建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年8月号〉

interview

北海道モデルの実績と積み重ねを

経済の再建 ひとづくり 地域づくりの三大政策と改革を目指す

北海道知事 高橋 はるみ 氏

高橋 はるみ たかはし・はるみ
生年月日  昭和29年1月6日
本  籍   東京都三鷹市
最終学歴  一橋大学経済学部 (昭和51年3月卒)
昭和 51年 4月 通商産業省入省
平成 元年 6月 通商産業研究所総括主任研究官
平成 2年 7月 中小企業庁長官官房調査課長
平成 3年 6月 工業技術院総務部次世代産業技術企潮害
平成 4年 6月 通商産業省関東通商産業局商工部長
平成 6年 7月 通商産業省大臣官房調査統計部統計解析課長
平成 9年 1月 通商産業省貿易局輸入課長
平成 10年 6月 中小企業庁指導部指導課長
平成 12年 5月 中小企業庁経営支援部経営支援課長
平成 13年 1月 経済産業省北海道経済産業局長
平成 14年 12月 経済産業省経済産業研修所長
平成 15年 2月 経済産業省退官
平成 15年 4月 北海道知事
今春の統一地方選北海道知事選で、高橋はるみ氏が当選し、道政史上初の女性知事が誕生した。かつて、札幌通産局長(現北海道通産局)として本道に赴任し、通産官僚の目で北海道の実情を見つめ、経済のウィークポイントも知り抜いているだけに、どう克服して再生へ導くか、その手腕に期待がかかる。
――近年は、経済不況から脱する道筋が一向に見えませんが、北海道の今後の展望と可能性をどう捉えていますか
高橋
この北の大地・北海道は、さまざま分野で高い潜在力と限りない可能性を秘めており、多くの人々が夢と憧れを抱いています。
これまで私自身も、さまざまな立場で北海道に関わりを持ち、北海道に強い憧れを持って見つめてきましたが、実際にこの土地に住んでみて、改めたその魅力や可能性の大きさを実感しました。
ヨーロッパの一国にも等しいゆとりある空間や雄大な自然、海と大地が育む豊かな食糧、産業を支え環境を守る先進・先端の技術力、そして、何よりもこの北の大地を愛してやまない道民の皆さん。これらの全てが北海道の優れた資源であり、輝く個性であり、さらなる飛躍への原動力でもあります。
いま世界を見渡してみても、世界経済を支えているのは勢いのある地域経済です。米国のシリコンバレーやデンバー、シアトルといったハイテク地域、急速な繁栄を遂げる中国の6つのメガリージョン、ファッション産業で有名なイタリアの北部など、世界のフロンティアと言われる地域が、今やグローバル経済を牽引しています。
私は、日本のフロンティアに位置するこの北海道においても、時代の潮流を見極め、高い潜在力と限りない可能性を最大限に活かし、知恵と工夫のもとに果敢に挑戦することによって、必ずや、日本だけではなく世界に貢献できる、光輝く地域となりうるものと確信しています。
北海道を取り巻く環境は、確かに大変厳しいものがありますが、私は道民の皆さんとの力強いパートナーシップのもとに、北海道の価値を磨き上げ、様々な分野で「北海道モデル」といった成功例を積み上げながら、希望に満ちた新生北海道の実現に向けて全力で取り組んでいきたいと考えています。
――これまでの北海道に欠けていたものは、何だったのでしょうか。そして、北海道の今後に必要なものは何と考えますか
高橋
北海道は、明治以降の開発の歴史の中で、国の政策に支えられ、食糧・エネルギーの供給地や人口の受け皿として時代の要請に応えてきましたが、その半面、中央依存・官依存の体質が形作られ、その中に人々が安住する傾向があったのではないかと言われています。
そしてこのことが、残念ながら、いま北海道全体を覆う「気後れと自信のなさ」や、競争意識の希薄さにもつながっているようにも思います。
しかし、グローバル化やITの進展、少子高齢化の進行、地方分権時代の到来といった時代の大きな潮流に伴い、我が国を支えてきたパラダイムが大きく変化する中で、こうした体質の克服は、これからの地域間競争の時代を生き抜いていく上で避けては通ることのできない大きな課題でもあります。
北海道が、その確かな未来への進路を切り拓いていくためには、これまでの発想から脱して、自らの足下を見つめ直し、本道の高い潜在力と限りない可能性に磨きをかけながら、自立性の高い地域社会を創り上げていくことが必要です。
そして、そのためにも道民の皆さん一人ひとりの意識改革とチャレンジ精神の発揮が何よりも求められていると思います。
私としては、将来の世代に確かな北海道を引き継ぐためにも、この北の大地に記憶されたフロンティアスピリットや自信、勇気を呼び起こしながら、元気な北海道、そして希望に満ちた北海道の未来像を、道民の皆さんとともに描いていきたいと考えています。
――北海道の再生、改革にどう取り組む考えですか
高橋
北海道がかつてない大きな転換期を迎えている中で、いま北海道にとって何よりも大切なことは、道内経済の立て直しを図り、道民の皆さんが安心して暮らせる環境を整え、将来に向けて北海道が進むべき方向を明らかにしながら、「住んでいることを誇りに思える、希望に満ちた新生北海道」を築いていくことです。
そのためにも、私はこの新生北海道の実現に向けて、「経済の再建」、「ひとづくり」、「地域づくり」という3つの基本政策を展開していきたいと考えています。
まず第一には、「経済の再建」です。新しい北海道づくりの鍵は、地域が持続的に発展していくための基盤である「経済の再建」にあることは言うまでもありません。
私は、この北の大地が擁する高い潜在力と限りない可能性を最大限に引き出すことによって、本道経済の真の底力を発揮していくことができるものと確信しており、そのためにも、産業間の連携や産学官民の協力体制を一層強化しながら、北海道経済の再建に全力で取り組んでいきたいと考えています。 
21世紀の北海道を担う「ひとづくり」も大切です。地域主権の時代を迎える中で、地域の発展や豊かなまちづくりを実現するためには、何よりも「ひとづくり」が不可欠です。本当の意味で地域を支えるのは、いつの時代も「ひと」なのです。
私は、新しい時代を切り拓いていく確かな原動力となりうるフロンティアスピリットを呼び起こしながら、21世紀の北海道をたくましくリードするチャレンジ精神旺盛な人材の育成に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
そして、三つ目が「地域づくり」です。北海道には、雄大な自然とそこで営まれる北国ならではの暮らし、美しい景観や街並み、特色あふれる地域文化など、それぞれの地域ごとに多様な個性があります。
また、道内では、冬に大量に降る雪を貯蔵し、夏の住宅冷房や農産物の保存に利活用する取り組みが行われるなど、積雪寒冷といった、かつてはハンディとしか思われなかったことが、今日ではむしろ地域の個性としてさまざまな形で生かされています。
新しい世紀を迎え、環境やゆとりといった価値観が改めて重視される中で、この北の大地が秘めた潜在力はますますその価値を増しています。
北国の恵まれた環境を最大限に活かしながら、そこに住む人々が互いに支え合い、健康と安心、そして生き甲斐を持って心豊かに暮らすことのできる、個性あふれる地域づくりを目指していきたいと考えています。
――そのために、行政と民意をどのように改革しますか
高橋
社会の成熟化が進み、人々の価値観が多様化するとともに、グローバル化・ITの進展、分権時代の到来、少子高齢化の進行など、地域が抱える課題はますます多岐に変化しています。
こうした中で、明日の北海道をつくる担い手は、何と言っても道民の皆さんであり、地域に暮らす人々が果敢に挑戦し活躍できる環境を整え、その活動を支えるのが道庁の役割です。
私としては、北海道を取り巻く社会経済情勢の変化やさまざまな課題に適切に対応しながら、職員が常に道民に顔を向け、道民のために働く「主権道民」の道庁を実現するために、「道庁改革」を強力に推進していきたいと考えています。
そのためにも、まずは、職員一人ひとりが、縦割りの行政システムの中で内部の調整に費やしていたエネルギーを外向けに切り替え、地域の皆さんのために汗を流し、共に地域づくりに取り組んでいくことが大切です。
職員自らが積極的に地域に足を運び、その実情を肌で感じ、市町村や道民の声を個々の施策に反映させる、いわば「守りの道政」から「攻めの道政」への変革を進めていきたいと考えています。
また、北海道を取り巻くさまざまな課題を着実に解決していくために、垣根を設けずに道民の皆さんの意見に真摯に耳を傾けるとともに、施策の推進に当たっては、行政と民間の垣根を取り払い、互いに連携しながら、地域の暮らしや経済の活性化といった共通の目標に向かって協働の姿勢で取り組む「バリアフリーの道政」を推進していきたいと思います。

HOME