建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年1月号〉

interview

道路・橋梁・護岸から農業農村整備まで幅広い土木施工の実績

米作りをインフラ整備の側面で担うという誇り

(株)生駒組取締役社長 生駒 雅彦 氏

生駒 雅彦 いこま・まさひこ
最終学歴 慶応義塾大学経済学部 卒業
昭和 52年 4月 1日 株式会社生駒組 入社
昭和 61年 5月 24日 株式会社生駒組 常務取締役
平成 6年 5月 24日 株式会社生駒組 代表取締役副社長
平成 13年 1月 4日 株式会社生駒組 代表取締役社長
<主な公職>
社団法人旭川建設業協会理事
社団法人うまの道ネットワーク協会理事
社団法人北海道土地改良建設協会理事
社会福祉法人新生会監事
旭川商工会議所議員
旭川中法人会青年部幹事長
旭川ロータリークラブ会員
生駒組は、現任の生駒雅彦社長で3代目となる。橋梁、護岸からスタートして、現在は土木全般を対象に施工実績を積み上げている。バブルの時代にも、本業以外には手を出さず、堅実経営に全力を尽くしてきた。最近は農業農村整備でも受注を伸ばしているが、同社長は「我々も米作りの一翼を担っているという自負を持って、取り組んでいる」と語る。
――現社長で三代目となりますが、設立当初は橋梁工事がメインだったようですね
生駒
初代の生駒清が、石川県から移住し、旭川の西村組に就職しました。そこで土木の知識・技能を習得して、大正13年に創業したのが生駒組です。昭和25年に組織変更しました。
それからは官公庁発注の橋梁や、護岸を主体とした建設工事を手がけてきました。それ以降も北海道、開発局、国、旧国鉄、営林局といった官庁関係の受注が中心です。
――近年の受注動向は
生駒
受注比率は、ほぼ100%が土木です。年によって建築関係の受注がある場合もありますが、90%から100%が土木です。
――建築事業は、その需要が景況に左右されるので、不況下の今日では進出も困難では
生駒
何度か、建築分野にも進出しようという気運もありましたが、根が土木屋ですから容易ではありません。素人が背伸びをしても、難しいものです。業者の数も多く、あまり効率が良い状況とは言えないようです。したがって、無理に業務拡張をする必要はないものと考えています。
――建築分野は過当競争で、発注者がダンピング防止のために入札価格の下限を設けている自治体もあるようですね
生駒
経営事項審査結果の評価点を維持していくために、売り上げを拡張し続けなければならないという課題もありますが、決して器用な会社ではありませんから、今後も土木一筋で生きていく考えです。
――土木では、今後とも橋梁、道路関係が中心になりますか
生駒
道路も河川もそうですが、農業農村整備は元より幅広く施工しています。
――ゼネコンのみならず、地場建設業界も業界再編の必要性が論議されています。生駒組としての考えは
生駒
上川管内でも、何件かの合併協議が行われています。まだ数年は先を見てみなければ、結果については分かりませんので、静観していきたいと思います。ただ、建設会社の数が多すぎるのは、紛れもない事実ですから、それを減らさなければならないのは確かですね。
その中で、我が社としても生き残っていくためには、会社としての贅肉を落としていかなければならず、無駄を省いていかなければならないと思っています。しかし、社としては今のところ、合併しようという考えはありません。何年か先に、どうしても必要であれば、その方向になっていきますが、まずは贅肉を落としてスリム化し、現況の中で耐えられるようにしていきたいと考えています。
――公共事業において、発注方法の改正が行われた結果、ゼネコンも地場企業も含めて競争が激化していますね
生駒
最終的には大手と地場中堅企業との棲み分けが確立していくのではないかと展望しています。大規模な国家事業は大手に任せ、地元に密着した事業は地場企業が担う状況へ落ち着いていくと思うのです。
当社は、古くから「橋梁の生駒」と呼ばれてきました。したがって、もちろん橋梁施工にも力を入れていきますが、それだけでは足りませんから、土木工事については全分野で施工できる体制を堅持したいと思っています。
無駄を絞っていくと同時に、ある程度はマンパワーとして、有能な人材も確保していかなければなりません。
――新人の採用は
生駒
近年は高卒の就職状況が悪く、買い手市場となっているため、非常に優秀な人材が確保できる状況でもあります。優秀な人材が溢れてきているので、来年も技術系の人間を採用する予定です。
会社の基本方針の一つは、「社内円満」ですから、まずはみんなと仲良く融和できる人材を求めています。高卒であれ、大卒であれ、入社して1年目や2年目では、効果的な仕事が出来るわけでもありませんから、まず元気に会社に溶け込んでもらい、その中で自分の能力を発揮し活躍できる人材を確保したいと思います。
――将来像として描いている企業像は
生駒
やはり土木を通じて北海道に密着し、旭川、上川に住んでいる人たちとコミュニケーションをとって、北海道や地域に役立てるような会社にしていきたいと思っています。逆に土木以外のことに着手しよういう考えはありません。
当社はバブル時にあっても、不動産関係には一切手を出しませんでした。その代わり余録にも預かってはいません(笑)。しかし、そのお陰で、バブルがはじけたときにも、何らの影響も受けなかったのです。今後も、その姿勢を崩さずに行こうと思います。
ただし、あまりにも保守的なのでは、企業の発展はありませんので、公共事業が減少する中で、当社としてはより新しい技術を取り入れていきたいと思います。
――近年は、公共事業とそれを施工する建設業に対するイメージがダウンしており、このために土木への尊敬の念が薄れている一面があります
生駒
たとえば、高速道路の建設中止が論議されたりしていますが、高速道路の存在によるマイナス要素は全くないと思うのです。景気というのは上下しますから、やがて回復したときには必要論が必ず唱えられると思うのです。
高速道路は国民にとって不可欠のものです。全国に背骨が通り、そこに細かい支線が出来るというのが日本の交通網です。北海道でもほぼ完成間近のところまで来ているのですから、途中で止めてしまうのはナンセンスだと思うのです。
だから細々とでも良いから完成に向けて整備を続けてもらいたい。それによって、需要も生まれるのですから。
――財政の不足から、近年はpfiという手法も提唱されていますが、可能性についてどう考えますか
生駒
例えば、公宅などを建設する際に、建設会社の所有地を利用してもらい、そこで施工と運営を官民で一緒になって行うという手法もあると思います。とりわけ、行政機関の公宅などは、その手法が有効ではないかと思います。
――ところで、公共工事の発注における透明性、公平性確保の名の下に、入札にも市場原理が導入されてきています
生駒
ランダムカットについては改善の余地があると思います。問題は、適正な技術力を持った企業が、入札参加の機会を得られなくなることです。適正な技術力を持った企業が、常に入札参加できる仕組みに改善してもらいたいと思います。
しかし、一方では国土交通省の建設マスターという制度もあります。今年は、当社の社員も顕彰されました。これは非常に良い制度だと思いますよ。現場の最先端で働く技術者の中から選ばれる訳ですから、彼らには非常に励みになります。これから建設業界に入ってくる若い人たちにとっても、このような制度があるということは励みになりますので、裾野を広げていただきたいと思います。
土木と言えば、今までは現場も汚く、土を扱う仕事なので汚れとは無縁ではなく、宿舎にしても汚いイメージがありました。しかし、最近は違います。イメージアップのために、住み易い現場、働きやすい職場にするようにしていますので、それをもっと市民・道民にprしていく必要がありますね。
――発注の主たる事業者である行政への要望などはありますか
生駒
お願いしたいのは、公務外においても業界との意見交換の場をつくって貰いたいということですね。日本人というのはシャイな国民性です。常識の範囲で、少しくらいアルコールを介した方が、本音の意見交換も出きます(笑)。
現場でどんなトラブルがあるのか、現場で抱えている問題点は、発注者と受注者という関係に基づく遠慮から、なかなか本音は出にくいものです。ザックバランに話が出来るような場面があればと思いますね。
――施行を担う地場企業としての主張はありますか
生駒
入札条件を撤廃し、完全に自由にしてしまうと、安ければ何でも良いということになります。赤字覚悟で入札してくる会社も現れるでしょうから、何らかのかたちで、どこかで縛りをかける必要があるのではないでしょうか。地域で行う事業の入札参加エリアや、会社の規模、施工実績など、何らかの制限を設けなければ、ただ安ければ良いということになってしまいます。
例えば、外国の企業が参加して、地域に住んでいる人たちと、どのようにしてコミュニケーションしていくのでしょうか。やはり、そこには日本人が関わっていかなくてはならず、そのために日本の下請けを使っているわけです。それならば、最初から地元の企業が受注し、地元に納税した方が遙かにメリットは大きいと思います。
また、地域性という問題もあります。そこに住んでいる人たちのための施設を作るわけですから、住んでいる人たちが何を要求しているのか、何が必要なのかは、同じ地域に住んでいなければ分からないものです。そのように、同じ状況下で生活し、問題を共有している会社が、それを求める市民、住民のために仕事をしていくことが大事なのだと考えます。
農業にしても、米農家というのは、国民の口に入る主食を生産しています。私たちは農業農村基盤整備を受注し施工していますが、その立場で、一緒に米作りをしているという自負を持っています。だから農家のためだけではなく、国民の食料をまかなう一翼を担っているのだという意識を持っています。

HOME