建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年2月号〉

interview

─胆振・日高地区の精鋭企業トップに聞く─

会社独自でチェックシートを作成、お客の満足度をチェック

(株)草塩建設 代表取締役 草塩忠幸 氏

草塩 忠幸 くさしお・ただゆき
昭和 22年 10月 25日生まれ
昭和 46年 3月 日本大学経済学部卒業
昭和 46年 4月 株式会社草塩建設入社
昭和 54年 4月 株式会社草塩建設専務取締役就任
昭和 54年 7月 草塩砕石工業株式会社代表取締役就任
平成 6年 1月 株式会社草塩建設代表取締役就任 現在に至る
【公職】
日本砂利協会北海道支部日胆部会副部会長
北海道砂利工業組合日胆支所副支所長
室蘭間税会理事
登別市交通安全協会副会長
登別育英会理事
室蘭地区法入会登別地区青年部会相談役
登別建設協会会長
登別商工会議所常議員・建設部会長
室蘭地区法人会常任理事
(社)室蘭建設業協会監事
胆振林業土木協会監事
草塩建設は、昭和16年の創業以来、北海道胆振・日高管内において、公共土木を中心とした事業を展開してきた。今後も、激変する建設業界において、より一層の発展を続けるために、全社員一丸となって、ISO取得や安全管理に取り組むなど、強い体質の会社構築を目指す、同社代表取締役の草塩忠幸氏に、今後の建設業者のあり方などを伺った。
――この胆振管内では、最も古い老舗とのことですが
草塩
社歴は、創立で62周年を向かえました。設立では昭和35年に株式会社となってから、42年になります。初代である私の父が満州から帰国して設立し、2代目を長男が務めていましたが、体調を崩したことから、当時、専務を務めていた私が、平成7年に社長に就任しました。
――施工の得意分野は
草塩
土木専門で、建築は受注していません。おおむね一般土木全般を請け負っています。営業エリアとしては、あくまでも室蘭開建と、室蘭土現が中心になります。何年か前には、防災工事で開発局発注の日高方面の工事も受注していましたが、概ね、中心は胆振です。
水産土木、林業土木、農業土木に関しては、胆振支庁の公共事業を受注しています。
――土木専門業者から見て、今後の業界の先行きを、どのように展望していますか
草塩
国の政策を見ても先行きは、やはり工事が減少していく状況にあるのは確かでしょう。予算自体も大変な時期ですから、仕方が無いと感じています。しかし、必要な社会整備、インフラ整備は、まだまだ遅れていますから、生活関連基盤を整備した上で、業界の淘汰、篩い分けが進むものと思います。
ですから、篩い分けされない体制、組織づくりをしていかなければならないと思います。
――そのために、取り組んでいることは
草塩
2年前にISO9000を、去年はISO14000の両方を取得しました。それをベースにして、今後は、らさらに労働安全衛生に関するISO18000の取得も検討しています。これらを、社員全体が意識に持って、業務に当たっていかなければ、生き残れない時代だと思います。これを意識的に運用していくことにより、会社内全体の動きが多様化され、組織的に整っていきます。
地区においても、そのシステムの運用によって、手順を踏んでいるとなれば、行政からの信頼にも繋がり、顧客のニーズに応えられると思います。11月には、それらの認証を2000年版に改定し、12月にはISO9000と14000の複合審査も受けました。
――ISOの取得・維持は大変だと聞きます
草塩
あまり大きなビジョンや目標を設けずに、身近な所から着手することが大事です。新たに文書や書式を増やしたりするのではなく、すでに携わっている業務をマニュアル化し、簡素化すれば、技術者にも負担は掛からず、営業セクション、総務セクションなど、全組織に円滑にチェック体制がとれると思います。
――現実には、ISOの合理的で効率的な運用ができずに苦労している会社もありますが、その簡素化のノウハウがあるならば、コンサルタント業務も出来そうですね
草塩
当社では、ISO9000の審査員補の資格を二人の社員が持っています。そのうちの一人は、まだ20代の若い社員で、最近、地元紙に大きく報道されました。ですから、当社と同レベル、同規模の会社であれば、当社のマニュアルを活用していただければ、取得も容易だと思います。
そこで、今後当社の営業品目に、ISOに関するコンサルタント業務を加える計画です。
ISO担当の管理部を新設し、4人体制としています。今や修得することが業界挙げての一つの目標になっていますから、コンサルタント業務によって、当社自体のシステムも構築されていきます。
また、この地域は温泉施設も多いので、環境関係のISOに取得を目指したいという会社もあるようですから、そうしたところを対象に営業することも可能です。
――施工現場の安全管理も、優れているとのことですが
草塩
無災害記録としては、平成14年1月18日で2,400日を達成しました。これは、数ある50人程度の事業所の中での記録達成ということです。つまり、約8年にわたって無事故ですから、当社にとっては誇りです。
工事現場は常に12,3ヶ所を展開しており、100人もの作業員が働いている中で、一人の怪我人もなく、交通事故も起こさないということは、大変なことなのです。管理部が中心となって、毎日の安全意識を高め、全社を挙げて達成していることで、企業のイメージアップや信頼に繋がります。
また、登別市には室蘭土木現業所の出張所があり、私は、その出張所の安全協議会の会長を務めています。登別建設協会と同様に、様々な事業展開をしています。安全パトロールや職員との技術懇談会を開いたり、そうしたコミュニケーションを通して、この時代の建設業のあり方を見据えた、一歩進んだ事業展開をしているので、土木現業所からは評価を頂いています。
――最近は、行政の工事発注の仕方も、かなり改正されましたが、業界側としてどう感じていますか
草塩
現在は、競争性を高めるという目標で、行政側も発注しています。我々もそれに沿って、積算、競争体制というものを確立していかなければなりません。
また新たな規制も導入され、技術者などの配置条件も厳しくなりました。そのため、職員数を増やしていかなければなりませんが、一方では逆に、発注が減り続けています。従来なら、地場産業育成が発注要件の項目にありましたが、今はそれも無くなりつつあります。したがって、競争に打ち勝つ体制づくり、組織づくりが必要です。
――しかも、積算基準もかなり厳しくなっていると、よく言われます
草塩
工事に関しては、安く施工できた方が良いということでしょう。確かに「なるべく安く」と言うなら、価格を落としても出来ないことはありません。しかし度を過ぎると、施工管理、安全管理などが手薄になり、労災や工事の不正などが起こりやすくなると思います。そもそも、そのチェック体制もおろそかになるでしょう。
したがって、あくまでも適正な積算をして欲しいですね。施工会社も、それなりの職員を抱えて地域に貢献する為には、やはり利益を出さなければできないわけですから。適正な利益を得て、そこからさらに、納税していくのが理想で、それによって資金の循環も生まれ、企業力もつきます。
――今日では、生活インフラであっても、地方で道路や河川を整備してどうするのかという批判もあります
草塩
地元では、新たに道路を新設したり、無駄なダムを造ったりという様子は、見受けられません。しかし、やはり海岸にしても生活が脅かされない安全な、長期的な防災工事の対策は必要だと思います。特に、この地区では下水が遅れているので、下水道施設を非常に急ピッチで進めています。
また、登別漁港は、第3種漁港へと昇格したので、それに伴った浸水護岸整備や、関連施設の整備を実施してもらいたいですね。また、漁家にとっても、より一層高い作業環境を目標にしたビジョンを持っているので、これからは生活と密着した潤いのある整備事業を進めて欲しいと思います。
――地域経済の今後に向けて、活性化の起爆剤となるプロジェクトはありますか
草塩
登別市でも様々な政策を検討していますが、民間レベルでも「明日を創る登別の会」を設立して、「まちづくりのためのプランづくり」などの活動を、npoとして行っています。計画では、登別漁港を再整備して活用しながら、人のネットワークを形成したり、観光客の動員を増やしたり、様々な産業を生み出していくということです。これによって、私はあらゆる分野で、大きな需要が生まれてくると思います。
このプロジェクトを成功させるためにも、私たちは建設業という立場から、ハードな面だけではなく、ソフト面の部分でも応援、協力していきたいと思います。
これからは、すぐの目先の市場性に左右されるのではなく、企画によって需要を創出していくことが、新しいスタイルとして主流になるのではないでしょうか。
――そうした状況も踏まえて、会社の今後の将来像をどのように考えていますか
草塩
将来像としては、色々な選択肢がありますが、新分野に進出し、異業種との連携を図ることです。運営については、協同組合方式という手法もありますが、私としては、この草塩建設を、財務内容において全く心配ないような基盤づくりが先決です。
これをしっかりと構築することにより、将来、何があっても対応していけると思います。未知の将来図を描いても、仕方がありません。しっかりと周辺状況を見ながら建設業として、充分に成り立つよう、人材育成し、体制づくりをしていきたいと思っています。
一方、発注機関に対しては、工事検査時の工事成績表の値を高めることにポイントをおいています。目標値を、各技術者が持つようにしています。一方、当社独自でもお客様の満足度をチェック、調査する意味で、独自の調査シートを作り、発注者を対象にアンケート調査をしています。そうしてお互いに、信頼関係ができれば、今後の営業面でもプラスとなります。
――自治体によっては、とかくゼネコン頼みとするところもあります
草塩
これは、市町村首長の考え方次第ですが、いつも地場は不安と考えていたのでは、地場企業自体の技術力も、研究心も起こりません。書類作成も施工も、何もかも全てをゼネコンに任せて、地場企業はそれに従っていれば、安心なのでしょうが、それでは地場企業の進歩がありません。
地場企業の活用によって、地場企業も様々な事態を予測し、シュミレーションをしたり、お互いに勉強をしあって、より一層の技術力を高めていかなければなりません。

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