建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

interview

北海道で数少ない人口増加の町

新総合計画は住民と行政の協働によって策定

北海道釧路町長 菅原 澄 氏

菅原 澄 すがわら・きよし
昭和 4年 7月 23日生まれ
北海道釧路町出身
昭和 22年 3月 昆布森青年学校本科卒業
昭和 22年 1月 昆布森村役場勤務
昭和 58年 4月 釧路町助役就任
平成 6年 11月 釧路町長就任 (現在2期目)
[表彰等]
昭和 55年 8月 釧路町功労賞
北海道東部に位置する釧路町は、貴重な動植物の宝庫の釧路湿原や、個性豊かな奇岩が連なる昆布森海岸など、自然に恵まれたマチだ。しかも昭和40年代後半から急激に人口増加傾向を示し、平成3年には人口が2万人を超え、都市化が進んでいる。今年度からは、第4次釧路町総合計画がスタートし、さらなる発展を目指す釧路町長・菅原澄氏に、今後のまちづくりについて語ってもらった。
――町長として、まもなく2期目を終えようとしていますが、任期を振り返ってどう自己評価しますか
菅原
2期目の4年間は、非常に早いテンポで過ぎました。それは、地方公共団体にとって、かつてない変革が求められたことと関係があったと思います。
一つは、地方分権です。国と地方の関係が、上下主従の関係から対等協力の関係を構築するというものです。国の権限が都道府県に、都道府県の権限が市町村に移譲され、市町村は、住民に最も身近な行政機関として、対応することになりました。このため、地方に求められることは、自主自立と自己決定です。
もう一つは、市町村合併の推進という国の方針への対応です。当町は昭和の大合併を経験し、合併後の町づくりが順調に進められ、北海道内町村の中でも数少ない人口増加の町であり、これを活力としてさらに発展を期していたところです。故に、なぜいま合併なのかという思いの中で、その対応に迫られました。
最後は、国の財政の逼迫とともに、これに連動した財政の悪化に伴う対応に迫られたことです。また、介護保険制度の新設に伴う対応などもあります。
こうした激動の中で、住民ニーズに応えていかなければならない市町村首長としては、大きな変革の嵐の中で、もまれ続けた4年間でした。
――基幹産業の振興には、どう取り組みましたか
菅原
当町の一次産業は、農業・林業・漁業ですが、何れも貿易の自由化、就労人口の減少、経済力の減退などの影響により、厳しい経営環境にあります。しかし北海道は、日本の食糧供給基地という役割を自覚しながら、地域特性を活かした振興策を考えなければなりません。
そのために、それぞれの分野における基盤整備を有効に活用しながら、対応しなければならないと考えています。
例えば、農業については、全国的にも北限だいこんとして有名なだいこんを、連作障害から守るために、土づくりを進めているところで、堆肥場の設置を奨励し、労働力不足を解消するための共同作付などを推進していきたいと思います。また、ビニールハウス農業については、作業の効率化、施設管理のための改善について、助成制度などを実施していきたいと思います。
林業については、地球環境の保全という大きな観点から未利用林地の解消を図るうえから、その活用についての対策を講じる必要があります。漁業については、町内三漁港の整備が進み、それぞれ利用が図られていますが、その高度利用について考えなければなりません。
また、同時に資源の増殖についても大きな課題として捉えなければなりません。例えば、漁港内を利用した稚魚・稚貝の中間育成による放流事業の効率化、或いは保管施設の整備など漁港施設と一体となった利活用を進めていく考えです。
――今年度から、総合計画がスタートしました。今後10年間のまちづくりの方向性を、どのようにお考えですか
菅原
当町の総合計画は、第三期が平成13年度に終了することを機に、これまで行政主導で進められてきたことの反省にたち、今次総合計画は、住民と行政の協働によって策定することを確認し、平成14年度からスタートすることになりました。このため、新計画は、住民と行政が智恵を出し合い、汗を流してまとめあげた成果として高く評価しています。
釧路町の将来像として「まるごと・夢自然空間」「海のかがやきと森のぬくもりが生きつづけるまち」をスローガンにしています。これを実現するために、「人や地域のつながりのある暮らし」、「安心して生み育て、老いることのできる暮らし」、「便利さ、楽しさ、癒しのある暮らし」、「まちの宝を守り、伝え、活用することができる暮らし」、「釧路人として誇りと責任を分ちあえる暮らし」の5つの暮らしの目標を定めました。
この目標達成に向けて、それぞれの生活場面において横断的に施策を展開していきたいですね。
――総合計画とは別に、住民主体の「釧路町都市計画マスタープラン」が始動しているようですね
菅原
本計画についても、多くの住民参加によってまとまったものであり、今後の町づくりの主要な部分を担う計画です。これは、「老若融和の居住環境」の実現を目指すもので、人と人、人と地域のつながりの中で、豊かな生活を送ることのできる暮らしを実現することを目指しています。
――釧路町は、釧路市との合併論議が以前から注目されてきましたが、どう考えていますか
菅原
現在、釧・釧合併から広域合併と構想は変化していますが、この合併問題は、その地域の将来を住民とともに議論して考えることが基本であると認識しています。
期限(平成17年3月31日)を無視した合併協議は避けるべきだと考えており、議論を通じて住民の理解を深め、地域の将来の方向性を見極めながら議論を進めるべきだと考えています。

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