建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年2月号〉

interview

北海道の自律はどこまで達成されたか

北海道スタンダードは確立できたか

北海道知事 堀 達也 氏

堀 達也 ほり・たつや
昭和 10年 11月 22日生まれ、北海道大学農学部卒
58年 5月 北海道林務部林産課長
59年 4月 北海道林務部道有林管理室経営管理課長
60年 4月 北海道総務部知事室秘書課長
62年 5月 北海道生活環境部次長
63年 4月 北海道土木部次長
平成 元年 4月 北海道総務部知事室長
3年 5月 北海道公営企業管理者
5年 6月 北海道副知事(〜平成6年11月)
7年 4月 現職、現在2期目
通算2期目となる堀道政の任期も、終了しようとしている。この間、政策の柱として掲げてきた、北海道の自律と構造改革はどれくらい達成できたのか。これまでの政策を振り返り、達成度について堀達也知事に語ってもらった。
――初当選以来、今日に至るまで、社会は信じられぬスピードで劇的に変化しましたね
経済のグローバル化が急速に進み、市場競争がさらに厳しさを増す中で、我が国は、経済の低迷、財政の悪化、少子・高齢化の進行など大きな課題に直面しています。それに呼応して、北海道の開発と発展を支えてきた枠組みも大きく変わってきています。
北海道は、自らの考えと行動で新しい進路を拓いていかなければならない時代を迎えているといえます。
――これまで一貫して北海道の自律を訴え、実践してきましたね
私は、こうした厳しい時代だからこそ、もう一度自らの価値や可能性を見つめ直し、「自主・自律の北海道づくりを始めよう。今を好機と捉えよう」という考えに立って、平成10年に北海道の構造改革に取り組むことを提唱し、平成11年に策定した「自主・自律の北海道をめざして、−構造改革の基本方向−」に沿って「経済」、「行政」、「地域社会」の3つの分野と、これらを支える「意識の醸成」、「社会資本の整備」を加えた5つの柱で、独自の構造改革に取り組んできました。
――そのために、グローバルスタンダードではなく、北海道スタンダードにこだわってきたわけですね
新しい時代の北海道を創っていくのは、すべての道民の方々の意欲と行動です。依存・横並び指向ではなく、自主・自律の意識でー歩ずつ前進し、一つひとつの成果を積み重ねていくことが大切です。
このためには、全国一律あるいは中央中心の画一的な物差しではなく、北海道の特色を生かした自らの価値基準や尺度を基にした、北海道ならではの暮らし、文化、産業などのあり方や、それを支える仕組み、ルール、運動などを「北海道スタンダード」として生み出し、北海道に対する愛着や自信を深めることにつなげていこうと考えました。こうした中で、「北海道遺産構想」や「アウトドア活動の資格制度」、「クリーン農業」など本道発の新しい価値の体系づくりを目指した取組を進めてきました。
――それぞれの構造改革に向けては、どのような取り組みをしてきましたか
「経済構造改革」においては、民間主導の自立型経済への転換を目指して、地域の特色ある産業を核とした産業クラスターの形成や、アウトドア活動など本道の特性を生かした新しい観光の振興、さらにはitやバイオなどを生かした取り組みを進めてきました。
また、私たちが自らが取り組む「行財政システム改革」においては、情報公開制度の充実や、政策評価と連動した予算編成など様々な改革に取り組んできており、昨年の10月には、これまでの道政改革や構造改革の取り組みを踏まえて、道政を進める上で基本となる理念や原則を明らかにした「行政基本条例」を制定するなど、分権時代にふさわしい行財政システムの確立に向けた取り組みを進めてきています。
さらに、「自律した地域社会づくり」においては、市民と行政との協働に向けた環境整備を進める中で、様々な分野で活動するNPO法人が毎年着実にその数を増やしてきており、住民参加による河川や公園の維持管理や人々が互いに支え合う地域通貨の取組みといった、住民の方々自らの手による地域づくりが各地で拡がりを見せてきています。
――経済の自立化に向けた改革においては、具体的な成果はありますか
産業クラスターでは、現在、道内各地で26の地域クラスター研究会が発足し、新たな産業群(クラスター)の芽となるモデル事業も相次いで事業化・商品化されるなど具体的な成果が現れてきています。
また、アウトドア資格制度の創設など北海道らしさを生かした体験型観光の新たな取り組み、さらには札幌を中心としたIT関連産業やバイオなどの最先端研究施設の集積など、産学官や産業間の連携の下で、本道の優位性を仲ばし、また、新たな優位性を創り出そうとする取り組みが進められてきています。
――行財政システムの改革では、見るべき成果はありましたか
行財政システムの改革においては、改革の基本的な考え方とその工程を示す「行財政システム改革の実施方針」と「実施計画」を策定し、これらに沿って、情報公開制度の充実や政策評価と連動した予算編成、あるいは、組織機構や職員数、関係団体の見直し、市町村への権限移譲など様々な改革が着実に進んでいます。
特に、昨年の10月に、制定した「行政基本条例」は、まさに分権時代にふさわしい行財政システムの確立に向けた現時点での集大成であると考えています。
――地城社会づくりにおいては、道民が呼応できるような政策誘導はできましたか
「市民活動促進条例」の制定や「市民活動促進センター」の設置、あるいは市民との相互理解を深めるための「市民活動地域交流会」の開催など、協働に向けた環境整備を進める中で、市民活動が活発化し、住民自らの手による地域づくりへの気運が拡がっていることを大変心強く思っています。
また、住民やNPOなどが主体となって、地域の様々な課題を逆にビジネスチャンスとして捉えて、事業を展開する「コミュニティービジネス」は、新たな地域づくりの手法として、また、地域経済の活性化にもつながることが期待されるので、積極的に応援していきたいと思っています。
――開発予算の動向が、とかく懸念されますが、社会資本は納得のいく整備が行われてきたでしょうか
北海道発展の基礎となる社会資本の整備に関しては、公共事業縮減の動きがある中で、もはや今後は「あれも、これも」ではなく、北海道の将来に真に必要な社会資本を選択し、重点的に整備していく必要があります。
そのため、「北海道における社会資本の整備方針」を策定し、地域が主体的に社会資本整備のあり方などについて検討を行う「地域連携会議」などを活用しながら効果的、重点的な整備に努めました。
――北海道が自律するためには、地域の労働力を十分に吸収するに足る雇用も必要ですね。それを踏まえて、北海道の今後を、どう展望していますか
現在、北海道の経済・雇用情勢は、かつてない厳しい状況におかれています。また、国の構造改革の影響の顕在化も今後、懸念されることから、緊急的な雇用対策と併せ、自立型経済構造への転換を最優先として、独自の構造改革をさらに加速させるよう全庁を挙げて取り組み、早急に効果を発揮しなければなりません。
私たちの暮らす北海道は、「食」と「環境」、「質の高い暮らしと癒しの空間」、「ITなど未来を拓く産業の芽」、「世界に広がる北の玄関ロ」など、自立した経済社会を実現し、我が国に一層貢献する大きな可能性と潜在力を秘めています。
こうした北海道に、私たち一人ひとりが自信と誇りを持ち、産・学・官の連携をはじめ、北海道が一体となって知恵と力を結集することによって、今日の困難を乗り越え、確かな未来を切り開いていかなければならないと考えています。
そのためにも、地域で頑張っている方々の意欲と努力が報われるよう、道としても、そうした人々をしっかりと支える具体的な取り組みを積み重ねていかなければならないと考えています。

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