建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年8月号〉

interview

ニシンの回帰 秋サケの豊漁など漁業に明るい話題

「福祉のまち」を宣言、授産施設を建設し、知的障害者の就労の場を確保

北海道小平町長 横濱 磨 氏

横濱 磨 よこはま・みがく
昭和 17年 8月 20日生(59歳)
北海道酪農学園大学酪農学部卒
昭和 40年 4月 入庁(産業課)
昭和 61年 7月 総務課主幹
昭和 63年 4月 財政課長
平成 6年 4月 小平町収入役
平成 10年 3月 (任期満了)
平成 10年 11月 小平町長
北海道小平町は、西は日本海に面し、他の三方は山に囲まれた青い海と緑にあふれたまちだ。「福祉のまち」宣言を行った同町では、高齢者や障害者に対する施策が進められ、まち全体を活気づかせようとしている。「明るく住みよいまちづくり」を目指す小平町長・横濱磨氏に、これからの小平町のあり方を伺った。
──1期目で、まず手がけたことは何ですか
横濱
環境問題対策として、いち早くゴミの最終処分場を建設しました。分別収集は、町民にとって手間のかかる8種類の分別収集をしていただき、また、財政も厳しい状況ですが、最終処分場が必要なことも町民が理解を示してくれたことにより建設でき、今年4月から供用開始になっています。
また他には、下水道です。これは因果関係を科学的に突き詰めた訳ではありませんが、昭和31年に日本海域からニシンが全くいなくなりました。これは、日本の戦後復興時期に山の木が切られ、また生活水準の向上により、家庭洗剤などの化学製品を含んだ下水が大きな影響を及ぼしたのではないかと言われていました。
小平町内は、小平、鬼鹿の二つの地区があり、小平地区は今年度中にはおおよそ全戸に下水道が普及する予定です。今年度からは、鬼鹿地区でも随時進めていく予定です。
このお陰で、最近はニシンの回帰現象も現れてきており、また秋にはサケの豊漁もあり、漁業にとっては非常に明るい話題があります。
──小平は、「福祉のまち」宣言をして、積極的に福祉施策を進めていますね
横濱
小平には、高齢者の福祉施設と障害者の更正施設があり、また道の知的障害者の高等養護学校もあります。国は施設福祉から在宅福祉へと方向転換しており、財政問題もありますが、やはり施設で介護してもらわねばならない状態の人もいます。
とはいえ、全ての人がその状況ではないので、自分でできることは自分でして、生きがいを持って生活することが、要介護状態にならないことだと思います。そこで、グループハウスを建設し今年の4月1日にオープンしました。
また、知的障害者についても施設だけに閉じこもるのではなく、仕事を持つことで、社会的に自立していけると思います。そこで今年度は、牛肉のハンバーグやホタテの甘露煮などを加工する知的障害者通所授産施設を、来年の3月頃の完成を目指して建設します。そこで高等養護学校の卒業生達が働けられれば、一つは就労の場として確保できたかなと思います。
──基幹産業の振興策には、どう取り組んでいますか
横濱
私の公約は、産業の振興、福祉の充実、教育の推進、生活環境の整備、そして行財政の改革です。この5つの柱の中で、基幹産業の振興は、やはり重要な課題だと受け止めています。生産額でいえば、農業が15億円、漁業が13億円で、総額で言えば、農業の生産額が大きくなっていますが、戸数で言えば農家は260戸、漁家は70戸ですから、一戸あたりで換算すると、農業は漁業の3分の1ほどの生産額でしかありません。
町内には米づくりの水稲地帯がありますが、現実には外国からミニマム・アクセスという形で輸入している状況ですから、自給率が40%とは言え、やはり思うようには米が作れないという状況です。これからは、そこからどのように生産額を上げていくかが課題だと思います。
一方、漁業は、おかげさまで、生産額が一戸当たり平均で1,800万円程になり、また後継者も戻りつつある状況ですから、いまのところは順調です。ただ、ホタテの養殖が全体の約70%を占めていますから、将来的には、ホタテ以外の漁種に力を入れていかねばなりません。ニシンやサケの稚魚の放流など、これからも積極的に資源の還元をしていく施策を進めなければなりません。
──小平町の将来を担う子供達に対して、どのような教育政策を行っていますか
横濱
子供達には、「子育てサロン」で、お母さん方が子供に本を読んで聞かせることにより、子供が本に親しみ、そしてお母さんと触れ合う時間を大切にするという方向付けで進めています。現在、本を読まなくても色々な情報が入ってきますが、やはり読書の習慣は、子供の健全な育成には欠かせないものだと思います。
──現在、論議されている市町村合併については、どう考えますか
横濱
留萌・増毛・小平というのが一つのパターンです。正直に言えば、合併論が最も頭を悩ませることで、結論は現在のところは出ていません。
小平では現在、検討委員会を設置し、道の提示した様々なシュミレーションを参考にしながら、9月頃から準備懇談会を始めようとしています。議会でも特別委員会を設置し、充分に検討する中で、町民の意向を聞き入れていかなければなりません。
しかし、私自身は合併しない方が良いのか、した方が良いのか、決定的な判断材料はありません。パターン通りに合併したとしても、人口は4万人を切るくらいで、また財政問題が生じると予想されます。関係町村の財政が、いずれも悪い中で合併しても、さらに悪くなってしまいます。
やはり、人口1万人くらいの規模であれば、町民の声も直接聞けるし、行政もその声を聞きながら住民と連携できます。その限界が、1万人程の規模だと感じています。
──今後も悩ましい問題となりそうですね
横濱
この地域の活性化と言えば、ハードなイメージを創造しますが、いずれにしても、住民に元気の出るような施策をしなければなりません。その中で、何ができるかといえば、やはり町の基幹産業である農業・漁業の振興、またそれを中心とした他産業の連携を強めていかなければなりません。
これが直ちに人口の拡大にはなりませんが、産業を元気づけて、雇用の創出などを柱の一つに立てながら施策を進めていきたいと考えています。

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