建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

interview

医療の充実で人口減少に歯止め

国内初の洋上風車を整備

北海道瀬棚町長 平田 泰雄 氏

平田 泰雄 ひらた・やすお
昭和 18年 1月 31日生まれ
瀬棚郡瀬棚町出身
昭和 39年 3月 北海道自治講習所卒業
昭和 58年 8月 瀬棚町教育委員会管理課長
昭和 62年 9月 瀬棚町総務課長
平成 3年 7月 瀬棚町町民課長
平成 7年 1月 瀬棚町長 現在に至る
道南の最高峰狩場山の裾野に広がる丘と海のマチ、瀬棚町。現在、新エネルギーとして、国内初の洋上風車の建設を目指しており、これが成功すれば、養殖事業をはじめ多方面に活用が期待される。変化に富んだ地形を活かしながら、発展を目指す瀬棚町長・平田氏に、これからのマチのビジョンを伺った。
――1期目から医療福祉関係の整備に力を傾注したと聞きましたが
平田
そうです。福祉、医療政策が思ったより順調に進んだのは、医師のおかげです。診療所を建設したものの、果たして瀬棚町に医師が来てくれるのかと心配していましたが、早い段階で医師が決まり、その医師が診療所の医療構想計画をつくり、建物やスタッフ確保などに努力してくれたおかげで成功しました。その結果、町民には大変、喜ばれ、医療が充実したことにより、人口も極端な減り方は見られません。
また、この成功が福祉や保健、さらには農業など様々な分野に良い波及効果をもたらしました。瀬棚町は、そうした協力体制の力が大きく、私はそれに支えられて、ここまでできたと感じています。
――町全体に支えられていたわけですね
平田
町職員や町議会、町民全てが一つになり、目標に向かってくれたのが上手くいったと思います。たくさんの人に支えられたおかげで、予定していた大きな事業は、ほぼ完遂できたと思います。医療センターなどの福祉施設の整備にしても、少し背伸びをした感もありましたが、町や北海道、国の財政状況を考えれば、後になってからでは整備したくてもできなくなるでしょう。
今後は、瀬棚町では新しい事業、大きな投資をしなくて良い状況です。今後の問題は、地方交付税の減少をどう補填するかです。
――どのように補っていく考えですか
平田
現在、瀬棚町では、新エネルギービジョンとして、風力を活かした洋上風車を考えています。これについては事業採択になりましたので、そこから地方交付税の減少分を補填できる形にしていきたいと思っています。
しかし、洋上風車を整備したからといって、交付税減額分を全てカバーできるとは言えません。ですから、これに民間企業が追随して欲しいと考えています。民間企業が参入すれば、町の固定資産税収入も増えるわけです。
洋上風車についてはかなり研究が進んでおり、陸上の風は普段は20%程度の稼働率ですが、洋上の風は48%前後の稼働率で安定していることが立証されています。この計画が実現すれば、国内初の先例になりますから、研究者にとっても、また観光、財政にとっても良い波及効果が現れてくると思います。
――確かにクリーンエネルギーは、今日的なテーマですね
平田
この洋上風車は、マリンタウンプロジェクトと連携させていく考え方で、マリンタウンの養殖場については、4、5年で完成すると思います。今年から、2人の大学教授が瀬棚に来てくれ、具体的な養殖をどう進めていくかについて研究をしてもらっています。現在は、魚礁を試験的にマリンタウンに入れて、そこに魚の餌などを付着させる実験の段階です。すでに、アワビの養殖籠など、様々な制度を利用して増やしてきており、国や北海道も、注目して応援してくれていますから、必ず良い結果を得られると思っています。
――農業も新しい取り組みを進めているそうですね
平田
食に「健康」「安全」をキーワードに、有機農業を積極的に推進しています。瀬棚は、中山間地帯で小さな農地ですから、有機農業の条件として最適です。山間の谷間ですから、自己管理を徹底させれば、農薬も飛散することはなく、汚水も入ってきません。
また、NPOの有機農業認証協会という組織による認証を受けた畑は、増えてきています。そこから色々な農産物を札幌方面へ出荷しているほか、学校給食や病院、老人ホームでも瀬棚産の農産物を導入してもらっています。
――観光の振興にには、どう取り組んでいますか
平田
新しい観光スポットの創出を目指し、瀬棚町と島牧村との境界に位置する茂津多岬の灯台を、日本一高い灯台(290m)にしました。改築以前は、道路が無く灯台まで行けませんでしたが、瀬棚町と島牧村の共同で林道を整備したことを契機に、灯台を改築して日本一の高さにしました。
今まで瀬棚の観光と言えば、三本杉岩などが有名でしたが、新しい観光資源によって、新たに観光客を呼び込みたいと思っています。
――町村合併論議については、どう考えていますか
平田
現在の合併議論は、市町村自ら進んで議論している雰囲気ではありません。現在、北檜山、今金、大成と瀬棚の4町合併が、一つの構想として示されています。この4町は、北海道全体で見ても、ともに財政は最下位に近い状況です。しかし、4町が合併して、財政力が高まるかと言えば、かなり不安があります。特に大成や瀬棚など、管内の端に位置する町は、自然に淘汰されていく心配もあります。
私は合併については、情報を町民に提供して、住民投票のような形で、20歳以上の有権者に合併についての考え方などのアンケートを行いながら、それを民意の基本にして研究会をつくり、議会にも提案しながら、最終的な判断をしたいと思っています。
また現在、檜山北部4町が、介護保険の広域連合を来年からスタートすべく、準備を進めています。そうした連携を合併と共に考えながら、行政レベルでの合併なども考えていきたいですね。

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