建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年11月号〉

interview

人間健康宣言は穂別の永遠のテーマ

気候風土を活かし質の違う農作物を

北海道穂別町長 横山 宏史 氏

横山 宏史 よこやま・ひろし
生年月日 昭和19年12月6日生まれ
昭和 39年 3月 北海道立自治講習所修了
昭和 39年 4月 穂別町役場採用
昭和 62年 1月 農業振興課長
平成 7年 4月 穂別町行財政改革推進本部事務局長
平成 8年 10月 穂別町教育委員会 教育長
平成 10年 11月 穂別町長就任
北海道胆振管内東部に位置し、豊かな緑に育まれた肥沃な山あいのマチ、穂別町。「人間健康宣言」を宣言して以来、健康にこだわるまちづくりを進めている。健康に対する新しい概念を持ちながら、経済や社会生活の多様化に取り組む、穂別町長・横山宏史氏に、今後のマチづくりについて伺った。
――まもなく町長1期目が終了しますが、在任中の活動をどう総括しますか
横山
21世紀という時代の変わり目に、そして本年は、隣の鵡川町から分村して開町90年という節目に立ち合った点では、率直に感慨を覚えます。1期目としては、財政安定の見通しを立て、身の丈にあった運営を行うことや、派手でなくても長く安心して住めるマチづくりを目指してきました。
平成7〜8年にかけて、私は行財政改革の担当事務局長の立場で、立案の責任者でしたから、穂別町の台所事情は、ある程度見えていました。行政のメンテナンスという言葉が適切なのか解りませんが、これを優先すると割り切って進め、それに追われましたね。
――人間健康宣言は、約25年も前からのスローガンだとお聞きします
横山
「すべての人に豊かな心と健やかなからだを」という意味で、これを昭和53年に宣言して以来、まちづくりの目標に取り組んできました。現在でも、表現そのものの意味合いは、時代に色褪せていないと感じています。
新総合計画を昨年からスタートしていますが、その時も町民に、この人間健康宣言は、穂別の永遠のテーマとして継承しようと伝えました。アンケート調査をしても認知度はかなり高いものでした。
また、この宣言は、人間の健康だけではなく、健康に関わる色々な取り組みを通じて得られるものを総合的に表現したものです。その中で例えば、製薬会社を誘致したことや、健康に関連する雇用を創出、福祉施設の誘致をしたのも、健康に関することだからです。
また、人間の健康として取り組んでいるのが、食糧に関係する農業です。穂別は、北海道の中でも先駆的に減農薬・無農薬・有機栽培などに、取り組んできました。それが成果として残っています。
――その農業については、どのように振興させてきましたか
横山
この4年間で5回も豪雨災害が起きたことは、穂別にとって深刻な事態でした。また昨年は低温災害、bse問題などによる価格破壊の状態で、農家経済は大きな打撃を受けています。これを放っておくことは、穂別の場合、完全に地域の崩壊に繋がってしまいます。しかし穂別町が進めてきた、安全・安心の農業への取り組みが間違っていない証明にもなりましたので、また力をつけていきたいですね。
しかし、穂別は一戸平均6〜7haですから、大規模農業ができる状況ではありません。とはいえ、気候が内陸型で土壌が良いことから、全道で穫れる作物のほとんどが作れる状況です。農業活性化のためには、量が少なくても良い品質で、消費者に喜んでもらえる農業を目指さなければなりません。
――林業の再生については
横山
穂別の90%は森林が占め、かつては森林王国として、「穂別オーク」という銘柄があったほどです。しかし、戦後の乱伐で切り尽くしてしまい、林業関係の事業者が撤退し、現在は森林組合以外ありません。2万haの国有林は、たった二人で管理し、1万3千haの道有林には、地元駐在者がいません。この状況で本当に良いのかという気持ちを持っています。
そこで、地元の山元を、我々に管理させていただきたいと国に提案をしています。山がこれだけあっても、国有林と道有林などは、我々地元の思い通りにはできないので、これを何とか我々の意志に基づく森林管理ができれば、新しく雇用の創出、また産業活性化に繋がると考えています。
――穂別は清らかな水や豊かな緑など観光資源が豊かですね
横山
穂別は湖や温泉が無いので、観光地ではないと町民の多くは思っています。しかし今の時代、観光の意味合いも変わり、穂別には開発が遅れた分、自然がたくさん残っています。また農村や森林景観など、ありふれた素材ですが、外部の人は割と喜んでくれます。ここに着目しない限りは、町外の人との交流や観光面での展開は拓けません。
今までの化石博物館や地球体験館、樹海温泉「はくあ」などの、観光投資は町の財政事情を考えると、限界にきています。そこでソフト面で、自然資源を活かすことや、宮沢賢治にまつわる色々なイベントなど、地域性のある取り組みをしていくことが大事ですね。
また今年は、観光協会の事務局を独立しました。今までは、町が丸抱えで、行政が主体であったため、やはり経済活動になかなか結びつきませんでした。これが民間になれば、お土産品を模索し、それを試験的に販売して反応を探るなど、商売に繋がる発想ができます。穂別は、外部の人を癒せる材料はあるのだから、これを交流人口に繋げてもらいたいですね。
――現在騒がれている合併論議については
横山
自主的な合併をと政府は呼びかけていますが、地元事情としては、自主的というより合併せざるを得ない状況です。現在は、合併せずに生き残れる道を検討していますが、穂別のように交付税が大部分を占めている町が、それを減らされた場合の影響は深刻です。
私自身としては、やはり町民がどう考えているかを、アンケート調査などで推し量った上で、結論を出すべきだと考えています。判断する時に、町民の気持ちと対峙した判断をしてはなりません。
8月に、政府の合併委員の講師を招き、講演会を行ったところ250人が集まりました。これは全町民の6%にあたり、他の講演会に比べて倍に相当する状況です。それだけ、町民も感心があるのです。最終的に、私は年内に、遅くても3月位までに、どちらを選ぶのか判断したいですね。町長の選択が、将来の町民や穂別町に影響を与えることですから、しっかりと議論していきたいですね。

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