建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年2月号〉

interview

街と道路を美しくする郷土愛を持ち続けたい

東邦コンサルタント (株)代表取締役 井上 淳 氏

井上 淳 いのうえ・じゅん
昭和 3年 6月 生まれ 釧路市出身
昭和 20年 8月 参謀本部陸地測量部教育部52期卒(陸軍技手)
昭和 24年 5月 井上測量事務所創業
昭和 25年 3月 釧路国支庁拓殖課勤務
昭和 26年 7月 北海道開発局勤務
昭和 26年 10月 釧路支庁へ出向
昭和 33年 10月 釧路浪花郵便局長拝命
昭和 40年 9月 井上測量設計事務所再開
昭和 42年 3月 東邦測量鰍ニなる 代表取締役就任
昭和 57年 9月 東邦コンサルタント(株)に社名変更

【賞罰】
平成 14年 10月 釧路市民貢献賞受賞
平成 14年 11月 勲五等瑞宝章受章

【主な公職】
日本測量調査技術会 理事・北海道ブロック委員長
全国測量設計業協会連合会 理事
日本測量協会北海道支部 幹事
日本土地家屋調査士会連合会 理事
釧路土地家屋調査士会 会長
北海道測量設計業協会 副会長
北海道農業土木測量設計業協会 理事
釧根測量設計業協会 副会長
東邦コンサルタントは、北海道を代表するコンサルタント会社として、着実な発展を遂げている。また同社代表取締役の井上淳氏は今回、勲五等瑞宝章、釧路市民貢献賞を受賞。その仕事の取り組みが評価された。同氏に今後の測量・設計・コンサル業の展望について伺った。
――会社の来歴を伺いたい
井上
昭和24年5月に、井上測量事務所を創業したのがスタートです。その後、釧路支庁や郵便局に勤め、昭和40年9月から井上測量設計事務所を再開しました。また、昭和42年3月に東邦測量(株)、昭和57年9月に東邦コンサルタント(株)へ社名変更をしました。
――会社として持ち続けた理念は
井上
基本的に私は会社を大きくしたいといった野心は、ありません。事務所を再開した時は、測量業の基本姿勢として事務所は200坪、技術者は50人と考えていました。他に、学歴や性別、年齢に関係なく働ける場所にしたいと考えました。それ以外は社員が生活に困らないよう、何とか自分達で自立していこうと思っていました。贅沢をするためでなく、そうした生計確立のために仕事をしてきたわけです。
現在は、社会奉仕や社会貢献などと体裁の良いことを言っていますが(苦笑)、真の目的は社員の生活安定、これが第一前提です。最終的に業務を通じて会社運営が順調にいけば、これが社会貢献になるはずですね。
――近年の公共事業批判について、コンサルタントを担う企業としての見解は
井上
今までは国の政策により、中小企業が成立しました。私達も戦後改革から、生活や富を向上させるために、公共事業を受注してきたつもりでした。しかし今は、それが罪人のように扱われています。
しかし、過去の公共事業にしても全部が全部、悪ではありません。一部の人達が不正を働いたのであって、現場で仕事をしている人は決して悪ではありません。
ところが、私たちがそれに対して批判の声を挙げても、世の中の流れに逆らうだけです。今考えるべき事は、今後迎える姿はどんなものかです。公共事業が目の敵にされている中、その対象の袖を振っている以上は、この業界は、いずれ大変革を迎えるものと思います。
――公共事業を行う業界にとっては、厳しい現状ですね
井上
私たち測量・設計・コンサル業という言葉も、次第に無くなっていくのではないでしょうか。今の社会は、例えば、ご飯を炊く鍋や釜を買う場合、金物屋に行くより家電販売店に行きますね。そのため、金物屋は滅び、家電屋は栄えています。内情はあまり変わらず、名目が変わるだけですよ。
これは時代が変化していることを表しているのです。それは設計業界も同様で、例えばgpsにしても、元々は測量の専属業務でしたが、最近はそれが電気屋で売られているものと思われています。
今は10mや100m違っても、車に乗る人や買い物客は全く不便を感じず気にもしません。そういう時代に、測量や設計というイメージでは通用しません。その意味で測量、設計という業種は、無くなっていくと思います。
コンサルにしても、最近は金融コンサルなどを連想して悪いイメージを持たれています。結婚詐欺も結婚コンサルと称していますからね(笑)。その意味で、これからは測量コンサルという言葉も廃れていくでしょう。
これからはやはり、情報産業という性格をPRしていくべきです。情報を産業として、それを売るということです。実態は変わらなくても、測量・設計・コンサルなどの言葉を使わずにです。
――看板の塗り替えということですね
井上
しかし、根はしっかりと存在しなければいけません。表向きはそうでも、今こそ中身の体制を整えることが必要です。それには何が必要かと言えば、やはり社員の心を信頼感で繋ぐことです。その一つとして、当社では、資格を取得したら資格手当を与えることにしており、社員はみなやる気充分で、次々と資格を得ています。
二番目は、自己資本の充実による社内財政の健全化でしょう。やはり経済の変化に対して、どう対応するかですね。
――今後の地域における東邦コンサルタントの意義は
井上
現在、地場産業の育成と言う政策は無くなりつつあると言われ、札幌で受注しても、釧路で受注しても、みな同格だと思われています。しかし、郷土愛や愛国心を持つ地場産業が無ければ、マチは真に綺麗にはなりません。北海道には北海道の地場産業があり、釧根には釧根の地場産業があるからこそ、地方が栄えるのです。
また、災害時に迅速に助けてくれるのは、やはり地場企業です。やはり私達はどう批判されようとも、郷土をしっかりと綺麗にする郷土愛は持ち続けたいですね。
――ところで、土地家屋調査士の功績で勲五等瑞宝章、釧路市の社会部門で釧路市民貢献賞を受賞されましたね
井上
勲五等瑞宝章は11月に、釧路市民貢献賞を10月に受賞しました。道東4支庁管内で、勲五等をいただいたのは、土地家屋調査士としては、私が第一号になります。
一言で言えば、驚きというより、今までの私の仕事に対する集積が評価に繋がったと思います。この賞をいただいたことは、社員の士気高揚には非常にプラスですね。
しかしながら、私一人の力ではなく、関係された多くの方々の御理解・御協力をいただいたからこそ、受章をできたと思っています。

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