建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年9月号〉

interview

特集 沖縄総合事務局の主な整備事業最前線

観光産業支援にシフトしたインフラ整備

経済的自立は公共事業関連の建設と観光で

沖縄総合事務局開発建設部長 溝内 俊一 氏

溝内 俊一 みぞうち・としかず
生年月日 昭和25年12月26日
学  歴 昭和49年大阪大学工学部土木工学科卒
昭和 49年 運輸省入省
63年 運輸省第四港湾建設局宮崎港工事事務所長
平成 3年  〃 第四港湾建設局工務第一課長
6年  〃 港湾局建設課補佐官(総括)
8年  〃 大臣官房文書課企画官
10年  〃 第四港湾建設局関門航路工事事務所長
11年  〃 港湾局建設課国際業務室長
12年 北九州市港湾局長
14年 現職
日本の最南端である沖縄県は、多数の米軍基地や駐留施設を抱え、日本の国防拠点としての役割を果たしてきた。しかし、ただでさえ狭い領土を広範囲に占拠され、しかも高温少雨の厳しい気候から、本州のような経済構造は形成されにくい。反面、自然環境は南国特有のものがあり、本州には見られない天然記念物の宝庫で、観光資源としては世界に誇るものがある。そうした地域では、インフラ整備の意義も、観光産業支援にシフトしたものとなり、公共事業不要論と同じ土俵で捉えることはできない。沖縄総合事務局開発建設部の溝内俊一部長に、沖縄の地域性と基盤整備の概況について伺った。
――管内では、大保ダムと羽地ダムが整備中ですね
溝内
大保ダムは本体工事に着手したところで工事が本格化しています。羽地ダムは試験湛水中で来年度に完成予定です。
――どこのダム現場も、自然環境にかなりの配慮をしているようです
溝内
沖縄は貴重な動植物の宝庫で、これらが観光資源にもなっています。大保ダムの現場では、天然記念物のノグチゲラが近くで産卵したため、ヒナが生まれる4月までの間は、工事を中断することにしました。そのお陰で、3匹のヒナが生まれ育ったこともありました。ダム現場の側溝にしても、小さな陸亀などは、傾斜が急では落ちたときに脱出できなくなります。そのため緩い傾斜にするなど、非常にきめ細かい工夫をしています。
また、沖縄には特有の赤土が発生し、これによって珊瑚がダメージを受けています。最大の原因は地球の温暖化で、その他、陸上の開発などによって発生した赤土が流出し、珊瑚を覆って窒息させてしまうのです。そのため、赤土対策が総合評価の入札における、評価項目の一つになっています。これは沖縄の地域性を反映しているかも知れませんね。
――大保ダムは多目的ダムなのですか
溝内
利水中心で、最も大きいのは生活用水でしょう。沖縄はこの9年間くらいは給水制限が行われていませんが、それ以前には頻繁にありました。県の中部には、海水の淡水化プラントが整備されましたが、それでも水不足状態は続き、全世帯、各家庭の屋根に貯水タンクを設置して自衛しなければならないほど深刻だったのです。
したがって、飲料水の確保にはかなり力を入れていますが、私たちの整備したダムがもたらした恩恵は大きく、お陰で9年間は給水制限を免れています。ダムが整備され、給水量がアップしたことの意義は大きいものです。
――すでに稼働しているダムはどのくらいありますか
溝内
国営ダムは全部で6ダムで、台風が来ると水確保の面では一安心できますが、河川の流路延長が短く、急勾配となっているため、すぐに海に流出してしまいます。しかも気候が高温少雨で厳しいため、毎日ダム水量が何%あるのか、数値を確認し気を配っていなければなりません。
――すでに稼働しているダムはどのくらいありますか
溝内
国営ダムは全部で6ダムで、台風が来ると水確保の面では一安心できますが、河川の流路延長が短く、急勾配となっているため、すぐに海に流出してしまいます。しかも気候が高温少雨で厳しいため、毎日ダム水量が何%あるのか、数値を確認し気を配っていなければなりません。
――すでに稼働しているダムはどのくらいありますか
溝内
国営ダムは全部で6ダムで、台風が来ると水確保の面では一安心できますが、河川の流路延長が短く、急勾配となっているため、すぐに海に流出してしまいます。しかも気候が高温少雨で厳しいため、毎日ダム水量が何%あるのか、数値を確認し気を配っていなければなりません。
――一方、那覇市内の幹線道路である国道58号線は、けっこう渋滞していますね
溝内
インの58号は、県土の西側を縦に通っていますが、那覇周辺は大変な渋滞で、朝夕のラッシュ時は流れが完全に止まることもあります。
沖縄は公共交通機関がなく、8月にようやくモノレールが開通しその効果に大いに期待するところですが、空港と首里を結ぶため、延長は十分に長くはありません。そのため、動脈機能という意味では58号が最大なのです。この渋滞をどう解消するかが地元の大テーマです。
そこで、もう一本の道路を海側に計画しました。それが沖縄西海岸道路で、現在、着実に整備が進んでいます。これが全面開通しなければ、渋滞は完全にはクリアできないと思います。
――那覇港、那覇空港から、いろいろな地域に人や物が流れていくのに、最も肝心なルートが混雑したのでは、運輸機能を果たせませんね
溝内
そのため、バイパスもたくさん整備しています。現在、58号を軸に各地で相当数のバイパス整備が進んでいます。少しずつ供用していますが、まだ全てのバイパス同士が一本に繋がるところまでは到達していません。
――高規格幹線道路の整備には、着手していませんか
溝内
那覇空港自動車道は、高規格幹線道路です。道路公団が整備した沖縄自動車道と空港に繋げるべく直轄事業で建設しています。途中までは出来ていますが、空港まで繋がれば、かなり利便性は向上します。
一方、地域高規格道路として、西海岸道路と名護東道路を整備中です。
――沖縄のビジネスを取り巻く環境は
溝内
那覇空港は、年間利用者が1千万人を超え、全国的にも福岡、新千歳に並ぶ重要な空港です。その特徴は、夏場を中心とした観光シーズンをピークに、それ以外はやや下がるため、利用者数の変化が大きいことです。
その意味では、ピーク時の利用客数を全体に平均化すれば、能力がさらに上がるという見方もあるのですが、沖縄県は観光で生きていく地域ですから、来客者に混雑を無理強いするわけにもいきません。そのため、地元ではもう一本の滑走路の実現に向けての要望が大きいです。昨年12月に開催された交通政策審議会航空分科会の報告に基づいて、関連の調査を今年度から正式に実施することになっています。
――新滑走路整備の見通しは
溝内
国営ダムは全部で6ダムで、台風が来ると水確保の面では一安心できますが、河川の流路延長が短く、急勾配となっているため、すぐに海に流出してしまいます。しかも気候が高温少雨で厳しいため、毎日ダム水量が何%あるのか、数値を確認し気を配っていなければなりません。
――地元での需要喚起策は
溝内
夏場は関東、関西を中心とした利用客が見込まれ、飛行機はいつも満席状態です。そのピーク時においては、宿泊、運輸施設がもう少しあっても良いという議論は妥当ですが、そうしたピーク時に合わせて様々な施設を整備しても、シーズンオフ期間の問題があります。
のみならず、一日の利用客数の時間的推移も問題です。最も都合の良い時間帯に利用客は殺到しますが、さらに朝は早く、夜は遅くにフライトするような運行ができれば、敢えて新規の施設を整備しなくても、利用量は増えるという見解もあります。
――沖縄経済において、観光以外の主産業は
溝内
やはり沖縄は観光と建設業が基幹産業です。それだけに、公共事業に対しては、県民はかなりの期待を抱いています。
――近年は、公共事業予算が削減される状況にあるので、影響が大きいのでは
溝内
もちろん、厳しい状況には変わりません。特に、本土に比べると量的な面でも質的な面でも、まだまだ不足気味です。これまでは本土との格差是正、キャッチアップを目的に努力してきました。今ではキャッチアップという言葉は使われませんが、経済的自立に向けて、安定的で持続的な発展を促すためにも、まだまだ公共投資は足りないのです。
道路は至るところで混雑し、しかも曲がりくねっているのですから、観光客が自由に移動するための利便を提供しているかと言えば、十分とはいえません。しかも夏場には、いつ給水制限が行われないとも限りません。そうなると、地元のホテル業界に影響します。ホテルのプールも使えなくなってしまうわけですから。そうなると、観光産業には大打撃となります。
したがって、沖縄の経済を支えるためにも、我々の担うインフラには、本土とは異なる切実な理由があるのです。本土の都市部では、そこそこに完成しているので、公共事業に対する必要性が議論されていますが、そういう地域とは実情が全く違うのです。
――県外からの観光の玄関となる空港・港湾は、地域経済の生命線ともいえますが、那覇港の現況は
溝内
コロンブスらが活躍した大航海時代には、日本は室町時代で鎖国状態でしたが、その頃から沖縄は琉球王国として中国と日本の中継ぎをしたり、あるいは東南アジアの貨物を経由して中国に輸送するなど、中継貿易の基地として発展した輝かしい歴史があります。昔の人も地理的な優位性に気づいていたということです。
したがって、そうした貨物の取り扱いに関しては、過去の琉球王国時代の栄光を取り戻そうという動きが起こっています。コンテナ輸送においては、那覇港をトランシップ港として対岸の中国や西日本の港からコンテナを集めて、これを大型船に積み替えて北米やヨーロッパへ搬送するという仕組みを現在検討しています。
これを推進するためにも、沖縄県と那覇市、浦添市の3自治体が一体となって那覇港管理組合が昨年4月に設立されました。また、トランシップポートを実現するために、内外の優秀なターミナルオペレーターの誘致を計画しています。
また、那覇港周辺には珊瑚礁があり、海が綺麗なので、すでに外国のクルーズ船も多数入ってきています。
そこで、さらなるクルーズ拠点にし、国際リゾート港湾にしようという構想もあります。これに関連して、来年度は観光船のバースを要求しています。
中国や台湾の海は、あまり綺麗ではないと聞いていますが、そうならば沖縄の海の色を見ただけでも、非常に喜ばれると考えます。しかも、中国上海を中心とした沿岸部には、かなりの富裕層が増えてきている情勢もあります。そういう人々を、綺麗な海をセールスポイントにしている沖縄へ、クルーズ船で誘致してくることは、観光資源の宝庫としては十分に可能性のあることだと思います。これも本土の港では、なかなか真似ることの出来ない計画だと思いますね。
――港の埠頭の規模は
溝内
現在のコンテナ岸壁は13mですが、将来的には15m級を建設する計画もあります。そうした計画は、海外のオペレーターを誘致するためにも必要です。
――ところで、営繕事業については、庁舎移転のための整備が進んでいるようですね
溝内
現在、那覇新都心が整備されています。米軍の居住区とされていた用地が一斉に返還されたためです。そこに多数のマンションが建築されていますが、そこに那覇第2合同庁舎ができます。計画は1期棟から3期棟まであり、1期棟は6月末に完成し、7月に入居します。入居官省は労働局などです。
2期棟は、高層ビルになるのですが、そこにこの沖縄総合事務局が入居する方針で、予算要求しています。何しろ、現況では民間ビルを借り上げていますが、かなり老朽化し、狭隘で廊下も歩けない箇所がかなりあります。さすがに、来庁者からも同情されているほどです(苦笑)
――官庁施設も、厳しいコスト縮減を求められていますね
溝内
コスト縮減を実現しつつも、沖縄は観光で生きている県ですから、庁舎といえども沖縄らしい特徴を持たせ、できるだけ地域の特色をデザインに取り入れられたらと思います。
――国民還元型の施設整備は
溝内
「国立劇場沖縄」が完成間近です。かなり大規模のもので、これは浦添市に7月に完成します。管理者は文化庁で、これもかなり沖縄らしい凝ったデザインの施設です。
俗称として、我々は「組踊り劇場」と呼んでいます。組踊りというのは、沖縄の伝統的な舞踊で、かなりきらびやかな衣装をまとい、沖縄の音楽をバックにして踊る、ストーリー性のある古典芸能で、それを上演出来る場をつくろうという発想から計画されました。

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