建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年6月号〉

interview

福岡市南部をネットワークする福岡外環状道路

国道、都市高速道路、地下鉄、共同溝が併走

前・福岡国道事務所長 森 昌文 氏

森 昌文 もり・まさふみ
1981年 3月 東京大学工学部土木工学科卒業
1981年 4月 建設省採用、北陸地方建設局長岡工事事務所
1983年 4月 神奈川県道路整備課橋梁係
1985年 4月 建設省道路局道路経済調査室係長
1988年 4月  同上 東北地方建設局仙台工事事務所調査第二課長
1989年 11月  同上 東北地方建設局道路部道路計画第一課長
1992年 7月  同上 建設経済局事業調整官室調整官
1994年 4月  同上 道路局高速国道課課長補佐・企画課課長補佐
1998年 4月 アメリカ合衆国連邦運輸省道路庁
1999年 4月 建設省道路局its推進室専門官
2000年 5月  同上 土木研究所its研究室長
(2001年4月以降組織改革により名称変更)
2001年 8月 国土交通省九州地方整備局福岡国道工事事務所長
2003年 4月 国土交通省道路局高速国道課高速道路調整官(現職)
福岡市南部は、道路整備が遅れているため、交通手段が皆無に等しく、陸の孤島となっている。これが、都心部の渋滞の一因となる一方で、南部地区の住民は、都市生活の利便とは縁遠い状況に置かれている。そこで、国土交通省、福岡県、福岡市、そして都市高速道路公社が連携し、何もない住宅地に、新規に大規模交通システムの開発を計画した。それが外環状幹線道路である。従来の道路と異なり、国道、有料道路、市営地下鉄、共同溝が同居する例のないビッグプロジェクトで、早期の完成が待たれている。


西九州自動車道福重JCTより福岡高速1号線を望む

――事務所が所管するエリアの現況は
▲福岡外環状道路・共同溝全体図
福岡国道事務所では、福岡市を中心とした福岡県の南西部のエリアを管轄し、国道3号、201号、202号、208号、209号、210号の6路線260kmを管理しています。県都・福岡市を抱えているエリアで、市の人口は130万人くらいですが、後背地も含めると250万人に上る大都市圏です。それだけに、都市圏の渋滞対策や、県内でも特に整備の遅れている県南部や、久留米を中心とした筑後地域での道路整備が急務となっています。
現在、進めている改築事業は13ヶ所で、その中でもとりわけ大きなプロジェクトとしては、福岡外環状道路と西九州自動車道です。また、有明海の沿岸道路として、佐賀、福岡、熊本というエリアを結ぶ地域高規格幹線道路のうち、福岡県分について事業を実施しています。それ以外は、通常の渋滞対策のためのバイパス整備と、大分県境の竹原峠で一時改築の事業を実施しています。
福岡の場合は、都市高速の整備が進み、かなりの高速ネットワークが出来上がってきています。特に都市高速は、1号線が福岡の博多湾沿いに整備されていますが、そこから2号線を通って九州縦貫の太宰府インターまで、4号線を通って福岡インターにまで行けるようになっています。さらに1号線の終点部の西区では、西九州自動車道と繋がるかたちになっています。外の広域的な高速体系と都心部の都市高速のネットワークがこの2年間で各所で連結してきています。
従来のネットワークとしては、福岡市街地が湾岸沿いと国道3号沿いに広がっていますがこれらの地域を連結するかたちで自動車専用道路が通っているため、ネットワークが集中する千鳥橋jctで5kmを超える渋滞が朝夕に発生しているのが現状です。
この渋滞を解消するバイパスとして外環状道路が必要です。また福岡都市圏は、yの字なりに市街地が広がっているエリアで、特に近年は福岡の西南部の都市開発が盛んに進められており、佐賀県境の山のふもとまで市街地が拡大しています。その中でも、特に福岡都市圏の西南部エリアについての渋滞は著しいのですが、都市の骨格を形成する幹線道路が全くないという状況です。そのため、それをサポートするために福岡都市圏の外郭を形成する福岡外環状道路の整備を進めているところです。
――その福岡外環状道路は、既存路線の拡幅改良ではなく、新規に敷設しているのでしょうか
そうです。更地における新設道路で、都市計市決定は昭和44年ですから、計画としてはかなり古いのですが、実際に本格的に事業に着手したのは、昭和63年です。加えて福岡外環状道路は、自動車専用道路が併設されるかたちになっていますが、それ自体が都市計市決定されたのは平成4年ですから、本格的に工事に取りかかってから、まだ10年しか経っていないという実態です。全く新設の道路なので、工事はかなり稠密な市街地の中での施工となっています。
この福岡外環状道路は、都市圏の限られた都市空間を活用して、一般道路と都市高速道路5号線を併設すると同時に、南西部エリアの通勤・通学の足である、地下鉄も組み込んだ計画になっています。終点となる橋本駅から、福岡大学を経由し、都心部の天神に入る地下鉄高速鉄道3号線事業も進められています。40mの都市空間に、都市高速、一般道路、地下鉄、さらには、ライフラインとしての共同溝も組み込まれた断面構成になっています。

(西区方向を望む)
▲福大トンネル

(南区、博多区方向を望む)
▲福大トンネル
福大トンネルは共同溝及び福岡市高速鉄道の
各トンネルと立体的に配置
――福岡大学と橋本の間の工事では、かなり施工条件が悪いとのことですね
福岡大学の周辺は、トンネルが他の外環状道路の最大の工事ということになっています。断面図を見ると、外環状道路の都市交通部分が4車線、一般街路部分が4車線で、8車線分が福岡大学のキャンパス構内を通ることになります。当然、その下には共同溝と地下鉄も通ることになります。共同溝と地下鉄は、すでに完成しつつあり、現在はその上部に8車線分のオープンカットの工事が行われています。限られた福岡大のキャンパスの一部を借りて行われ、最終的にはキャンパスを復元します。敷地内の限られたスペースで施工するので、工事ヤードは狭く、埋設物もかなりたくさんあります。さらには周辺の道路網がほとんど整備されていないため、難渋しています。
――地下スペースを最大限に活用した、例のないビッグプロジェクトですね
一般道路を施工する私たちは1,800億円、都市高速さんの事業費が大体2,400億円ということで、総額4,200億円のビッグプロジェクトということになります。新設道路ですから、出来るだけ早くネットワークを完成させることを主眼にして役割分担しています。その中で、メインの1工区、2工区は高速道路公社事業を優先し、3工区、4工区を私たちの担当する一般事業を優先しています。
また、同じ道路でも通行量が有料と無料との違いがあり、できるだけ早くに有料部分を完成させるため1,2工区を最優先で整備しています。一方、私たちはその反対側から整備を進めており、4工区で既に供用し、それと併せて3工区を伸ばすという手順で工事を進めています。
この地域は交通手段のない陸の孤島と揶揄されているところですので、一刻も早い環状道路の完成が待たれています。主要地方道、大野城二丈線という道路はありますが、その1本しかないのです。実際に通ってみればわかりますが、復員は2車線が限界で、歩道もない箇所もあります。線形も曲がりくねって市街地を縫ったかたちとなっています。それだけに、地域での早期整備に対する要望はかなり強いものがあります。
――共同溝も、かなり大容量のようですね
共同溝の事業についてはそれがメインというわけではなく、ライフラインとしての基本的な整備になります。これも同様に4工区に分かれて整備をしており、事業としては、道路本体と同様に3,4工区を優先する形で、私たちが整備を進めています。
今後も、都市高速の整備に合わせて1,2工区を整備することにしています。外環の1,2工区では、都市高速5号線の一部が今年5月に供用開始され、残る区間でも一部はすでに下部工が出来上がっており、現在は上部工の整備が始まっています。完成すれば、空間的には工事ヤードが確保出来ることになるので、1,2工区については、昨年度の後半から共同溝のシールド工事に着手しました。平成17年には、共同溝も地下鉄も開業することになります。
【標準横断図】
一般部
トンネル部
――こうした地方都市で、国や自治体、団体が一丸となって連携し、集中的に整備している事例は少ないですね
そもそも3大都市圏以外で、都市高速道路公社という団体があること自体が全国的に見ても希有なことです。事業規模もかなり大きく、共同溝や地下鉄、都市高速道路など複数の事業を同時進行しながら都市空間を建設する事例は、たぶん全国的に見ても例がないのではないかと思います。
――そうした複数の事業が錯綜している現場を、効率的に管理する上では、難しい課題もあるのでは
そうですね。現場は、周辺が非常に稠密な都市エリアで、都市決定されているのは40mの限定された狭い範囲だけです。したがって、工事間の調整が必要になります。先に述べた共同溝と都市高速の下部工と、どちらを先にやるか。地下鉄工事も途中から合流しますから、それぞれがどんな順番で工事をすれば、最も早く完成させられるかといった事業調整が重要です。
また、工事にともなう周辺住民との調整という課題もあります。現場は大型ダンプも通れず、普通乗用車同士がようやくすれ違える程度の道路しかない、細街路しかないようなエリアなので、土砂の運搬ルートだけでなく、通学路の確保といった都市住民、周辺居住者の生活の利便性も確保しながらの施工となります。
さらには、大規模工事なので、震動、騒音、粉塵といった工事公害の抑制という課題もあります。特に福岡市の西南部地域は、昭和40年代の都市計画決定時には、水田とため池が点在していた所で、現在でも豊かな地下水を利用している住居や事業所等も多いことから、水環境の保全・確保にも気をつかっています。
――地域の利便性が向上する過程では、犠牲も生じますね
▲外環状道路モデル地区全景
もともと都市再生プロジェクトにも位置づけられていることもあり、これにともなって、地下鉄の駅舎や、駅舎周辺のバス停、駐輪場といった交通結節点の整備も進み、駅舎とそれを横断する自由通路も整備されます。
これは、旧建設省と旧運輸省が国土交通省へと一体化して連携が強まり、その合併後、初めての異分野が連携したプロジェクトでもあります。特に3,4工区の部分で、地下鉄と道路の連携という例のない施策の今後の展開に、非常に関心が持たれています。
――プロジェクトは、関係者が多ければ多いほど進めづらいものですね
福岡外環状道路は、福岡都市圏におけるビックプロジェクトとして期待されており、福岡市には外環状道路専門の対策室という組織まであります。このように、広域行政を担う県だけでなく、地元自治体の市までも一緒になって、この事業に参画して頂いているプロジェクトです。
▲共同溝整備中イメージ ▲共同溝整備後イメージ
――福岡市では、このプロジェクトをどのように生かそうとしていますか
福岡市は、外環状道路に連携する縦の放射道路整備を、一体的に進めるとともに、用地買収にも協力をいただいています。とにかく非常に狭い工事ヤードの中での事業なので、福岡市の公共用地をかなり使わせてもらいながら進めています。
そうした事業調整の面でも、福岡市、国、福岡北九州都市高速道路公社、それと地下鉄、これは福岡市の交通局でありますけれども、そういう方々、さらにはいわゆる一般道路の工事を行う部隊と、共同溝を整備する部隊というかたちでかなりのエリアでの連携が必要になってきます。それと共同溝の共同実施者ということでの占用事業者の方々、九州電力あるいは水道局、といった方々も当然調整が必要になってくると思いますし、やはり住宅地でありますので、占用物件なども多数埋設されております。そういったものを動かしながらの工事になりますので、関係者が非常に多いということになります。
――福岡大学敷地の地下利用による影響の心配はありませんか
福岡大学キャンパス内のトンネル整備後は、大学側にその上のグラウンドをお渡しすることになります。大学側とは、かなり以前から用地交渉を行ってきており、最終的には地中は道路空間として使わせて頂いています。昨年度はグラウンドの機能を補償するというかたちで周辺への仮移転を行ってきています。
――今年度に完成する地区は
今年の春は都市高速の板付インター、ランプまでです。来年の平成16年春には老司ic、17年度には堤icまでが完成します。それに併せて、私たちも周辺の一般街路も含めて整備しています。逆に最終的に3工区が残りますが、18年度以降には全体を繋げることを想定しています。
共同溝も、上部の都市高速、一般道路の供用時期に併せて、工事の支障にならないように先行的に整備しますが、3工区と4工区では、ほぼ完成しています。特に4工区では、換気部等々が今年度末には終了するので、来年度早々には完成形に近いものが見られます。
この他、残る工事箇所については、鋭意シールド工事を進めていきます。特に、福岡大学地下部分を先行的に進めていますが、手順としては先行的に地下鉄を完成させなければなりません。グラウンドの下に位置することもあり、natm工法が採用され、七隈トンネルの共同溝を早期に完成させます。今年度から来年度の前半には、おおむね目途がつくとの想定です。
▲福岡高速1号線・西九州自動車道
(福岡前原道路)開通
(平成13年10月13日
――共同溝でNATM工法というのは珍しいですね
地盤の状態が、他の区域に比べれて良く、コストを抑える上でも有効です。
――ようやく、事業の完成予想図が、現実的に見え始めたという感じですね
福岡外環状道路としては、全体としての用地買収も99%進んでおり、工事も全面的に着工できる段階に来ました。今春には都市交高速が一部供用することから、かなり終盤戦に近づいていると感じます。今年度、来年度、そして再来年度にかけて、2、3年の間にはピークを迎えることになり、おおむねその最後の形に近づきつつあり、一刻も早く都市サービスを提供出来る軸を、完成させたいところです。

福岡国道事務所のあゆみ

事務所の沿革
昭和 34年 4月 1日 九州地方建設局福岡国道工事事務所として発足〔通称:福岡国道事務所〕庶務課、工務課、福岡出張所、八幡出張所、行橋出張所)
国道2、3、10号の維持管理に着手
35年 5月 16日 管理課設置
37年 4月 1日 肥筑国道工事事務所の廃止に伴い、立花出張所が設置され、県南西部3号)の改築に着手
機械課設置
38年 4月 16日 調査課設置
39年 4月 16日 副所長(事務)設置
40年 4月 1日 用地課設置
42年 6月 1日 副所長(技術)設置
43年 4月 17日 用地官設置
44年 4月 1日 経理課、飯塚出張所設置
44年 11月 15日 新庁舎完成(福岡市東区名島3丁目24-10)
45年 4月 20日 管理一、二課設置(管理課廃止)
46年 4月 1日 博多、福岡、八女監督官設置
47年 5月 10日 八幡出張所、行橋出張所組織規程の改正により北九州国道工事事務所へ組織換
47年 11月 16日 今宿監督官設置
48年 4月 1日 立花維持出張所廃止・久留米維持出張所設置
48年 4月 16日 瀬高維持出張所・福間監督官設置
50年 4月 3日 建設専門官(環境)設置
53年 5月 20日 筑後・二丈監督官設置
55年 4月 7日 建設専門官(電気通信)設置
60年 4月 8日 庶務課が総務課と名称変更
交通対策課・電気通信課設置

建設専門官(電気通信)廃止
61年 4月 7日 用地官設置
63年 4月 11日 用地一、二課設置(用地課廃止)
建設専門官(道路敷地)設置
平成 2年 6月 11日 副所長(技術)調査一、二課設置(調査課廃止)
4年 4月 13日 建設専門官(検査技術指導)設置
5年 4月 6日 飯塚維持出張所、組織規程の改正により北九州国道工事事務所へ組織換
福岡西維持出張所を設置
用地対策官設置
7年 4月 1日 事業対策官設置
建設専門官(検査技術指導)廃止
8年 5月 11日 二丈監督官廃止
建設専門官(都市防災)設置
10年 4月 1日 電気通信管理主査設置
12年 4月 1日 建設専門官(事業調整)設置
建設監督官(筑紫野)廃止
13年 1月 6日 国土交通省に移行
14年 4月 1日 工事施工管理官設置
共同溝課設置
15年 4月 1日 福岡国道事務所に名称変更
有明海沿岸道路出張所新設

福岡外環状道路の事業を推進

福岡外環状道路外工事関係者安全連絡協議会
(野多目工区)

◎福岡202号外環状共同溝

●[第1工区]シールド工事/鹿島・戸田JV ●[第1工区]シールド第1立坑工事



●[第1工区]シールド第2立坑工事 ●[第1工区]シールド第3立坑工事 ●[第1工区]シールド第4立坑工事



●[第1工区]シールド第5立坑工事 ●[第1工区]シールド第6立坑工事 ●[第1工区]シールド第7立坑工事



●[第2工区]Bシールド工事/前田・東洋JV ●[第2工区]Bシールド立坑工事



●[第2工区]Aシールド第5立坑工事 ●[第2工区]野多目地区(その2)工事 ●[第2工区]野多目地区(その3)工事




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