はあるでしょう
仲野
そうです。ところが、現在はその漁業問題にしても、国家間での交渉が必要であり、とりわけ対ロシアとの関係は領土問題にとどまらず、産業経済に本当に大きな影響を及ぼしているのではないでしょうか。
北洋中型サケマス船の問題についても、いかにこれは民間交渉の問題とはいえ、やはりロシアと日本の国家間の問題でもありますから、やはり外交面での政治力が必要不可欠と考えています。決して釧根内部だけの課題ではなく、北海道や日本の経済や産業にも影響を及ぼす問題だと思います。
したがって、私は釧根の元気回復が日本経済回復のバロメーターだと考えています。例えば、この釧根地域は生乳生産量、漁業生産量が、全道の約3割を占めています。私はこの地域を日本の主要食糧基地として、釧根ブランドを発信させていきたいと、前回の選挙でも訴えてきました。この地域の元気が回復できれば、日本経済全体が本当に活気を取り戻したといえる一つの指針になると思いますね。
――釧根地域から経済不況を脱していく道筋を、どう描いていますか
仲野
管内では、基幹産業以外にも福祉・医療、教育など、各自治体が抱える課題は多くありますが、今日の地方財政危機の中で、管内の自治体全体が苦しんでいます。
そこで現在、いわゆる「三位一体改革」が盛んに論議されていますが、それは政府が地域を切り捨てるための制度改革であってはならないわけです。例えば、各自治体の裁量で事業が執行できる「包括補助金制度」などの大幅な拡大・導入が必要ではないでしょうか。そうした真の分権改革、地域主権のための政治改革こそが今すぐにでも必要ですね。
また福祉型公共事業も、これからは絶対に必要だと考えます。例えば、高齢者が増えている現在、在宅福祉と施設型福祉あるいはその中間的なグループホームなど様々な選択肢を与える施策が、この国には必要だと思います。その意味では、施設福祉型の老人ホームやグループホームなどは、まだまだ足りません。
この釧根地域では、遠距離拡散型の家族構成の場合も多く、高齢者の方も、家族に負担や迷惑をかけたくない、国の制度で介護を受けられる老人ホームなどにいずれは入所したいと希望する高齢者は、多いようです。したがって、仲野さんが国会議員になった時には、ぜひ福祉施設を増やして欲しい、そういう社会システムを築き上げて欲しいという要望が、私のもとに多く寄せられていました。
――それは、地域の生の声を多く聞いてきたからこそ、分かることですね
仲野
この3年半の間、数多くのお茶の間懇談会を行いましたが、本当に切実な声が、私の元へ寄せられました。中には、常日頃から今の社会や政治に対して不満を持っていたが、それを訴えられる国会議員がいないという人もいました。その時に、仲野さんにこうして話しを聞いてもらうと身近に感じるし、そういう政治家を求めていたとの評価もいただきました。
高齢者や障害者、子ども達、あるいは農業・漁業に携わる方々、運輸に携わる方々、中小企業を営んでいる方々、そういった方たちから色々な声が寄せられています。やはり政治家の基本は、「生の声を直接聞く」ことだと思います。生の声の中にこそ、たくさんの課題が埋もれているからです。それを皆さんからいただき、それを国政の場で声を大にして代弁するのが政治家の果たすべき役目だと考えます。
――実際には、どのような政策展望を持っていますか
仲野
これだけ経済不況が続く中で、本当に多くの人々がリストラをされ、職を失っています。そういう雇用不安をなんとか払拭していきたいですね。やはり、私も釧根に住む者の一人として、地域を大事にしていきたいし、この釧根地域の将来があって、日本の将来があると思っています。
この釧根は、一次産業の地域です。それをなんとか再構築させていきたい。それによって経済の発展、雇用創出に繋げていきたいと思います。また、多くの障害者や高齢者の訴えを聞く中で、将来に向かって、医療、年金、福祉といった社会保障制度のセーフティネットを確実に構築していかなければなりません。
――今後は、高齢化社会が予想され、国民は皆、将来に不安を抱いています
仲野
税制調査会から今後の少子高齢化に向けて、社会における税制のあり方についての答申がありましたが、それによると、高齢者が増えると、財源が不足するので、消費税、所得税、相続税などを増税するとのことです。
しかし、果たして本当にそれで良いのかと疑問に感じます。生活弱者や中小企業など、弱者を虐げるような政治であってはならないと思いますね。やはり、政治の光は、弱い立場にある人々に当てるべきで、将来に向かって、誰もが安心して暮らせる社会を目指して、政治を進めたいものです。
そして、これまで3年間にいただいた人々の声を、私が次の戦いに勝利することで、声を大にして国会の場で訴えていきたいと思います。国会は未だもって男社会ですが、議会は性別にこだわっているべきではありません。選ばれたからには、責務を果たしていきます。次の選挙も大変に厳しいと思いますが、皆さんから提起された問題を解決するためには、まず勝利しなくてはなりませんので、強い決意をもって臨みたいと思います。
――前回の選挙時と比べて、手応えは違いますか
仲野
前回立起した時と現在とでは、政治状況も大きく変化していると思います。しかし、それ以上にこの3年間、自分の足で歩き、多くの方々と膝を付き合わせて対話をさせていただいた中で、「仲野ひろ子」という名前がかなり浸透していると実感してきましたし、徐々に私への期待感も高まってきていると感じます。
多くの人々は、政治や政治家を身近に感じたいと思っています。知らない世界の存在ではなく、国民の生の声を聞いてくれる政治家を選びたい。私も自分自身の活動の中では、同じ目線に立って、どんなに小さな声でも受け止めてきました。それを私自身は、大切にしてきたつもりです。ですから、次期選挙は、皆さんの素朴な生の声が、そのまま私の公約・政策の出発点となります。
――女性であることの利点は
仲野
女性の有権者からは、「同性なので相談しやすい」と言われます。介護保険制度論議も、参加者は女性議員が少ないと思います。そのため、もう少し女性の視点をもって個々の制度を策定したいですね。
とりわけ福祉政策、福祉問題については、女性の視点や監査体制に基づいてつくり直していくことができるのではないでしょうか。
――きめ細かな点は、女性の方が気配りが行き届くでしょう
仲野
介護保険制度も、いざサービスを受けたいと思った時に、なかなか自分が望むとおりには受けられないのが実態です。老人ホームに入所したくても、空くのを待って待機しているのが現況です。
今日では、社会的に介護を行うのであれば、福祉施設を含めた多様な選択肢がある中で老後を暮らしたいと、高齢者の意識は変わりつつあるのです。しかし、お茶の間懇談会に参加した人達は、その点を主張しても、男性の政治家には訴えが届かないとの不満を述べています。それだけに、女性である私なら、声を聞いてくれるし、相談しやすいといわれました。
とりわけ、私は青森出身なので、アクセントに青森弁の訛りがあるので親しみやすいイメージがあるようです(笑)。性格的にも、聞いたら即行動し、白黒をはっきりさせるので分かりやすい。
――そういうタイプの人は、真に政治家向きかもしれませんね
仲野
私をこのように育ててくれた母には感謝しており、これからの時代は、やはり女性も男性に負けないように育っていかなければならないと思います。
中には、今の民主党は好きではないが、仲野ひろ子には好感を持てるといわれる方もいますが、そう言われると心から嬉しいですね。
私は、今までの政治手法のままでは、やはりこの釧根地域は本当に沈没しかねないほど、追いつめられていると思っています。したがって、もし当選させていただいたなら、真剣に皆さんの生の声を基本においた政治をめざしていきたいと思います。一年生議員で、政権与党ではないからとマイナス指向になるのではなく、持ち前の元気と明るさ、そしてたくましさを持って突き進みたいですね。

HOME