建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年8月号〉

interview

着実な成長を遂げた北海道水産土木協会

予算削減で求められる業界再編と協会の役割向上

北海道水産土木協会長(草別組代表取締役) 草別 義昭 氏

草別 義昭 くさわけ・よしあき
昭和 12年 2月 21日生
法政大学工学部土木工学科卒業
昭和 34年 4月 株式会社草別組社員
昭和 43年 2月 同社 代表取締役社長
【主な公職】
小樽建設協会会長
社団法人北海道水産土木協会会長
社団法人北海道建設業協会理事
昭和54年に、全国で最初にスタートした北海道水産土木協会は、当時、58社だった会員は130社に増え、順調な成長過程を経てきた。200海里規制への対策として、沿岸漁場の整備は、我が国にとっては欠かせないが、事業費の削減は着実に会員企業の競争激化をもたらし、過酷な経営環境に置かれている。現況と課題について、協会長であると同時に草別組代表取締役である草別義昭氏に伺った。
――北海道水産土木協会の近況や最近の活動について、お聞きします
草別
200海里の設定により、漁業規制が強化され、漁獲量の後退を余儀なくされていた時代に、「沿岸漁場整備開発法」が制定され、沿岸海面を増殖漁場化する事によって、沿岸の漁業生産を拡大することが、大切な課題となっていました。
こうしたことから、当然それに携わる施工業者も必要であるため、「北海道水産土木協会」は、昭和54年9月に、全国に先駆けて水産土木工事に携わっていた58社でスタートしました。
協会では、水産土木建設工事に関する施工の合理化を図り、同時に諸団体と協力して「水産土木建設業」の発展と沿岸漁業の振興、整備促進を図り、水産業の発展に寄与しています。
しかし水産土木工事は、一般の土木工事と異なり、生物を対象とした新しい分野の海洋土木工事であり、しかも歴史的に未知な分野が多いだけに、多くの問題を抱えながら工事に取り組んできたのが偽らざるところです。
昨年度で第4次沿整事業が終了し、今年度から新法の基に事業が展開されています。第1次沿整計画の全体事業費は2,000億円で、昨年度までの第4次沿整の全体事業費は6,000億円ですから、大幅に増加の一途をたどってきました。
北海道の沿整事業も、ウニ、アワビ、昆布を対象とした囲い礁、魚類を対象とした魚礁や、佐呂間湖のウニの養殖場、ホタテの漁場保全事業と北海道でも幅広く事業が行われ漁業生産に貢献した事業も数多くあります。
現在も協会として発足以来、継続して水産土木工事施工上の諸問題について、技術委員会を設置して検討を行い、改善策を講じてきています。また、地域における検討会や会員に対する技術講習会、関係図書の出版業務を行って今日に至っています。
――会員数の現況と、沿整事業における受注状況は
草別
沿整工事に携わる現在の会員は130社ですが、設立当時の会員は58杜を以て設立しましたので2倍強になっています。
事業費も整備計画が進むにつれて、新しい事業への取り組みも進み、増殖場や魚礁事業からヤリイカ、ミズダコの産卵礁や第4次沿整では、湧昇流への取り組みなど広範囲になってきています。北海道における沿整事業のシェアーも、全国の20から30パーセントの間で推移しており、大きなシェアーを占めていました。
平成14年は、漁港と沿整事業が一体化して予算組みされ、水産資源の増殖から漁獲、陸揚げ、加工流通までの一貫した水産物供給体制の構築による水産業の健全な発展と、水産物の供給の安定を目的とした漁港漁場整備法に変わりました。ですから、いままでのように沿整だけの予算の比較はなくなりました。
ただ、年々行われる事業費の削減と、受注競争の激化により、会員企業の経営環境は厳しくなっています。
魚礁の効果は、30年の耐与で計算をしていますが、魚礁は設置をして年を経る毎に、その効果は高まるという認識を持っており、数値で表せない効果もあると考えています。
――事業費削減は、盲目的に毎年、行われているとの感があります。事業の整備効果に関するピーアールが不足しているのでは
草別
昨今の景気の低迷の中では、公共事業へのあり方が問われていますが、水産食料基地としての役割は大きく継続して実施する必要性を痛感しています。
公共事業削減は、水産分野ばかりでなく、各分野に押し寄せる波といえます。現在の不況は債務、雇用、設備の過剰にあるといわれていますが、さらに建設分野には、新たな波も予想されています。建設予算については、10年前に比べると、建設に係る予算は10兆円減になっていると言われています。毎年10パーセントが削減されているとなりますと、端的に考えると1割の建設業者が減ってしかるべきですが、企業数は一向に減っていません。実際に、建設業界は合併するにも容易ではありません。
このため、今後はさらにコストの縮減やアイデアの提言などが求められるとすれば、それに対応出来る業者は、自ずと限界があると考えています。
北海道で水産土木工事が始まってから26年がたち、業界としても施工技術の革新に努力してきましたが、さらにコスト縮減や事業効果などの把握を踏まえて、いろいろな角度から業界としても検討していかなければならないと思っています。
事業効果の測定でも毎年の海洋条件の違いから測定に費用もかかり、大変な面もありますが、さらに地道な努力が必要と考えています。
――発注のタイミングも、コストに影響するそうですね
草別
毎年、春に事業予算が確定し、夏に発注されますが、盆過ぎからは海が荒れてきます。魚礁は漁港整備とは異なり、海岸から数百メートル離れた所に設置しますから、技術的に難しい上、海が荒れれば危険度も高くなります。
こうしたマイナス要因が、建設費を底上げしています。そこで、なんとか早期発注ができる体制を、行政側には検討して欲しいと思います。
――協会の今後の新たな取り組み活動など
草別
今までも水産土木工事に関しては、技術委員会の開催や地域における研修会、先進地視察などを行ってきましたが、平成14年度からは「工事現場などにおける施工体制の点検・確認要領」が制定され、建設業法に基づく点検を実施することとなり、技術者の専任配置が必要となりました。
予算が減少する中で、私たちの業界も無駄のない方法で工事を受注しなければ対応できませんし、水産土木については、今までは共同施工方式でしたが、現実には工事は陸上と海上に大別されるわけですから、工事分担方式を含めた検討も大事だと思っています。
近年のように、予算の厳しい時代が続けば、いずれは工事発注においてもゼネコン「管理者」を素通りして、専門工事業者への分割発注などということも考えなければなりませんので、我々としても施工技術、管理能力をより確かな、強固なものにしなければ生き残れないという状況です。

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