建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年2月号〉

interview

ハード面からソフト面への転換へ

高齢者のため安心して暮らせるまちづくりを目指す

北海道増毛町長 石崎大輔 氏

石崎 大輔 いしざき・だいすけ
昭和 28年 12月 9日生まれ
北海道増毛町出身
昭和 51年 3月 東海大学海洋学部卒業
【職歴】
昭和 51年 4月 北海道漁業協同組合連合会入会
昭和 55年 8月 石崎漁業株式会社入社
平成 6年 9月 石崎漁業株式会社代表取締役社長就任
平成 7年 9月 北晨開発株式会社代表取締役社長就任
平成 8年 9月 合併により やまか海洋漁業株式会社代表取締役会長就任
【公職歴】
平成 3年 5月 増毛町議会議員当選
平成 10年 12月 増毛町議会議員辞職
平成 11年 2月 増毛町長当選 一期目 現在に至る
秀峰暑寒別岳の麓、温暖な気候と自然に恵まれたまち・増毛町。漁業・農業を基幹産業として発展し続けてきたが、産業構造の変化や急激な高齢化の進行、市町村合併など行政課題は山積みだ。町議会議員から町長へ就任した石崎大輔氏に、この4年間の総括とこれからのビジョンを伺った。
――在任4年間の感想は
石崎
町議会議員から町長に就任しましたが、野球で例えるならば、議員というのはベンチから指導しているようなもの。しかし町長は、マウンドに立ってピッチャーとしてゲームづくりをしなければなりません。この4年間は、議員時代には味わえなかった数々の経験をさせていただきました。本当に行政課題は山積みであり、懸案事項などに追われ、アッという間の4年間でしたね。
――どのような町政を進めてきましたか
石崎
私は選挙公約には、3つの課題を挙げており、それらを中心に考え、町政を進めてきました。
1つは、町民の意見を多く取り入れること。これは、町民の意見を施策、町政に反映させるようなマチにしたいということです。2つは、基幹産業の振興です。特に増毛は漁業が基幹産業ですから、資源豊かな海づくりを進めることが大切です。また農業では果物や米などの製造販売ですね。3つは自然と共生したマチづくりです。これはゴミ処理の問題など、人と自然にやさしいマチづくりです。
――現在進めている、増毛町まちづくりプランは
石崎
平成11年度より計画を策定し、12年度から実施しています。まちづくりプランの基本テーマは、「自然と共生、確かな未来へ」。6つのまちづくりを基本目標と定め、町民と一体となったまちづくりを推進しています。
また、この計画は、平成21年度を目標とした10ヶ年計画で進めていますが、策定時より町総合計画審議会において常に検討を重ね、優先順位を決め、常に年度ごとに見直しをしています。やはり、今日の厳しい時代ですから、事業についてはより議論を重ね、見直しをしていくことが必要でしょう。
――基幹産業の漁業については
石崎
漁業の歴史は古く、宝暦増毛場所の時代から豊富な水産資源に恵まれ、漁業のまちとして栄えてきました。現在は、おかげさまで漁業は右肩上がりの状況で、ホタテやタコ、甘エビ、鮭、ウニ等を主要産物として、毎年、水揚げ高が上昇しています。
また、明日を担う後継者も順調に育っている状況で、水産加工業では人手が足りない状況ですね。
しかし、漁業を取り巻く環境は、魚価の低迷や磯焼け現象による沿岸資源の枯渇など、厳しさを増す傾向にあります。今後も漁家経営の安定を図るため、栽培漁業に積極的に取り組み、ホタテ貝養殖、サケ、マス、ヒラメ、ソイなど、より一層の資源増大に取り組んでいきたいですね。
――農業については
石崎
農業は、果樹については、リンゴの他、サクランボ、ナシ、ブドウなど数多くの果樹を生産しており、良質果樹の産地としての知名度も向上し、順調なのですが、輸入自由化による米価の低迷などで、稲作を取り巻く環境は厳しいものがあります。
しかし、米は道内の食味を重視したランクのベストテンに入っており、高品質な一等米の出荷を続けています。今後はさらに良質米の生産と安定出荷のため、農業協同組合との連携・タイアップを図りながら、農業の振興に努めていきます。
――増毛町の高齢人口比率は、比較的に高いとのことですが
石崎
町にとっては、これが最大の課題かもしれません。現在、増毛町の高齢者比率は約33%とかなり高く、全道平均でみてもかなり高水準にあります。道内でもトップテンに入るほどです。
ところが、高齢者比率に対する介護サービスの認定率は低く、介護保健サービス受給者は約9%ほどしかいません。これは逆に、漁業や農業という定年がない職業の方が多く、みな生き生きと暮らしていることの証と言えると思います。とはいえ、高齢者対策は充実させなければなりません。
現在、増毛町では、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどの介護施設については、高齢者人口に見合った施設数は揃えています。また、1階部分を高齢者向けの住宅として「すまいる団地」を建設するなど、高齢者が使いやすい施設も揃っています。
また、現時点では増毛には住んでいなくても、老後は増毛で暮らそうと考える人が多く、今後は高齢者比率がより高くなる可能性があります。そうした人々のためにも、安心して暮らすことのできる福祉のマチづくりを進めていきたいですね。
――観光振興については
石崎
我が町は、暑寒別道立自然公園をはじめとした自然豊かで、四季を通じて果樹や海産物が味わえ、平成6年には、増毛港内にノールマリーナ(ヨットハーバー)を整備しました。また、ましけリンクスゴルフ場や暑寒渓流の森、オートキャンプ場、スキー場など、複合的レジャーの開発によって、滞在型観光地を目指しています。
この他、明治・大正時代からの建造物が多く残存していることから、昨年秋に増毛駅前の歴史的建造物群や増毛小学校が北海道遺産に選定され、今後の本町の観光振興の拠点として期待を寄せています。
現在、これを全面的にアピールするため、北海道遺産に指定されたものをポスターに起用していますので、さらなる観光地としてアピールしていきたいですね。
――町村合併については、どう考えていますか
石崎
合併問題については、広報に関連記事を掲載したり、13ヶ所で合併問題に関する地域懇談会を開催するなど、住民の声を幅広く聴取しています。
現在、道のシュミレーションでは留萌市、小平町、増毛町3市町による合併案が提示されていますが、留萌市より増毛町の方が歴史が古く、仮に合併する事になったら増毛の名前が消えるのはさびしいという意見もあります。
また、増毛町は南北に縦長い地域で、海岸線は35qもあります。そのため、留萌に近い地域では、生活圏は留萌市なので合併に肯定的な方もいますが、最も離れている雄冬地区では行政サービスが低下するなどの懸念から否定的で、地域ごとに意見が食い違っています。
現在は、議会での市町村合併問題特別委員会や、留萌管内南部3市町で研究会を設置するなど、合併問題について論議しているので、そこに町民の意見を反映させながら、方向性を示したいと考えています。
――今後の町政全般における課題は
石崎
やはり、最初に解決しなければならないのは財政問題です。今後も厳しい情勢が続くと予想されることから、経費を削減していかなければなりません。
現在は、町長、助役などの給料も削減しておりますが、さらに財政の健全化を目指したいと思います。同様に、経費削減のため、ハード面での施設整備などは、当面は我慢をしていかなければなりません。今後はソフト面でのサービス向上を目指していき、複雑多様化する行政ニーズに対応していきたいと考えています。

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